ニンジャスレイヤーTRPGシナリオ「キックアウト・ザ・ニンジャ・マザーファッカー」
1 はじめに
(1)シナリオ前提
このシナリオはソロセッションを除けば初めてニンジャスレイヤーのセッションを行うプレイヤーを想定している。
プレイヤーのニンジャの強さは初期作成~ソロセッション経験1、2回を想定している。
また、想定プレイヤー人数は3人から4人である。2人でもプレイ可能だが、その場合マスターは適切に敵戦力を減らすこと。
このシナリオはニンジャスレイヤー第一部の同名のエピソードを元にしており、地の文も多くが同エピソードから取ってきている。マスターは世界観等を掴む参考として事前に読んでおくとスムーズにマスタリングできるだろう。
(2)本シナリオの使い方
・ニンジャスレイヤーTRPGを初めて遊ぶ際のセッション
・キャンペイグンの1話目(その場合はヤクザの事務所を2話目に使うといいだろう)
(3)コンセプト
本シナリオは初心者PLに、サンプルシナリオ1「ヤクザの事務所」よりも更にミニマルに、ニンジャスレイヤーTRPGの面白さを凝縮して楽しんでもらうことを目的としている。
本シナリオを作るにあたっての目標を以下に箇条書きにした。
2 シナリオ
(1)ダンゴウ「ソニックブームからの指令」
【トコロザワピラー・会議室】
地の文:
血も涙もないソウカイ・シンジケートのニュービーニンジャである君たちは、トコロザワ・ピラーの会議室に集められ、アイサツを行うことになった。おそらく今日、君たちにはシンジケートから何らかのヤクザクエストが与えられるのだろう。
この場には、既に面識のある者もいれば、初対面の者もいる。アイサツの中でフレンドリーに振る舞う者もいれば、必要以上に馴れ合おうとしない者もいる。
明日のローン返済のためならばどんな事でもしようと考えるサンシタもいれば、いずれはラオモト・カンですら倒しネオサイタマの王として君臨しようという野心に溢れた命知らずもいるかもしれない。
……では君たちは順番にアイサツすること
地の文:一通り会話をしていると、南のフスマを開けて、ソウカイ・シックスゲイツの一人、ソニックブーム(※NMが好きなシックスゲイツにしてよい)が現れた。
ソニックブーム「よう、集まってるな、能無しども? 今日はニュービーのテメェらにミッションを持ってきてやった。ありがたく思えよ、エエッ? ガキのお使い程度のクソみてえに簡単な仕事だがなァ……」
ソニックブームは以下のようなブリーフィング内容を説明する。PLの慣れ具合次第ではあるが、基本的にはすべての情報を与えること。
この後、ソニックブームはPCからの質問を受け付ける。NMはPLのTRPGへの慣れ方等を踏まえ質問に答えること。全ての質問に答える必要は無い。
ソニックブーム「どうだ? アア? 理解したんだろうな? なら、こんな所にボサッと突っ立ってマヌケ面並べてんじゃねえぞコラー……。とっとと行って、ハンコを押させて来やがれ」
(2)ライブハウス『ヨタモノ』
地の文:
今日もネオサイタマには陰鬱な重金属酸性雨が降り注いでいた。 君達はしとどに濡れながら、ライブハウス『ヨタモノ』に向かって色付きの風となって走る。サンシタニンジャである君達に、送迎のリムジンなどあろうはずもなし。
「アイエエエ!?」運悪く君達の姿を視認したサラリマンが悲鳴を上げた。
『ヨタモノ』があるムコウミズ・ストリートの治安はあまりヨロシイとは言えない。
ゲイシャ・ディストリクトと接するこの路地は、怪しげなポンビキやチョンマゲクラブのスカウトマン、近隣のライブハウスを根城とするパンクスが行き来する。
……無論、ニンジャである君達にとってはその全てが獲物にすぎないのだが。
【マップ】(「どどんとふ」の場合タテ18マス×ヨコ21マス)
グーグルスプレッドシートへのリンク
①ムコウミズ・ストリート『ヨタモノ』前
地の文:
やがて君達は『ヨタモノ』に辿り着いた。
建物の前には依頼人である『タメジマ』と思しき眼鏡のヤクザが立っており、揉み手をしながら君達を出迎える。その表情にはニンジャである君達への怯えが混じっている。
タメジマ「ドーモ、タメジマです。 ソウカイヤのセンセイ方、お待ちしておりました。ここが、件のライブハウス『ヨタモノ』です」
タメジマはヨタモノの入り口である地下への階段を指差す。
タメジマ「ここのオーナーがとにかく頑固で、ヨージンボも屈強……どうかセンセイ、オネガイシマス……!」
地の文:タメジマは君達をヨタモノ中へと案内する。
《……アンタイセーイ!》狭い階段を下るにつれ、奥からライブの音が煙草やアルコールの臭いと入り混じりながら漂ってくる。《スシを……食べ過ぎるな……!》
②『ヨタモノ』廊下
地の文:
『ヨタモノ』に入ると左右に廊下が広がっていた。
左手にはライブハウス、右手には事務所、そして正面にはトイレがある。
タメジマ「オーナーがいる事務所は右手に……」
地の文:
タメジマが君達を案内しようとしたところ、廊下にたむろしていた5~6人のチンピラが君達の姿に気づいた。
「ナンダテメッコラー……」
「ア、テメェ地上げ野郎か!?」
「ヨタモノ地上げするつもりかコラ?」
「ひょろついたヨージンボ引き連れやがって、俺らがボコしてやる!」
「「「「アンタイセーイ!」」」」
地上げ屋として悪名高いタメジマ、そしてそのヨージンボである君達の姿を見咎めたチンピラ達は、拳を振り上げて君達に襲いかかってくる!
