エレアコのピックアップの話

 本日仙台へ帰らせていただきます。健太です。高速バス車内はnote書くかメルカリ見るくらいしかすることねーです。ということで前回のアコギの話に引き続き、今回はピックアップシステムについて記そうかと思います。

エレアコのピックアップの種類

 まずエレアコとはエレクトリック・アコースティックギターの略です。アコースティックギターの音をピックアップと呼ばれる一種のマイクで拾い、電気信号に変換して音を出すものです。

 いわゆる「エレキギター」、例えばFenderストラトキャスターやGibsonレスポールといったものにもピックアップが付いています。
 マグネティックピックアップというものです。原理は高校物理で習う電磁誘導ですね。磁石にコイルを巻いたものをピックアップとし、鉄の弦の振動により微弱な電流が発生するワケです。エレキギターやエレキベースのピックアップは、めっちゃくちゃたくさんあるのですが、原理的にはほとんどこれ1種です。

 対してエレアコのピックアップというものは原理から異なるものが複数存在します。各々にメリット・デメリットがあります。普段からアコギでステージに立つ人はそれを理解する必要があります。

マグネティック・ピックアップ

 エレキギター・ベースと同じ方式。電磁誘導により弦の振動のみを拾う。ボディの音は全く拾わない。アクティブもパッシブもある。シングルもハムもある。

メリット:弦の振動のみを拾うため余計な他の音を拾わない。ノイズに比較的強い。ハウリングに超強い。ケーブル出しのものはサウンドホールに即時の着脱が可能。複数のアコギで使い回せる。

デメリット:エレキギターっぽい出音になる。安価なものではアコギの音からは遠くなりがち。
EQがついているものが少ない。
当然だがスチール弦の以外の音は拾わない(重要)。つまりクラギやウクレレ等ガット弦では使えない。

例)L.R.Baggs M80、Fishman Rare Earth、SUNRISE S-2、Seymour Duncan SA-3HC(私が所有) 等


ピエゾ・ピックアップ(アンダーサドル)

 サドル下に設置したピエゾ素子により、サドルを伝う弦を含むすべての振動を拾う。おそらくエレアコにおいて最も主流のピックアップ。ピエゾの振動は非常に微弱なのでアクティブオンボードプリアンプとの組み合わせが多い。

メリット:音が中域に寄っているためバンドアンサンブルで抜けやすい。よく聴くエレアコの音だよね、って感じがする。
オンボードプリアンプとの組み合わせが前提なので本体にEQやチューナーが付いていることが多い。ハウリングに比較的強め。

デメリット:いわゆる「ピエゾ臭い」音になる。
オンボードプリアンプの装着が面倒(この間やりました)。アコギにデカい穴を開ける必要がある。他のギターと使い回すとかは不可。
アクティブなので9V電池が切れると音が出ない。

例)L.R.Baggs Element、Fishman Ellipse AURA 等
(アンダーサドルピエゾはギターメーカーが搭載していることが多いので逆に市販のものが少ない)

コンタクト・ピックアップ

 これもピエゾ。円形(とは限らないけど)のピエゾ素子をボディトップに貼り付け、トップ板の振動を拾う。貼り付け部分が複数あるものもある。ボディヒットの音を拾う(スラム奏法)ために用いられることも多い。

メリット:弦の振動だけでなくトップ板の振動も拾うので、ナチュラルな音になりやすい。ハウリングにも比較的強い。比較的安価なものも多い。
トップ板の表に張り付ける場合はマグネティック同様、複数のギターで使い回すこともできる。

デメリット:張り付ける位置によって音が大幅に変わる。安価なものはノイズも多めに拾ってしまうことも。EQが付いていることは稀。個人的にはプリアンプ必須。

例)L.R.Baggs iBeam、ARTEC A1-OSJ、K&K Twin Spot Internal Pickup

コンデンサーマイク

 ボディ内にコンデンサーマイクを設置する。普通にマイクなので最もナチュラルで生アコギに近い出音になる。

メリット:空間の音を拾えるので一番本物のアコギに近い出音になる。

デメリット:ハウリングに超弱い。他の楽器が居るバンドで使うのは難しい。向きを変えられるタイプはセッティングが難しい。繊細で壊れやすい。あと高価がち。最強の音を出せる代わりに数多くのデメリットを抱えている。

