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スタートアップと区役所の職員が本気で協働したら、子育て世帯に刺さりまくったわけですが
ども、アーバンイノベーション神戸の中の人、Qです。
今日は、神戸市の9区の一つ、長田区での取組についてご紹介します。先に成果を書いてしまうと・・・4か月の実証実験で、イベントの参加者は4割以上UP、利用者の98%が満足、「全国にあったらいいのに」といったかなり前向きな評価をいただきました。
透明・参加・協働のアーバンイノベーション神戸の仕組みが少しでも伝われば。
・・・おさらい・・・
「透明」:行政が自治体全体の資産であるデータを開示し、行政の取組・責任を明らかにする
「参加」:市民・民間事業者が参加し、行政の取組をより効果的かつより質の高いものとする
「協働」:市民・民間事業者と協働するために、行政が積極的に先端の技術を活用する
■課題の透明さ - 「長田区区民まちづくり会議委員」の地道な調査-
長田区の市民・事業者・行政が一体となり「誰もが暮らしやすい未来のあるまち」を実現すべく、地域の課題解決に取り組む団体、「長田区区民まちづくり会議委員」が子育て世帯のニーズを把握しようと平成29年12月~翌5月とアンケート調査を実施したことがすべての始まりでした。
このアンケートでは、子育て世帯516人から回答を得られたのですが、「子育てについてどのような情報がほしいですか」の問いに対し「子どもを連れて行けるイベント情報がほしい」が315件と最も高いニーズがあることが確認されたのです。
この市民の方々のニーズが「透明」にわかることは、課題を正しく設定するうえで大きな意味を持ちました。
■ちなみに、本当の課題はなんだったのか?
ニーズがあることは明確になりましたが、長田区は手をこまねいていたわけではありません。実は、Web(PDF)や紙での配布など積極的に発信してきたのです。
ニーズもあるし、イベントも開催されているし、さらに”発信”もしている。
このことから明らかになったのは、「イベント情報が読み手である子育て世帯にとって最適な方法で発信されていないこと」でした。
■行政の協働 - 正面から取り組もうと決意した長田区役所 -
ところで皆さんは、ご自身が突然自分が病気になったときに、頼れる近隣の方は何人いらっしゃいますか?
なぜ行政がこのようなイベント情報発信を気に掛けるのだろうか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こうしたイベントを通じ、自身が困ったときに頼れる/悩みを相談できる知人ができることは、子育て世帯の方々の育児ストレスを減らす要因となりえるのです。
社会への帰属が、その人の幸福感を増し、「誰もが暮らしやすい未来のあるまち」を実現しうる。そうした思いを持って長田区役所のなかで子育て世帯の支援に取り組んでいるのが、「まちづくり課」。子育て世帯のみなさんのお悩み事を、スタートアップと一緒に解決をしたい、と、アーバンイノベーション神戸で課題「子育てイベント参加アプリの実証開発」を提示していただきました。
下請事業者に丸投げ、ではなく、スタートアップと一緒に「協働」する意思をもって、まちづくり課が手を挙げたこと。これも成功の大きな要因の一つとなりました。
■民間の参加 - 難航する企業選定 & ベストパートナーの発掘 -
課題はWebで公開されましたが、すんなりとベストパートナーが決まった訳ではありません。近隣の方々とSNSを使ったコミュニティづくりを支援する、そんな社会課題に取り組むスタートアップのいくつかに、ご応募いただきました。
正直、次のユニコーンともうわさのあった企業にも手を挙げていただき・・・選定には非常に悩むものでした。いつも、ですが。
この課題では、周囲の人の評価も参考にしつつ、一緒になって、汗をかいて自分の課題を解決しようとする、「参加」をしてくれる。そんな熱意のある、まだ知名度も行政との契約実績もなかった、ためま株式会社を選定しました。
■行政とスタートアップ
みなさんは、”おかたい”行政職員が、まだ無名で実績もない企業と組もうとすることを不思議に思うかもしれません。ですが、純粋に社会課題に取り組むという意味では、社会起業家と行政職員は実は同じくらい、”熱い人たち”なのです。
参考記事) ためま株式会社へのインタビュー ”そんな長田区役所の文章がとても刺さった”
・・・ちょっとネタ晴らし・・・
と、きれいな表現をしましたが、これも事実ですが、もう一つ忘れてはいけない工夫があります。それは、「課題を提示した課が、費用を負担しない。ただし稼働を提供することはコミットする」ことです。
これによって、無難さを求めて行政との契約実績があり/なしではなく、課題を自分事として一緒に解決する/しない、いわば「参加」へのコミット度合で企業を選ぶことができるのです。
■まとめ
課題の「透明さ」、行政の「協働」、民間の「参画」これらが実装されたプロジェクトは非常に上手くいきやすいのです。逆に言えば、それらがかけたプロジェクトは、誰か/みんなが苦労することになります。
次回は苦労プロジェクトについてご紹介しよう。かな。
ではまた。Qでした。
【自己紹介】
中沢 久
new_industry@office.city.kobe.lg.jp
アーバンイノベーション神戸の中の人。
神戸市の「スタートアップのエコシステムを作るプロジェクトマネージャ募集」に刺激を受けて2018年6月末にNTTコミュニケーション株式会社を退職し、神戸市役所へ。アドレナリン中毒。
趣味:ヨガ・ライブ鑑賞・山登り・ゴルフ・アジアのCasinoめぐり
好物:ニューミュンヘン神戸大使館店、「やげん軟骨の唐揚げ」
その他:神戸軟骨部主催