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VRChatでショートムービーを作るために①
はじめに
こんにちは。喫茶BlueLoungeの店長のMiyokoです。
2023年10月27日に喫茶BlueLoungeで公開した『ラブ・バター・ラブ 〜私を見つけて〜』のお披露目上映会を開催しました。
上映会にお越しいただいた皆様、作品を見て下さった皆様、ありがとうございました。
上映された
【『ラブ・バター・ラブ ~私を見つけて~』CV:あめちゃんver.】
が、しかし、
上映会で流して初めて「これではまだ完成とは呼べない」と思い、元々制作予定だった「CV:ふじもったver.」で、音声の差し替えだけでなく大幅に動画の再編集を行いました。
本日公開された
【『ラブ・バター・ラブ ~私を見つけて~』CV:ふじもったver.】
という訳で、上映会で流した「CV:あめちゃんver.」は「上映会版」、「CV:ふじもったver.」を「完全版」と致します。
※VRCムービーアワードに応募する作品も完全版の方です。
「撮影も既に終わっていて素材が無いし、もうこれ以上は無理」というところまでは詰められたのではないかと思います。これ以上のものを作るなら素材を一から撮り直さねばならないでしょう。
昨夜、完全版の上映会を企画サーバーに居る制作陣だけで行いまして、これにて完全に制作は終了となりました。
あめちゃんさんが声を担当して下さった上映会版も、自分の甘さを痛感して非常に悔しい気持ちにはなるのですが、それが分かったことも含めて大切なものであり好きな部分も大いにあるのでちゃんと残しておきたいです。
『ラブ・バター・ラブ 〜私を見つけて〜』に携わって下さった方々、本当にありがとうございました。
記事概要
さて、『ラブ・バター・ラブ 〜私を見つけて〜』の完全版も公開したので、改めて製作過程をざっくりまとめてみます。
この記事は、主に今後の自分のための忘備録です。
VRChat(以下VRCと記載)でショートムービーを真剣に作ってみて、「やって良かったな」「もっとこうしたかったな」と思うことが無限にあり、これらを次に生かしていきたいと思うのですが、恐らく私はそれらをすっかり忘れて「やって楽しかったこと」だけの記憶を頼りに同じことを繰り返してまた「もっとこうしたら良かった(あれ…?これ前も思ったな?事前に対策できたのでは?)」となってしまうでしょう。そういう人間なので。
ただ、こうして振り返ってみて、尚且つ人目に晒すことで、どうにか覚えていられるのではないかと思ったのです。
全体の流れは以下の通り。
企画書を作る
キャストを依頼する
脚本を書く
絵コンテを描く
絵コンテを動画にして尺を測る
撮影監督を依頼する
アバターを用意する
撮影用ワールドを作る
撮影スケジュールを決める
撮影
アフレコ用に動画編集する
キャストにアフレコ収録してもらう
整音を依頼する
本番用に動画を仕上げる
ポスターを作る
上映会の準備をする
上映会をする
制作について忘備録を書く
とても長いので今回は1「企画書を作る」~6「撮影監督を決める」までです。それではレッツゴー。
#1 企画書を作る
VRCでイベントをする際、どんな小規模なものでも他人を巻き込む内容であれば企画書を作るようにしています。
企画段階というのはまだ何が可能で何が不可能なのかわからない状態で、言わば自分の夢を詰め込める時間なので、自分にとっては一番楽しい作業。
それと、作っておくと目的が明確になるし、これから巻き込む人たちに毎回口頭で説明しなくて済んで結果的に自分が楽になる!