――その姿は、ニンジャである君達にとってはまるでスローモーションのようだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――
◆チンピラ(種別:モータル)
体力:1
精神力:1
脚力:2
カラテ:1
ニューロン:1
ワザマエ:3
近接攻撃ダイス:1
万札:1
能力まとめ:ただ殴ってくるだけ。モータルのため回避はできない。
――――――――――――――――――――――――――――――――
戦闘終了後、タメジマは、失禁しながらドゲザするチンピラの頭を踏みつけながら(もしくは死体を蹴飛ばしながら)満足気にPC達を称賛する。
タメジマ「ハハハ!ザマアミロだ! センセイ達に逆らうからこうなるんだよ! 流石ですセンセイ達!」
もしPC達がその行為を咎めた場合、タメジマは驚愕し怯え、卑屈にPC達に謝罪する。
タメジマ(ソウカイヤクザは非道と聞いていたがどういうことだ……?)
どちらにせよその後、タメジマは事務所の方へとPCを案内する。
③事務所
地の文:
ここはライブハウス『ヨタモノ』の事務所だ。
部屋の中央にはオーナー用の大きな事務机があり、その手前に応接用の安っぽいバイオバッファロー革張りのソファがある。
部屋の奥には楽屋、左側奥にはライブハウス、右側奥には外への非常階段へのドアがある。
禿頭にサングラスをかけたオーナーはしかめ面をして事務机に座り、その左右にはシシマル・パンクスのヨージンボが4人。ヨージンボ達は皆屈強で、なんらかの格闘技の経験者であることは間違いない。
タメジマは君達に後ろで立っているように目配せをすると、ヘラヘラと笑いながら応接用のソファに座る。
タメジマ「ヘヘ、ではこの土地の明け渡しの件、ハンコをもらいましょうか?」
オーナー「オマエは馬鹿か?繰り返し『ノー』突きつけられるためにまた来たのか? オマエのドンくさいバウンサーの代わりにまたシコタマ殴られる役を連れてきたってか?」
地の文:オーナーは常人なら震え上がるような眼光でタメジマと君達を睨みつけると、右手でキツネ・サインを作って威嚇した。「オトトイ・キヤッガレ!」これは日本古来から存在する明確な敵意表現だ!
タメジマ「ヘヘ……いやね、考え直しちゃくれませんかね?……もうね、アンタも私も、後戻りできないんです」
オーナー「お前……?」
地の文:
タメジマのただならぬ様子に、オーナーは目を見開いた。
タメジマは振り返り、目で君達に前に出るように促した。ヨージンボ達が慌ててオーナーを守るように前に出てカラテを構える。
オーナー「こいつらタダもんじゃねえ!おい、お前ら気をつけろ!」
ヨージンボ達「「「「ザッケンナコラー!」」」」
地の文:ヨージンボ達はPC達のただならぬアトモスフィアに怯えながらも、果敢に挑みかかってきた!