例)L.R.Baggs Lyric、AKG C411/L 等


ピックアップの組み合わせ

 エレアコのピックアップは上記の4種に大別されます。各々にメリット・デメリットがあることは理解していただけたかと思います。
 アコギを本腰を入れて弾いてらっしゃる方やプロのミュージシャン等は、複数のピックアップを組み合わせて弱点を補完しつつ、より生音に近いシステムを組んでいる方が多いです。また市販のピックアップでもこのようなハイブリッドのものとして売られていることがあります。組合せの例を紹介します。

アンダーサドルピエゾ + コンデンサーマイク

 コンデンサーマイクのエアー感にアンダーサドルピエゾのくっきりした弦の音を足した組み合せです。弾き語りで明瞭な音が欲しい際に便利ですね。
 これは既製品で超有名なピックアップがあります。L.R.Baggs Anthemですね。Element + Lyric + サウンドホールプリアンプみたいな感じです。

マグネティック + コンデンサーマイク

 上のシステムより明確に役割分担している感じですね。より明瞭に弦の音をマグネティックで拾い、コンデンサーマイクはエアー感担当という感じです。
 プロミュージシャンでは大石昌良さんがこのシステムを採用しています。YAMAHA LS36に搭載のSYSTEM-41はアンダーサドルピエゾ+コンデンサーマイクのシステムですが、そのアンダーサドル回路を抜き取り、代わりにSUNRISE S-2を搭載しているそうです。

 既製品ではFishman Rare Earth Mic Blendが有名ですかね。マグネティックの下部から単一指向性のマイクが生えてるみたいな見た目で、向きやブレンド量により様々な音色が出せそうです。

マグネティック + コンタクトピエゾ

 マグネティックで弦振動を拾い、コンタクトピエゾで鳴りやボディヒットの音を拾う組み合わせですね。
 これはMOROHA UKさんのシステムです。大ファンなので紹介させて下さい。マグネティックはSUNRISE S-2、コンタクトピエゾは公表してなかった筈です。もしかしてFurchオリジナル?これら2つの信号をステレオエンドピンジャックから出して、Marine Blenderでブレンドするという形ですね。詳しくはイケシブのUK回を見るといいと思います。
 ちなみにあの押尾コータローさんもこのシステムだったかと思います。TRIAL RAPTOR SYSTEMで検索すると詳しい説明が出てきます。マグネティックはSUNRISE S-2です。何回出てくんだよこのピックアップ。新品8万円します。欲しすぎだろ。

アンダーサドルピエゾ + マグネティック

 前回紹介した僕のメインギターのシステムです。Ibanez AE325-LGSです。ハウリングには強めの組み合わせで、明確に弦の音をお届けしたい、バンド内で使用したい場合に良い組み合せだと思います。
 アンダーサドルもマグネティックも、どっちもアコギの音から遠めなら組み合わせる意味ある?と思うかもしれませんが(俺は思いましたが)、マグネティックが付いてるのはサウンドホールネック寄り、アンダーサドルは文字通りサドルの下と位置が離れているので、組み合わせることでより自然な鳴りを再現できます。ちょっと違うけどテレキャスターのセンターが良いみたいなもんですね。

アンダーサドル + コンタクト + マグネティック

 3点盛りです。現行のIbanez PA300Eがこれですね。僕が最初に欲しかったモデルです。コンタクトとアンダーサドルを混ぜる利点ってあるんですかね?テクニカル系ソロギターの人にとってはいいのかもしれません。
 ちなみに下位モデルのPA230Eはアンダーサドル抜きのコンタクト+マグネティックです。UKさんスタイルですね。


まとめ

 はい。以上長かったですけど、エレアコのピックアップは

・マグネティック、アンダーサドル、コンタクト、コンデンサーマイクの4種類
・各々にメリットとデメリットがある
・複数のピックアップの組み合せで、目的に合った音を出すことができる

という感じです。ナチュラルな音を出すことだけがエレアコのピックアップの着地点でないというのが非常に面白いところですね。特に最近はフィンガースタイルでのスラップやスラム奏法も流行ってますし、各々の目的・形態に合ったピックアップの選択はとても大切です。

 ここまで読んでいただいた方。ありがとうございます。いつもnoteは長文になってしまいますね。なるべく短く纏められるよう気を付けます。

 次回はエレアコのプリアンプの話をします。長文で。(固い意志)

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