特に今回は悪役結社ヴァリアールから怪人派遣をして頂くので、企画書は必須でした。
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実際の企画書はこちら↓
【企画書(草案版)】2023年 映像作品「恋人はバター(仮)」#喫茶BlueLounge
【企画書(改訂版)】2023年 映像作品「ラブ・バター・ラブ」#喫茶BlueLounge (こちらについては後述の #3 脚本を書くにて)
小話:世界観について
お話を一から作る時、キャラクターや世界観も作るものだと思います。
しかし、本作品の舞台になった「喫茶BlueLounge」には元々「ファンタジーな世界に存在する不思議な喫茶店」という二次創作のための設定※が存在するので、それをそのまま使い回すことにしました。
※RP(ロールプレイ)のイベントがメインではないため全ての設定は「二次創作のための設定」としています。私が創作する喫茶BlueLoungeに関するものも全て二次創作であり、公式設定ではありません。本作品に関しても、扱いとしては二次創作です。
喫茶BlueLoungeはあくまでも男性アバターが集まる空間というだけなのです。
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この看板を見上げると、(厨二病を患ったり古の個人サイトを作ったり初めて作った”私の考える史上最強の同人誌”を50部刷ってイベントに参加したら3冊しか売れなかった時のこと等がふと頭をよぎり)初心を思い出せるので気に入っています。
バーチャルの地に刻んで行くのさ、インターネットタトゥーを。
小話:ストーリーとキャラクターについて
今回の作品は昨年のイベント「#喫茶BlueLounge 夏の陣! 恋人はバターアバター!?」というイベントで実際に起きた出来事をベースにしています。
7月30日22:00-23:00(JST)に行われるイベント
— 喫茶BlueLounge☕ (@BlueLoungeVR) July 9, 2022
「#喫茶BlueLounge 夏の陣! 恋人はバターアバター!?」の告知映像です。
※参加方法や諸注意についてはこのツイートのツリーに続けて記載されます。 pic.twitter.com/ZHiHKZkoHF
「世界中のみんなバターになれば良いのに」というふじもったさんの言葉をヴァリアールの怪人であるクロウリーさんとエニーちゃんがそのまま受け取り、本当にみんながバターになってしまうというお話。
イベント内容自体は劇中と同じく、
・パートナーにだけする「あいさつ」を見た/聞いた時
・パートナーの前で見せる「仕草や動き」を見た時(無言でやってもらう)
・全員がバラバラになった状態で探し回った時
それぞれの状況で果たして自分のパートナーを探し出せるかどうか、という検証を行いました。イベント当時は熱いドラマが展開され、それら全ての内容をギュッと凝縮したのが本作品です。
更にそこから派生して、昨年のクリスマスには「イケメン爆破クリスマ寿司」というバターのアバターを寿司に変えたバージョンのイベントも開催しました。(うちのクリスマスは爆破するのが恒例行事となっている)
「イケメン爆破クリスマ寿司」のダイジェストです。#喫茶BlueLounge pic.twitter.com/JjdhzUxSHO
— みよこ_Miyoko (@0ne_chan) December 24, 2022
「ラブ・バター・ラブ」のエンディング曲でも使わせて頂いたsumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司さんの曲が大好きで、
その中の一曲「メリ!クリ!スシ!」という最高にハッピーなクリスマ寿司ソングを自分のイベントのBGMにどうしても使ってみたかったので、イベントにしました。
メリークリスマスシで君とパーティー
聖夜に寿司! デザートにガリ!
それがぼくたちのスタイル
そんなバターイベントからクリスマ寿司イベントへの繋がりも込めたかったので、
バターのオバケのフジモトと、お寿司のオバケのすっしーというキャラクターが生まれました。
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そしてエンディングテーマはクリスマスに引き続きsumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司さんの「いつか回らない寿司屋で」を使用させて頂きました。
いつか回らない寿司屋で
君とロマンティックなデートをしたいなって
笑い合って
積み重ねた100円のお皿と、
この気持ち、
思い出はいつも甘い
因みに今回の映画を見て下さった当時のイベント参加者の方から
「どっちのイベントも参加してるから、最後にバターからクリスマ寿司に繋がって感動した」
という、大変嬉しい感想を頂きましたた。
出来上がったものに対しては「ここまでできた」という嬉しい気持ちが1割と「ここまでしかできなかった」という悔しい気持ちが9割だったのですが、あの時の言葉で救われたように思います。
いつも遊びに来てくれて、気付いてくれて、本当にありがとう。
#2 キャストを依頼する
今回は主人公のふじもったさんと悪役結社ヴァリアールからの怪人派遣のお二人(クロウリーさん、エニー・エニグマさん)と天の声のアデリサ黒牛さんは昨年のイベント予告動画からの続投で、それ以外のキャストは新たに依頼しました。
と言っても以前うちのイベントでキャストをやって下さって今も親交のあるVRCのフレンドや、喫茶のお客さんとして来てくれるフレンドばかりです。
全員紹介しきれないので、ここではお一人だけピックアップします。
撮影中のあれこれはまた別で紹介。
すっしー役:ウールさん
VRCのフレンドです。
成人男性の声・少年ボイス・女声と幅広い声がとにかく安定して出せる方で、何より芝居に対する姿勢が真摯なので、要となるこの役は彼に演じてもらおうと思い、割と早い段階で企画書をお見せしました。
上映会で「バターに合う寿司って何だろう?って考えてて」とコメントしていたのが印象的です。
バターの相方になる寿司の役作りってそんな感じなんだ…。
skeb用にサンプルボイス録りました!