――――――――――――――――――――――
◆ヨージンボ(種別:モータル)
体力:3
精神力:1
脚力:2
カラテ:3
ニューロン:1
ワザマエ:3
近接攻撃ダイス:3
万札:3
スキル:突撃(手番はじめに宣言。縦横斜め一直線にしか移動できなくなるが、移動力が2倍となり、そのターンの攻撃力が+1される)
装備:チャカ・ガン:遠隔武器、ダメージ1
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地の文:戦闘終了。ニンジャのカラテにモータルが敵うはずもなし、ヨージンボ達は物言わぬ骸となり周囲に転がった。(※気絶のときは別表現を使うこと)
オーナー「オ、オオ……」
タメジマ「わかったでしょう?大人しくハンコを出して下さい」
オーナー「こ、断る! このライブサイトに客がくる限り、地上げには屈しない!」
地の文:オーナーは一瞬事務机の一番上の引き出しに目をやったが、要求をはねつけた。
タメジマ「頑固ですねえ……じゃあ……客が来ないようにしてやりましょうか」
タメジマは部屋の左側にあるライブハウスへ続く扉に目をやった。
オーナー「まさか、客に手を出すつもりじゃ……!」
タメジマ「なあに、ちょっと怖がってもらうだけですよ」
④ライブハウス
地の文:
君達がライブハウスに入ると、目玉であるアベ一休のライブはもう終わった後のようだった。
しかし興奮の余韻が会場全体を包んでおり、DJが鳴らす音楽に合わせ大量のライブ客がダンスを楽しんでいる。「アンタイセイ!」「アンタイセーイ!」誰かがアベ一休を象徴するチャントを叫ぶと、他の客も口々にそれに続いた。
客の大半はパンクスであるが、ニボシめいた優等生や、小奇麗な女子高生も紛れていたり、多様性に富んでいる。
流石ライブの聖地と呼ばれるだけのことはある。確かにこれは少し客にトラウマを刻んでやらねば地上げ後の反対運動がうるさそうだ。
パンクス「アン? なんだァテメェ……」
パンクスの一人が場違いな客である君達の存在を咎める。
キミ達はこのネオサイタマの狩人だ。この無邪気にアンタイセイを叫ぶヒツジ共に、ネオサイタマの闇の秩序を刻み込んでやることができる。
オーナー「お、おい!何をする気だ!やめろ!」
地の文:「「「アイエエエエエ!」」」君達がニンジャの暴虐を振るうと、客たちは血相を変えて逃げ惑う!
地震、雷、火事、ニンジャ。命知らずのパンクスが例外的に恐れるものを言い表したジョークである。裏を返せば、それほどまでに災害的なものでなければパンクスを恐れさせることはできない、という意味でもあった。だが、こうしてこの場を掌握しているのは、まさにそのニンジャなのだ!
オーナー「わ、わかった!ハンコを押す! だからもうやめてくれ……!!」
客を3人程度殺害もしくは気絶させたところで、オーナーは大人しくハンコを持ってきて、PC達にわたす。
NMはPC達に、さらに客を殺していくか、ここでやめるかを選択させること。ここでオーナーやタメジマを殺しても良い。
⑤ライブハウス ~Wasshoi判定~
PC達が客への攻撃を止めた時点でNMはWasshoi判定を行う。2D6を振り、出目からここまでの【モータル殺害数÷3(端数切り捨て)】を差し引く。
最終的な数値が、全PC中で最も高いDKKよりも低くなった場合、ニンジャスレイヤーがライブハウス入口に出現する。
また、客殺害中にモータル殺害数が16人以上になった場合、もしくは客殺害数が8人になった場合、確定でニンジャスレイヤーが出現する。
ニンジャスレイヤーが出現した場合はシーン⑥「逃走~ネオサイタマの死神~」に、
Wasshoi判定でニンジャスレイヤーが出現しなかった場合シーン⑦「最後の刺客」に移行すること。
(参考)ここまでで殺害できるモータル
チンピラ:6人
ヨージンボ:4人
オーナー:1人
タメジマ:1人
客:12~20人
⑥逃走~ネオサイタマの死神~
地の文:
――その時である!
ニンジャスレイヤー「Wasshoi!!」
地の文:
ニンジャの暴虐により地獄と化したライブハウスに地獄より禍々しいシャウトが響き渡った!
入口から赤い弾丸めいて突入してきたのは憎悪と復讐の化身!
ブースのLEDボンボリが、突入者の赤黒の装束を、そして「忍」「殺」と彫金されたメンポを照らし出す!
