【映画感想】コレラの時代の愛

高校に入学してすぐ、一目惚れした同級生の女の子がいましてね。

思春期真っ盛りですから悶々として、1学期のうちにラブレター書いて渡したんですよ。そしたら返事が来て「オッケー」だって。

ええっ、オッケーなの!! って思った反面、「これは何かの間違いに違いない、俺みたいなやつを彼女が好きになる訳がない」ってすげぇ猜疑心に囚われはじめて。

「あなたがぼくみたいな人を好きになるはずがない、本当は好きな人がいるんでしょう」ってまた手紙書いて渡したら返事来て。

「いるにはいるけど私にはちょっと無理目の人で」

それ見ろ! 彼女が俺の事好きなわけがない! もう無理だ! って結局デートの一回もしないまま、ろくすっぽ会話もしないまま高校三年間を過ごしてそのまま卒業した経験があります。俺狂ってたのかな。

卒業してからはバンドとかやって、ファンの子彼女にしたり元メンバーの子彼女にしたりしましたけど、そういった女性とぼくとの間には「音楽(ヘヴィメタル)」という共通の趣味があったし、別れた奥さんとは音楽の趣味は違ったけれど物事の見方が似ていたから(別れるまでは)ウマが合ったし、などと考えると、高校の時にその子が好きになった理由を思い出すと「ルックス」でしかなかった訳だから、もし付き合っていたとしても、やっぱり続かなかったんじゃないかなと思います。

そんな訳で最近は女性と出会う際、その人がどんなに美人であっても相手の感性にピンとこければ特にときめくことも無くなってしまって、これはもう本当にお見合いパブにでも行くしかないのかと悩んでいます。悩んでいますが知り合いから「お見合いパブとは本気でお見合いをするところではないのだよ」という助言をいただきました。いやそれ以前にアプローチする際に必要なお金もない訳で、どこか食事に誘ったり何かを贈ったりということも凄く勿体なく感じるようになりました。


永遠の愛なんてないよ、どこまでいっても所詮は他人だし、いつかは宇宙も終わる。


そんな日々を送っている中でぼんやりと観た「コレラの時代の愛」。タイトルから想像して、「コレラで死ぬ前に童貞捨てたい」みたいな話だといいなぁと思っていたら当たらずとも遠からじで、しかもおっぱいもセックスも要所要所で出てくるので飽きることもなく、「これは拾い物ですよ!」と思いながら最後まで楽しんで観ることが出来ました。

主人公のフロレンティーノくんは10代の童貞、商家の娘であるフェルミーナに一目惚れし、大量のラブレターを書いたり、屋敷の庭でヴァイオリンを弾いて彼女の気を引きます。想いが実って彼女と結婚の約束をしましたが、お父さんにバレてさあ大変。娘に男の事を忘れさせるため、数年間別の土地へ行かせます。

フロレンティーノくんは待ちました。一日たりとも彼女の事を忘れた事はありませんでした。数年後、彼女が町に帰ってきたのを見つけたフロレンティーノくん、気付かれないように彼女の背後にまわり、挨拶代わりに愛の詩を読み上げます。それを聞いて振り向いた彼女、彼の顔を見るなり、

「うわ、ちょ、ごめん。今のアナタ見たら醒めた。無かった事にして!!」

何故ならあれだけ若々しかった彼の顔が、どこからどうみてもハビエル・バルデムになっていたからです。

そしてその後フェルミーナは腕の良いハンサムなお医者様とあっさり結婚してしまいました。

失望のどん底に落ちたフロレンティーノくんでしたが、ある日とある女性に童貞を奪われてしまいます。それをきっかけに彼はチャンスを見つけては自分に脈のある女性とセックスに及ぶヤリチンへと変貌し、しかもいつどこで誰とどんなセックスに及んだかを克明に記録するようになり、その案件ごとに連番を振りました。

気が付くとその数字は662を記していました。

こうして齢70を過ぎてなおヤリチンは止まらなかったフロレンティーノくん、ある朝女子大生と二人で風呂に浸かっていると教会の鐘の音が聞こえてきました。

「ひょっとしたら……彼女の旦那が死んだのでは!?」

鋭い勘です、案の定そうでした。フロレンティーノくんは彼女の屋敷へ一目散に向かって部屋に忍び込み、葬式から帰ってきたばかりの彼女と会うなりこう言います。

「この日が来るのを51年9ヶ月と4日待っていた、まだ愛してるから一緒になろう」

彼女は「出てけ!! 二度と目の前に現れるな! あと早よ死ね」と激高し、彼は屋敷を追い出されてしまいました。当たり前ですが。

どうなる、フロレンティーノくんの純愛!! 続きは本編で!!



「ノー・カントリー」で不気味な殺し屋、アントン・シガーを演じたハビエル・バルデムが、家畜ピストルを自分のイチモツに持ち替えて大活躍。主人公の中年期から老人期までを演じ、歳を取るにつれグーチョ・マルクスみたいになっていきます。

出てくる女たちはフェルミーナ役のジョヴァンナ・メッツォジョルノをはじめ、どなたも良い脱ぎっぷり。この映画の原作者であるガブリエル・ガルシア=マルケスはノーベル文学賞受賞者なので、「芸術のために脱いでくれ!!」という説得もやりやすかったでしょう。個人的には主人公が詩のコンテスト授賞式に行った際に捕まえたふくよかな女性が好みでした。俺もあんな感じに盛り上がって事に及びたい。

コレラの時代の愛、というタイトルと、ヒロインの名前がフェルミーナという名前からイメージしたのは、「よもやこの女性がデリケートな部分のかゆみを和らげる軟膏を発明するのでは」という事でしたが、もちろんそんなこたありませんでした。あと医者役の人は最初から最後まで完全ではないが誠実で明晰な男を演じており、そのハネムーン初夜で、

「触ってごらん、ちんこだよ」

と堂々たる態度で奥様に性の手招きをする演技には好感が持てました。

舞台がコロンビアということで、この辺の映画を撮る際に駆り出される事の多いジョン・レグイザモがヒロインの父親を熱演。豪華な夕食を食べている様子を見て、

「よかった、もうウジ入りのピザなんて食べなくていいくらい出世したんだね、頑張ったねあんた」

と目頭が熱くなりました。

ポスターや予告編から受けるイメージではけなげな純愛物語に見えますが、実際は主人公の童貞こじらせヤリチン一代記コメディーとなっているので、おっぱいが好きな人、童貞(処女)こじらせて困ってる人は観るといいですよ。

こういう映画を一緒に観て笑う事の出来るセニョリータが欲しいなァ……

アディオス

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