— ウール (@woool1029) October 6, 2019
依頼の参考になれば幸いです!
よろしくお願いしまあぁぁーーーっす!!! pic.twitter.com/irGpipfX58
この段階では脚本はまだできていませんが、企画書さえあれば何とかなるように思います。演者さん達のスケジュールは早めに抑えておいた方が良いのです。
#3 脚本を書く
喫茶BlueLoungeでは昨年も映像作品を撮っているのですが、脚本は無く、漫画のラフみたいなものがあるだけでした。
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今見返すと色々とわかりづらいので無声アニメにはまた挑戦したいと思います。
脚本というものを書いたのは今回がほぼ初めてなので、困ったことが発生しました。
何かと言うと、
ちゃんとした脚本の書き方が分からなかったんです。
ハリウッドの三幕構成とかそういうストーリー構成や理論の話以前に、様式?形式?がそもそも分からない。
そこで、ネットで公開されている本物の脚本を見た方が早いと思い、「シナリオ公募ナビ」というサイトの「Webで公開されているハリウッド映画の脚本集」で紹介されている脚本を参考にしました。
ただ、ここで参考にするのはあくまでも書き方であってストーリの組み方ではないです。
なぜハリウッドの脚本なのかと言うと、ネットで検索して辿り着いたのがたまたまハリウッドの脚本だったというだけの理由でした。
それに横書きだし、Googleのドキュメントと相性が良いと思いまして。
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カメラアングルやセリフの言い方などこの時点で書き込んでおく。
さて、書き方は解決しましたが、実際に脚本を書くにあたりストーリー構成でかなり躓きました。
前回の記事『VRChatの映像作品を「見たい」と思って実際に見てくれる人』で書いた内容と若干被るのですが、色々と考え過ぎて自分のやりたいことを見失い、物語をどう着地させたら良いのか分からなくなっていたのです。
毎日深夜まで書いては消し、書いては消し…上手くいかず白紙に戻す。
どんどん時間は迫って来る。
そうこうしているうちに…
「進捗いかがですか?」
とうとう7月に入ってしまった。
今更言えない。
スケジュールが押してるのに、全然できてないなんて、言えるはずがない。
こちとら脚本も絵コンテもまともに書いたことないのにこんなの無茶だよ…。
この状況を誰かのせいにしたいけど、自分の顔しか思い浮かばない。
なぜ自分はやったこともないのにできると思って企画してしまったんだろう…?
