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Veselka's Diner/Doctor Rockit(2003)
マシュー・ハーバートのプロジェクト、ドクター・ロックイット。
ハーバートは、イギリスのハウス・ミュージシャンでクリック・ハウスのパイオニア。
生活音をサンプリングした曲の制作など前衛音楽家としても有名なアーティスト。イギリスの実験音楽の雑誌Wiredとダンス誌Mixmagのちょうど中間点にいるような人。実験性と大衆性を繋ぎ合わせるセンスが抜群にある人です。
またレイディオ・ボーイという名義では政治的なテーマも憚らず、マクドナルドやGAPを批判した曲や、オートメーション化された食品加工と動物愛護をテーマにした一匹の豚の生まれてから死ぬまでの一生を描いた「One Pig」も。
2006年には現在の国家体制を超えるものとして、ネットワーク上の国家である「カントリーX」を立ち上げ、一人のミュージシャンというより、もはや全身前衛芸術家。
"Why not start a country? only this time,vurtial one. free from the necessity to defend its borders physically, we can reduce the violence of exclusion. a new description of resistance."
「新しい国を始めよう。次こそは物理的な国境線を守る必要性のない、排他性を低減できるヴァーチャルな国だ。新しいタイプの抵抗だ。」
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さて、本題の音楽についてです。こんな政治的な先鋭さとは対照的に、彼の有名曲Cafe De Floreはその優雅さから、当時のカフェ系コンピレーションには軒並み収録されていました。
テクノ/ハウスのミュージシャンにとっては、名義によって打ち出す方向性を変えるのが、エイフェックス・ツイン以降の「普通」。今回紹介するVeselka's Dinerは本人が主催のアクシデンタル・レーベルから2003年にドクター・ロックイット名義で発表した曲でした。
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フルートのイントロからアコーディオンの旋律に入り、繰り返しつつ徐々に高揚していく。ピアノ、サックス、トランペット、チューバがおもむろに重ねられて、美しいハーモニーが泡沫のごとく現れては消えていく。
Cafe De Floreがどちらかというと、音色、楽器編成自体のゴージャスさでその場の空気を一瞬で変えてしまうのに対し、本曲は構成の妙から、いつの間にか思わず聴き入ってしまうタイプ。BGMとしては聴き流せない、丁度いい緊張感があります。
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当時は鬼才などと言われていましたが、これから数年後には、BIG BANDを率いたり、クラシックの名曲(マーラー)を再構築したりと、もう「巨匠」の称号をホシイママにしています。
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