セルフブランディングのこと


20歳のころ、路上でイラストを売っていた。

ちょうどその頃、路上でイラストやアクセサリを販売する若者が流行っていて、何かやりたい、何か自分を残したい、認めて欲しいっていう気持ちが強かった
若い頃の自分は、経験者を誘って自分もイラスト売りを始めた。

それが楽しくて一人で毎日のように路上販売をやるようになった。(実際は現妻との2人だけど)
続けていくうちに自分の描く絵の方向性も見つけて絵柄もまとまっていった。

その中でデザイン学校に通う学生と知り合い、セルフブランディングのことを知った。
デザイン学校生なので、きっちりしたセルフブランディングではなくてロゴや名刺などの作品作りのためのブランディングだからマーケティングとかペルソナ設定とかはほとんどしてないんだけども。

簡単に言うと自分のブランドを立ち上げた体でロゴを作ったり名刺を作ったりする方に注力している感じ。それに触発されて自分もブランドを立ち上げることにした。

何か参考になればと読んでる人もいるかもしれないけど、デザイナー、クリエイター目線でのセルフブランディングなのでマーケティング方面はからきしのためご留意頂きたい。

じゃあまず何をしようかって話なんだけど、
「名刺を作る」に向けて考えるといいらしい。

名刺を作るうえで、以下のものが必要になってくる。
「屋号、名前、フォント、デザイン、SNSのID、連絡先」

じゃあそれらを決めるのにはコンセプトやテーマを考えないといけない。

・コンセプトやテーマを決めるってお話
コンセプト、テーマを決めると作品全体の軸が出来上がる。
逆に言うと作品全体から軸を見つける行程なんだけどね。

作品の軸を見つけるのはこんなことを考えていた。
 ・描くときはどんな気持ちか。
 ・見せるときはどんな反応を求めてるか。
 ・何を見せたいのか。何を見て欲しいのか。

*余談*
軸を見つける行程で気を付けたのが、タッチや画風などの表面的な部分にとらわれない事。
タッチや画風は描いていくうちに変わっていくものなので、そこを軸にしてしまうと身動きが取れなくなることもある。
なので技法じゃなくて目的からしっかりコンセプトやテーマを考えるのが大事。

あと、少し幅を持ったコンセプトやテーマで決めると言いと思う。
「激辛」がコンセプトじゃなくて、「刺激的な味」がコンセプトみたいにね。

*余談終わり*

自分の場合は何者かになりたい、自分はこういう人間なんだぞっていう気持ちが強かったし、そういう気持ちで描いていた。
ワードにすると「存在証明」とか「自己証明」とか「承認欲求」とかかな。

じゃあどういう風になると証明できるのか、承認欲求が満たされるのか。
自分の絵が共感してくれたり心に響いたりしてくれた時に満たされると感じた。さらに言うと、共感してもらうために描くのではなくて、自分が描いたものに対して共感して欲しい。

その頃は今のようなSNSは無かったけど、いいね稼ぎのために流行りの絵を追ったり、ウケのいい絵を描いたのでは承認欲求が満たされることは無いなって思った。

・そんなこんなで屋号とかロゴマークやコンセプトを考えていく。
まずはワードを拾う。自己証明、存在証明、共感、何者かになりたい。
屋号を考えるためにワードを広げて解釈していく。
英語にしたり類語探したり語源を探したりしながら
ロゴマークのモチーフやコンセプトも探す。

自己証明→アイデンティティとかイド。
 →アイデンティティ→「自分はこう!」「あなたはそう!」
 →イド→深層心理、深く考えてないで描くこの絵は深層心理の現れっぽいな
 →深層心理の表出→何かが生えてくる?芽生える?
共感→共鳴→自分が鳴らす音を拾って相手も鳴る→音叉。

表現してるのは特に何か大きな主義主張がある訳でもなく、全部わかってほしい訳でもなくほんの少しだけでも理解して欲しい。

ということをいろいろ考えてできたのがこちら。

屋号は「little_id」
意味は「小さな自己証明・少しだけの存在証明」
テーマは「深層心理の共鳴」
ロゴマークは「歪んだ音叉」「種から伸びる双葉」「深層心理の現れ」の組み合わせ。
コンセプトは「歪んだ音叉が鳴らす歪んだ音に共鳴するのは、私と同じような歪んだ音叉を持つ人」

・じゃあ次はデザインしていくぞってお話
統一したデザインベースを決める事で、ポストカードや名刺、その他グッズの統一感が出てくるし、細部に労力を注げることができるようになる。

1.自分のイラストのタッチを確認する。
ボールペン一発描きの落書き風のかなりラフな落書きタッチ。
色は黒一色。

2.色を決めるよ
作品の色はモノクロなので、デザインも白と黒のみ使うことにする。
作品がだらっとした印象なのでパキッとした白と黒の2色にする。

3・フォントを選ぶよ
タッチがラフなので、ラフなフォントは作品と混ざるので避ける。
癖の強い絵なのでフォントにも少し癖が欲しい。
絵の線が細いので、線の細い明朝体は避けてゴシック体にする。
ロゴ、名前に使う文字に癖のある字が来るといい。
ということを踏まえて「OCRB」の系統に決定。

4.デザインコンセプトが決まるよ
2.3を踏まえて、パキッと白黒にして、イラストに混ざらないこと。見にくい分かりにくい絵なのでデザインはシンプルにする。

あとは表に出さないけれど、コンセプトを詰める中で自覚出来て作品作りの軸になったことが「自由に描く事」
自分のままで音を出して共鳴する人を見つけるっていう気持ちを持ちながら作品を作り続けることができた。

というわけで、20歳のころのセルフブランディングはこんな感じだった。
他の人に説明したり何か活動をするときにしっかり自己認識ができているので、ある種の開き直りに近い自信を持ちながら活動することができた。

グループ展や雑貨屋の展示、公募に受賞もしてある程度の成果はあった。
目的が共感してもらう事って自覚出来ていたから、積極的に外に向かって活動できた。

そしてその後の環境の変化などもあって絵を描くのをやめて、約20年経ってからまた絵を描き始めている。
その時とは心境もタッチも制作環境も、違うのでまた新たにブランディングをしようと考えている。
その経緯もいずれ書いていこうと思う。

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