企画段階のワクワクした気持ちはどこへやら、様々な後悔が押し寄せ、遂にはどうしようもなくなり、友人にS.O.S.を発信(LINE)しました。この友人というのはとても映画が好きな人なのです。
そしてこの友人と、夜10時から朝5時にかけて、約7時間に及ぶ脚本大改造テコ入れ作業通話が始まったのです。長時間付き合ってくれて、マジ感謝。
通話中は
「一番描きたいのはどんなシーンなの?」
「このシーンで何を伝えたいの?」
主にこの二つの問いかけを、友人からカウンセラーのごとく逐一投げかけてもらい、
「こういうシーンが描きたい」
「ここはこういうことを伝えたい」
と、自分の想いを口に出すことで頭が整理され、新たなセリフやシーンがどんどん生まれ、ノイズになるものは全てカットし、そうして絶対に外せないものだけを残した結果、草案とは全く違うものになりました。
カットされる前の大まかなあらすじは前述の「企画書(草案版)」にある通り。描きたいものの本質は変わっていないのですが、全体的にダラダラした展開、不必要に喋らされる登場人物、回りくどいセリフの数々、今見返すと酷いものです。
ストーリーよりもキャラクターに重きを置き過ぎたり、演者全員を目立たせたいと思ったり、色んな葛藤が見えます。
草案からかなり変わってしまったので、新たに「企画書(改訂版)」を作り直し、改めてキャスト陣にシェアしました。(2023年7月3日)
草案は本当に酷いので、脚本と比較していっそ笑ってほしいほどです。
最初からこうして記事にまとめるつもりだったので、少々恥ずかしくて直視しづらい過去でも自ら掘り起こしていきます。
そう、喫茶BlueLoungeのモットーは
「おじいちゃん・おばあちゃんになった時に思い出して笑える黒歴史を作ろう」なのだから。
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実際の脚本はこちら↓
メモ:ストーリーを組み立てるあれそれ
脚本や絵コンテの作業が何もかも終わった5日後(2023年7月8日)に「同人女の感情」の作者真田つづるさんの「いまからまんがを作ります。」という同人誌の存在を知りました。
これは二次創作漫画を描く上でのストーリーの組み上げ方とネームの切り方についてのハウツー本みたいなものですが、漫画以外にも使えると思います。
自分としては今まで読んだハウツー本のどれよりも分かりやすく感じたので、脚本を書き始める前に出会いたかった。
この秋に出た続編の「もっと!いまからまんがを作ります。」は更に踏み込んで作品の完成度を上げる話になっていたので、こちらもお気に入り。
※個人的なオススメであって案件とかステマではないです。
#4 絵コンテを描く
前項で述べた通り、昨年は脚本の代わりに漫画のラフのようなものを元にして作ったので、絵コンテをまともに描いたのも今回が初めてでした。
これもまた友人からたくさん助言をもらい、どうにかこうにか完成させました。
特に自分には"アイレベルを合わせた横からの構図でとりあえず描いてしまう"という癖があるので、第三者から客観的な意見をもらえるのは非常にありがたかったです。
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絵コンテの書式自体は昔からアニメ制作に興味があってイメージしやすかったので、シーンとカット数・画面・内容・セリフといった雛型だけを参考にし、スクロールして見れる方が良いと思ったのでGoogleスプレッドシートを使用しました。
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実写では絵コンテが無いこともあるそうなので、あまり「こうしなきゃいけない」と思わないように、分かりにくくならないようにだけ気を付けて描いたつもりです。
今見るとカット数の割り振り方がめちゃくちゃだったり、分かりづらいなと思うことが多く、実際撮影時には口頭でかなり補足しました。それでも足りないくらいでしたが。
また、どうしても知識不足からアングルが思いつかないシーンがいくつかあり、それらは撮影監督に相談することにして、自分にできないことは無理にしないでおきました。
まだこの時点では撮影監督が確定していないのですが、ストーリーよりもキャラクターに重きを置き過ぎて絵コンテの時点で絵が浮かばない私では撮れないと早々に判断したので、以前の記事『役目を終えたので #VRCムービーアワード を振り返ってみる』で取り上げたBanzai Studioさんに撮影を依頼しようと心の中で決めていました。
実際の絵コンテはこちら↓
#5 絵コンテを動画にして尺を測る
大体の長さをザックリ知るために一旦絵コンテを繋げて軽く音を入れた動画を作り、尺を計ります。
しかしやってみると、全体的にテンポが速過ぎました。
当時の「早く完成させなきゃ‼」と焦る気持ちがかなり反映されているのが分かりますね。
ここから更に絵コンテやセリフを修正したので、今見れる絵コンテとは内容が異なります。
何より、完成したバージョンとほとんど左右が真逆です。
これについては、「何か変だな」と違和感があったのですが、自分では何が変なのか全く気付けず、これもまた友人から「全体的に左右、逆じゃない?」と指摘された後に絵コンテを修正して、ようやく違和感が消えました。
因みに動画編集で使用しているツールはAviUtlです。
実際の動画はこちら↓
#6 撮影監督を依頼する
作りたいものの全体像がハッキリしたので、ここでようやくizooomiさんに撮影監督の依頼をしました。
当時は全くその予定は無かったのですが、以前書いたnote記事のことをとても気に入って下さっていて、あっさり承諾して頂けました。
こんなに上手く話がまとまって、逆に大丈夫だろうかと逆に不安に思ったほどです。
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今回はここまで。また次回。