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金持ちになるには 吉田兼好

中世文学『徒然草』の中で、吉田兼好は次のように書いています。

「ある大富豪は億万長者になる方法をこのように説いた。

人間はあらゆることに優先して、ただ一筋に、金持ちを目指すべきだ。
貧乏では生きている甲斐がない。

金持ちだけが人間らしい人間といえる。そこで、金持ちになろうと思うなら、まず心構えを練る必要がある。


その心構えというのは、ほかでもない。人間の世界は不変である、という信念に立つことなのだ。万が一にも、人生は無常だ、などと悟ってはならない。これが心構えの第一である。

第二に、やりたいことを全部完全にやり遂げようと考えてはならない。この世に生きている以上、自分に関しても他人に関しても、やりたいことは無限にある。

その欲望のままにやり遂げようとすれば、どれほど大金を持っていても、すぐに無くなってしまう。

人間の欲望には尽きる時がない。しかし、財産は尽きる時がある。財産は有限であるのに、無限の欲望に従っても、その欲望を完全に満たすことは不可能だ。

したがって、何かやりたい気が起こってきたら、自分を破滅させるために邪悪な考えがやってきた、と厳しく警戒して、どんな小さなことにも、金を費やしてはならない。

第三に、金を召使いのように自由に使用できると考えるならば、その考えを改めない限り、いつまでも貧乏生活を逃れることはできない。だから、金を主君のように神様のように大切に敬って、どんな用にも使ってはならないのだ。

第四に、屈辱に遭っても、怒ったり恨んだりしてはならない。

第五に、うそ偽りなく、約束は固く守れ。

以上の五つの心構えを守った上で、利益を追求するならば、まるで火が乾いた物に燃え移り、水が低い所に流れ落ちるように、富は自然と速やかに訪れるだろう。

その結果、金がどんどん貯まってくるときは、宴会や美女などで遊興せず、豪邸に住まず、たとえやりたいことがやれなくとも、心はいつも安らかで楽しいものだ。」

217段からの抜粋です。金儲けの心構えとは、古今東西変わりませんね。

でも、出家した遁世人の兼好は、この後の段で、この主張をくさしているのが、徒然草のおかしみでしょうか。

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毛針
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