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「重要な兼職」はどこまで記載すべきでしょうか
2022年の株主総会シーズンも終了しましたが、「重要な兼職」ってどこまで記載すべきですが?というご質問をしばしばいただくことがあります。
上場会社の社外取締役のように、役員を何社も兼務されている方がいらっしゃいますし、中小企業であっても、グループ会社や子会社の取締役を兼務されている例は珍しくないと思います。
そこで、「重要な兼職」について、簡単にまとめてみたいと思います。
条文番号は、
法:会社法
規:会社法施行規則 をそれぞれ引用しています。
1. どのような場合に記載が必要になりますか?
重要な兼職の記載は、以下の場面で登場します。
(1) 事業報告(規121条8号)
(2) 公開会社(≒上場会社)の事業報告の附属明細書(規128条2項)
記載を求められるのは、会計参与を除く会社役員(=株式会社の取締役、監査役及び執行役)であり、「直前の定時株主総会の終結の日の翌日以降に在任していた者」です(規121条1号)。
(3) 公開会社(≒上場会社)の取締役の選任の議案の候補者プロフィール(規74条2項2号)
(4) 公開会社(≒上場会社)の監査等委員である取締役の選任の議案の候補者プロフィール(規74条の3第2項2号)
(5) 公開会社(≒上場会社)の監査役の選任の議案の候補者プロフィール(規76条2項2号)
「重要な兼職」の記載を怠った場合、制裁として100万円以下の過料が定められています(法976条7号)。
2. どういう場合が「重要な」兼職に該当しますか?
兼職が「重要」であるかどうかは、
「兼職先の会社が取引上重要な会社であるか否か、当該会社役員が兼職先の会社において重要な職務を担当するか否か等を考慮して判断される」
と説明されています。
これだけですと抽象的で判断が難しいのですが、開示実務・証券代行の専門家から
「兼職先が取引上重要な会社か、兼職先で重要な職務を担当しているか、当社取締役の職務に専念できるか、利益相反を生ずる可能性があるか等を勘案」する
https://www.kabukon.tokyo/activity/data/seminar/seminar_2020_02.pdf
「兼務先の重要性(取引上の重要性など)、兼務先での職務の重要性、兼務先での職務に費やす時間などを考慮して判断することが考えられる。社外役員の場合、弁護士、公認会計士や、大学教授、団体役員などの本業については、重要な兼職として記載すべきものと考えられる。このほか、競業関係にある先および利益相反関係にある先との兼職は、重要な兼職と解される(ただし、監査役については競業や利益相反は通常想定されない。)。」
https://www.kabukon.tokyo/activity/data/seminar/seminar_2018_03.pdf
といった考え方も公表されており、記載の要否を判断するに当たって参考になると思われます。
なお、事業年度の途中で重要性が変わることも考えられますが、(i) 当初は重要であったが、途中で重要な兼職でなくなったもの、(ii) 当初は重要ではなかったが、途中で重要な兼職になったもののいずれについても、記載をする必要があります。
また、1.-(2) 公開会社(≒上場会社)の事業報告の附属明細書の記載が求められる場合、兼職先の事業が同一の部類のものであるとき(≓兼職先と競合するとき)はその旨の付記が必要になることにも留意が必要です(規128条2項)。
取締役の兼任に関して競業避止義務が問題になる事例については様々な議論がありますので、別の記事でご紹介したいと思います。