タイで事業展開してぶちあたるハードル3つを紹介
タイで事業を展開する際、日本と異なる文化や商習慣に直面し、さまざまなハードルにぶつかることがあります。特に、日本とは異なる働き方や人材採用の難しさ、そして飽き性な消費者ニーズへの対応といった点は、多くの経営者が悩むテーマだと思います。
今回は、タイでの事業運営で直面する主な3つの課題について、私自身の経験を交えながらお話しします。
1. 働く文化が違いすぎる
長年タイで活躍する日本人経営者によって語り尽くされているトピックだと思いますが、働く文化の違いはやはり慣れません。
どういう時に違和感を感じるか、というとざっくり以下です。(他にもたくさんありますが)
時間に対する考え方
病欠に対する考え方
報連相に対する考え方
それぞれ簡単に説明しますね。
時間に対する考え方
こちらはなんとなく皆さん想像できると思うのですが、簡単に言えば「1分の遅れの重み」に対する考え方が違います。
日本だと、9時始業で9時1分にくる人を見ると「あ!あの人やばい人だ!」となる職場の方が多いじゃないですか。(主観)電車も3分遅れるだけで謝罪してますよね。この数分の遅れが、多くの日本人にとっては大きな信用問題になる。
しかし、タイ人の中にはたった1-2分遅れても、「その日の仕事の結果は大きく変わるわけではない」と考える人もいます。
この時間の捉え方には個人主義と全体主義の考え方が根底にある気がしています。そして、この考え方の根底の違いには、日本の全体主義を前提とした道徳教育や部活動の有無があると思っているのですが、個人主義と全体主義は別のnoteで書きます。
いろいろ端折ると、タイ人の方は個人主義の方が多い気がします。なので、1分の遅れは自分の仕事の結果に問題なければOKという考え方になるのですが、日本の場合だと「他人は守っているのに、なぜあなただけが遅れていいの?」と「全体でフェアかどうか」で考えることが多いと思います。
なので、日本の感覚からすと周りと同じように自分も守らなければという動機が働くわけですが、そう考えないタイ人の方が多い印象です。もちろん時間に厳しいタイ人もいます。あくまで実体験に基づく傾向のお話なので「時間をちゃんと守らない人も多いんだな〜」くらいに覚えていただけると幸いです。
病欠に対する考え方
「仕事を休む」ことに対する考え方も少し違います。タイ人の方は「頭痛があって」「お腹が痛くて」「昨日のソムタムが当たって。。」という理由とともに「sick leave」を使います。もちろん病欠は労働者の権利なので、体調不良で休むこと自体問題はないのですが、「あれ、それ休むまでのレベルなのか」と思うこともしばしば笑
このSick leave問題は多くのタイ駐在員、日本人経営者の頭を悩ませています。笑
ただ、そのsick leaveを使う原因を考えると「職場に緊張感がない」「仕事が楽しくない」「メンバーに責任感を醸成できていない」「上司、経営者がなめられている」などの理由も見つかるので、上司、経営者側にも問題があるケースもあります。
マネジメントや人事制度の設計に工夫が必要ですし、私も今頭を悩ませながら工夫しています。
報連相に対する考え方
報連相といったら日本のビジネスにおいて、基本中の基本といわんばかりに教育されますが、そのあたりの意識も日本とタイでは違います。
タイでは、現状報告よりも、一通り段取りがついてから報告することが多いと思います。なのでこちらから聞かないと教えてくれません。笑
仕事内容的に報連相がそこまで必要ない場合は、スタッフのやりやすいように任せつつ、「この話がAかB、どちらかに決まったら教えて」という粒度で伝えるようにしておくのが良いと思います。
(当然細かく現状把握できないことに違和感は残りますが)
2. 日本人が考える「良い人材」の採用が難しい
日本人の「普通」のレベルの高さには驚かされます。長い歴史の中で培われた日本人の基準の高さは、決して侮れないものです。
たとえば、嘘をつかない、約束や時間を守る、嫌なことを言わない、人のものを取らないなどです。「そんなことは当たり前だ」と思うかもしれませんが、その「当たり前」を当然のこととして維持できていること自体が、日本のレベルの高さを物語っています。実際、国境を越えると、こういった基準を一つひとつ確認しなければならないことも多いのです。
たとえば、以下のような点です。
怠惰ではないか
嘘をつかないか
この人はしっかり文章を読めるのか、会話できるか