ニンジャスレイヤー「ドーモ、ニンジャスレイヤー(orナラク・ニンジャ)です」
地の文:アイサツからコンマ1秒、ネオサイタマの死神は自らの背後の扉及び部屋右にある事務所への直通扉に向け恐るべき精度でスリケンを投擲、赤黒い炎によりカギを溶接し通行不可能にした。
◆ニンジャスレイヤーの行動について
・ニンジャスレイヤーの出現と同時にサツバツとした空気が漂い、アトモスフィアがハードモードになり、基本回避難易度がHARDになったことをPCに伝える。(区別が面倒なので、射撃も回避HARDとしてしまってもいいかもしれない)
・ニンジャスレイヤーは1ターン目、最もDKKが高いPCにツヨイスリケンを投擲(回避難易度UH、ダメージD6)。以降最もDKKが高いPCを優先的に殺害しようと動く。
・ナラクニンジャの場合は1ターン目から遠慮なく連続側転を使用し、PC達を縊り殺す。(ついでに次々と一般人も殺していく。これは手番を消費しない)
◆裏廊下から楽屋への扉
裏廊下から楽屋への扉はカギがかかっており、ハッキング判定でHARDで開けられる。
ただし、開けようと試みたターンは扉の前に立つ必要があり、またハッキングは1チーム1回しか試すことはできない。(セキュリティロックがかかるのだ)、1度開けてしまえば誰でも通ることができる。
なお、PCが開けたか開けないかに関わらずニンジャスレイヤーはこの扉の前に立ち止まることなくカラテで粉砕し、通行できる。
・裏廊下を通り事務所右側の扉から出て、マップ端にたどり着ければそのPCは生還である。全PCが死ぬか生還したらミッション終了である。生き残ったPC達で⑧ミッション評価へ移行する
⑦最後の刺客
地の文:
ハンコを手に入れ、ライブハウスから出ようとする君達。だが、ライブハウスの入口に一人の男が現れた。男の出で立ちは漆黒のニンジャ装束、そしてメンポ。――紛れもなくニンジャだ。その後ろにはクローンヤクザが2人。
サイドスピアー「ドーモ、サイドスピアーです。お前達のやってきたことは見させてもらった、見たところニュービーのようだがそうとは思えぬ良い手際だ」
地の文:サイドスピアーと名乗る男はオジギし、邪悪な黒いヤリを構えた。
サイドスピアー「しかし土地の権利所は俺様がいただく。この土地は我がブラックヤリ・ヤクザクランもかねてより狙っていたもの。今、貴様らから権利書を取り上げればまさに漁師がカチグミというやつよ」
地の文:
なんたる狡猾さ!この土地を狙う他のヤクザクランである! どうやら同じく『ヨタモノ』の地上げを狙っていたこのニンジャは、君達がこのミッションに派遣されたのを見かけ、その横取りをすべく現れたのだ!
――――――――――――――――――――――――――――――――
◆サイドスピアー(種別:ニンジャ)
体力:6
精神力:5
脚力:3
カラテ:6
ニューロン:5
ワザマエ:4
ジツ:2(カトン)
近接攻撃ダイス:6
回避ダイス:6
万札:8
能力まとめ:近接攻撃威力2、遠距離ではカトン(中心部D3ダメージ)
◆装備や特記事項
強烈なヤリドー:近接攻撃。ダメージ2
回転ヤリドー:周囲の敵全員に近接攻撃。ダメージ1
――――――――――――――――――――――――――――――――
地の文:「お、俺がこんなニュービー達に……! サヨナラ!」サイドスピアーは爆発四散!
⑧ミッション評価
PC達がニンジャスレイヤーから逃げ切ったか、サイドスピアーを撃破したかに関わらず、その直後に、ソニックブームからIRCが入る。
ソニックブーム「ご苦労だったな。後始末のためのソウカイヤクザを送った。テメエらは土地の権利書を持ってとっとと帰ってこい。モタモタしてたらブッ飛ばすぞ」
地の文:
ライブハウスのモータルはもう殆どが逃げ、死体しか残っていない。死体漁りなどをしてもたもたしていたら、命令違反として実際にソニックブームにボコボコにされる可能性がある。
評価基準は以下のとおり。NMは各評価基準を満たしているかをチェックし、それに応じた褒め言葉を与えること。
また、ソニックブームにニンジャスレイヤーのことを報告すると、彼は君達の負った怪我と報告を見比べて以下のように言う。
また、サイドスピアーを殺害していた場合は、ソニックブームは以下のように言う。
セッションの最後に、ソニックブームはアジトを持っていないニンジャに一人住まい用の『ソウカイ・アパート』を手当してくれる。最低限の設備しかないが、家賃不要で住むことができる。
【ソウカイアパート】(「どどんとふ」を使う場合タテ8、ヨコ5)
ソニックブーム「住むところにも困るくらいのサンシタ用の住処だ。まともなアジトが見つかるまで住めば良い。俺からしたらウサギ小屋もいいところだが、テメェらにはお似合いだろうよ」
以上、セッション終了。お疲れ様でした!
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