あいうえお作文「れ」

「れ」
れんげ。叔母と一緒に住んでいた。昭和30年代デパートとに行くのは特別なことだった。叔母はデパートの食堂でワンタンを食べた。私は小さかったのでいつもお子様ランチだった。美味しそうにすする叔母を尻目に私はランチに夢中だった。そこは大食堂と言って女性が案内してくれて和洋中なんでも揃っていた。お子様ランチとワンタンしか思い出さないのはなんでだろう。その後も何度も行ったはずだけどなぁ。ちなみに叔母はデパートをデバートと発音した。

「れ」
レンズマン。文庫本が私にとって全てだった頃、女の子に初めて貸した本だ。その女の子に淡い恋心を持っていたのかもしれない。今となっては分からないし、自分でも曖昧だ。なぜSFか、なぜ外国か、と問われればその人が趣味だったからとしか言いようがない。キャンパスをホットパンツで闊歩していると後で聞いたとき、スレンダーで足の長い彼女ならさもありなんと思った。でも友人の言葉に多少悪意を感じた私はその女の子を庇って喋ったような。

「れ」
蓮華草似ても似つかぬレンゲかな
レンズマン内容までは覚えてないよう

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