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かの伝説の「リゾートサルーン・フェスタ」を拝んできた話。
とある日、WESTエクスプレス銀河で下関へ行った際に訪れた、静態保存車両カットボディのお話。
リゾートサルーン・フェスタとは
リゾートサルーン・フェスタ(以下フェスタ)とは、JR西日本が1988年に運行を開始したジョイフルトレインの愛称である。幡生車両所にてキハ58系気動車から改造される形で登場した。
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ハイデッカー構造による展望車や車内の豪華な内装が目を引くが、なんといってもこの車両の特徴はその顔つき。特に窓下についている「口」が最も特徴的だ。唇は下側が上下に動く構造となっており、内部は中央に列車愛称を表示できる電光掲示板を、左右にスピーカーが配されている。このスピーカーから音声を発することが可能であったようで、「みなさん、こんにちは!」「ぼく、フェスタです!」などのような声を出していた模様(詳しくは各自でYoutube等を御覧ください)。
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この特徴的な機構、そして見た目は正しく「人間そのもの」であり、そのユニークさは我々に大きな衝撃を与えたのである。フェスタの実働期間は15年程度であったが、そのユニークさ故現在も語り継がれている名迷列車であるのだ。
「フェスタ」の保存車体を知ったきっかけ
とある日、私は友人とWESTエクスプレス銀河に乗り、一路下関へ観光目的に向かった。
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その日は前日に銀河を降りた後、レンタカーを借りて長門地区を巡っていた。その時友人から「この地域のどこかにはフェスタのカットボディがある」という話を聞いたのだ。私はこのとき初めて、フェスタが現存しているという事実を知った。
しかしこのときの一番の問題点は、所在地がわからないという点。フェスタはあくまで個人宅の庭に置いてある物であり、プライバシーの観点からネット上ではいくら探しても情報がないのだ。よって、フェスタの顔を拝むことは困難であるかと思われた。私も正直この時点で諦めていた。
その巡り合いは唐突に。
あるとき。私達は観光地巡りの間、特定のバスを撮るためとある地へ寄り道をしていた。そのとき、フェスタの存在を知っていた友人が「この辺、ネット上のフェスタの写真と似てね?」と言及。確かに似ていた、背景の特徴が一致していたのだ。そうしてバスの撮影のために奇跡的に立ち寄った地にて、私達は「フェスタ」を探し始めた。
探し始めてから見つけるまでの時間はそう長くはなかった。徐々に背景がネットの画像に近づき、そしてついにその時はきた。そのフェスタの後姿が見えたのだ。すぐさま車を止め、我々はフェスタの見学へ向かった。
貴重な「フェスタ」の保存車体
早速そうと決まれば所有宅へお邪魔し、無事撮影の許可を取った。どうも年に数名程度、私達と同じような経緯で訪れる方がいるそうで。そしてそこには、正しくあの特徴的な顔つきをした「フェスタ」の姿が。
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あの特徴的なハイデッカー構造、窓、唇、そして顔つき。すべてが正しくあの「フェスタ」でした。惜しくも錆びれた姿ではあったものの、それが気にならないくらいのインパクトある顔つきである。
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カット車体ではあったものの、運転台もそのまま残っていた。内部はほこりだらけではあったものの、個人宅での保管と考えれば状態は良い方であるように感じます。またどうも所有者さんの方とお話させていただいたところ、数年間での塗装の劣化などにより乗務員扉が開かなくなってしまったようで…乗務員室へ入ることは叶わないようだ…
ここに「フェスタ」がある訳。
所有者さんと色々お話をさせていただき、ここに「フェスタ」がやってきた経緯についてお話させていただきました。購入場所はどうやら幡生からの直接払い下げであったようで、入札方式で落札されたようです。この際、一番の問題となったのは、やはり敷地。この問題が故多くの入札者が落札を断念したとのこと。
そして「フェスタ」がこのようなカット前面となったのは、敷地や輸送費の問題ももちろんあったのでしょうが、一番の問題は陸運局の認可が必要であった点だったようで…理想は1/2カットボディだったらしいのですが、その場合でも陸運局の認可が必要であったことから、前面部のカットボディを置くという現在の方式に落ち着いたようです。
そしてこのフェスタ、輸送の際に輸送業者が土台にしっかり固定する工事を同時に行ってもらったようで、これにより風で倒れるといった事故が防止されているのです。
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所有者さんは「錆びれた姿で申し訳ない」と仰っていましたが、いやはやむしろ保存していただいてるだけありがたいという物です。本当は所有者さんも、パテを塗ったり塗装を施したりで補修を行いたいとのことでしたが、やはりその技術や費用、時間がないとのこと。クラウドファンディングでもすれば十分対応できるのに…とは思ったものの、やはりそう一筋縄にはいかないのだろう…
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そうして30~40分ほどフェスタを楽しみつつ、所有者さんとお話しした後にこの場を後にした。またここにくるときがあればまた来ますね。
あとがき
今回は個人宅での保管であるということを鑑み、場所の特定が容易にはできないようにモザイクを入れさせていただきました。なお所在地などの問いかけには一切応じることができませんので、予めご了承ください。