お金を盗まないか
違法薬物を使用していないか
私の場合、今のところ人材運には恵まれており、スタッフは本当に一生懸命働いてくれています。
(ただ、オープン当初に急いで採用したスタッフ(現在は退職済み)に関しては、少しトラブルがありました。この件については、時間が経ってから改めてお話ししようと思います。)
このように「日本人の普通」をそのままタイに適用して採用などを行うと、「いい人がいない!」「採用しても全然ダメだった!」ということになりがちです。
つい無意識に日本人と比較してしまうのですが、仮にタイ人10人と面接した中でどれくらいのレベルなのか、を考える必要があるなと思います。
3. タイ人は飽き性なので、ニーズの見極めが難しい
タイ人はとにかく新しいものを受け入れるスピードが早いと感じます。日本人も海外から新しいブランドが来ると話題になったり、試しに使う人が多いと思いますが、タイでも同じです。そして、タイ人はその情報をすぐにFacebookでシェアします。
「〇〇が日本から来るらしいよ!」
「〇〇がオープンしたら行ってみよう!」
有名なサービスやお店であればあるほど盛り上がるのです。たまに、日本人である私も知らないブランドが話題になることがあります。よく妻に「これ、日本から来るらしいよ」と言われますが、「そのお店、知らないなぁ」と答えるたびに「日本のこと何も知らないじゃない!」と怒られることもしばしばです。
とにかく、日本で実績があるサービスやブランドがタイに来てうまくPRを行えば、大きな注目を集めるようです。日本からのサービスに限らず、おしゃれなカフェや少し変わったコンセプトのカフェも、オープンするとすぐに拡散され、人気店になります。
しかし、本当の勝負はその後です。一時的に流行しても、タイ人の多くはすぐに違うものに目移りしてしまいます。(うちの妻しかり)
このようにして、流行の移り変わりが非常に早いサイクルで繰り返されていきます。
私も店舗事業を行っているため、空きテナントの情報を常にチェックしているのですが、その中で「元々おしゃれなカフェだったテナント」の情報がかなり多いです。多額の改装費用をかけたと思われるカフェが閉店し、引き継ぎ先を探しているケースが少なくありません。
一時的には「インスタ映え」で集客ができても、タイ人は写真を撮るとすぐに次の「インスタ映えスポット」へと移動します。一度写真を撮った場所にはあまり用がないのです。よほどそのカフェの商品が美味しいなどの強い印象がなければ、リピートは難しいでしょう。私は妻のカメラマンとしていろんなインスタ映えカフェに同行していますが、2度同じ場所にいったことがありません。
そんな飽き性のタイ人の心をしっかり掴んでいるスシローやドンドンドンキのような日本企業もあります。「日本は本当に強いコンテンツを持っているな」と改めて実感しています。
日本国内でもグローバル化が求められる
タイについて今回話しましたが、日本国内でもかなりグローバル化が進んでいるなと日本に帰国するたびに思います。飲食店のスタッフさんも外国人労働者の方がますます増えていると実感します。
雇用主も「日本で働くのだから日本語はネイティブレベル(最低でもN2)くらいは欲しい」、「日本で働くのだから日本の文化にあわせろ」と言っていられない状況は間近に迫っていると思います。人手不足による黒字倒産も増えていますよね。
そうなってくると、近い将来少なからず多くの日本人にグローバルマインドが求められる気がしております。
滋賀にある実家の会社も「ベトナム人の人が応募してきたけど、どうしようか」と悩んでいたくらいですから。
今回は「タイで事業展開してぶちあたるハードル」を紹介しましたが、他の国で活躍する人の話を聞いていると、他の国も同じような課題に直面しているんじゃないかなと思います。
タイでは毎日トラブルだらけなので、役立つ情報ネタに昇華するためにも情報発信を継続していければと思います。
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タイのカルチャーについて
タイの商習慣について
タイ現地のマーケティングについて
など
私の経験からお話できることもありますが、業界業種によっては専門外のこともあります。その場合は周りのタイ人経営者や日本人経営者、その分野の専門家を紹介することも可能です。
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