トレーニングをするとなぜウマくなるのか
どのような競技であれ運動能力を高めるためには必ずトレーニングを行います。
ここでは自由エネルギー原理による運動制御理論を基に「トレーニングをするときに何を意識するべきか」を書きたい。
ウマくなる理屈を知ることが第一
かつてヒトは100m走で10秒の壁を越えることができなかった。
しかし1人が9秒台を達成すると次々にこの壁を破り始めた。
驚くことに遺伝子的にも難しいと思われていた日本人でもこれが可能になったのだ。
なぜか。
①どうすれば速く走れるかイメージが明確になり、そして
②9秒台が不可能ではないことを知ったからだ。
神経学的な運動上達の仕組み
こんな事を理学療法士らしく書くと数多の論文を引用し、事細かな機能について述べて、膨大な量の文字を搭載させなければならないのでなるべく簡潔に書きたいと思います。
大脳:運動の戦略を立てて運動が終了した時点の予測された感覚信号(遠心性コピーと呼ぶ)を小脳、筋肉に送る。
筋肉:遠心性コピーに近づくように収縮する。
感覚器:骨の位置関係や筋肉の伸縮状態などの情報を大脳、小脳などに送る。
小脳:大脳から送られた遠心性コピーと実際に運動した時に感覚器から送られてきた感覚の誤差をモニタリングして、誤差情報を大脳や筋肉に送る。
大脳から送られる遠心性コピーとは
運動情報ではなく、運動を達成した状態(手を高く上げた状態とか)における感覚予測信号です。
大脳から送られる信号が「運動」で、大脳に入ってくる信号が「感覚」だとわざわざ変換が必要なので「感覚」という共通の通貨を使った方がいいんです。
運動が始まると感覚器が骨の動き、筋肉の動きを逐一小脳、大脳に送ります。
小脳は遠心性コピーと感覚器からの感覚の誤差を検出して大脳に送り、新しい感覚イメージに書き換えさせたり、筋肉にそのままもう少し縮んで遠心性コピーに近づけろ!っていう信号を出したりします。
このように4つの器官が何回もループしあって運動が行われています。
(実際は大脳、小脳、筋肉、感覚器は脊髄を通ってやりとりが行われていて、その脊髄内でもいろんな連絡のやりとりが引き起こされるのでもっと複雑です)
最初は遠心性コピーと実際に受ける感覚との誤差が大きいため何回も誤差修正が行われていたものが、回数をこなすことによってこのやりとりが減っていく。
つまり少ないループ回数で遠心性コピーを体現できるようになることがコツを掴んだと言える状態です。
反復練習にはある動作の誤差を最小にするという点で価値があると言えるでしょう。
じゃあ能力の最大値を上げるには?
反復練習でコツを掴んだとしてもそれはすでに持っているチカラの中での話です。
上の運動上達理論で大事なことは、大脳が筋肉に対して「動けーーーー!」って指令を出しているんじゃなくて「こんな感覚取りに行ってきてね、気持ちいい体験させてあげるから」って課題を放り投げるってところです。
ここに最大値を上げる秘密が隠されています。
脳は自分が出したことのないチカラを出すよう指令することができません。
だって出したことないんだもん。
でも今持っている最大限のチカラを出したときの感覚は受け取ることはできる。
なので脳はさらに大きいチカラを出したときの感覚を予測して筋肉に投げかけることによって最大値を上げる試みをするわけです。
コツを掴んでこの最大値が上がった状態がウマくなったと言える状態と言えるでしょう。
トレーニングではイメージすることと諦めない心が重要
はじめに話した100m走を例にすると
①壁を敗れていない選手は9秒台を出した選手の走り方を見て・イメージしてトレーニングに励んだはずです。
自分よりも膝が高く上がってるからそれをイメージして上げてみようとか。
そのイメージから脳が感覚の予測をしてくれるのでそこに近づけようとすれば次第に最大値は上がっていきます。
②成功者を見て不可能じゃないことを知っているのでそこまで努力し続けようと思える。俺もできる!!ってなるやん
だから続々と9秒台が出てきたわけです。
適当にやっている奴は絶対に伸びない。
理想の自分のシルエットをイメージして最大値を取りに行く奴が爆伸びしていく。
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