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焼きそばパンと私

図書館で勉強する時、よく近くのスーパーでパンを買う。

100円そこらのパンと私。今日はその話


焼きそばパンを食べたのはいつぶりだったろうか

6月のある日。私は図書館への道すがら、焼きそばパンを買った。

100円くらいだったと思う。懐かしい思いがした。


「焼きそばパンを最後に食べたのはいつだったろう」と思い出す。

しばらく考えてみたけど、思い出せない。

多分、今年に入って一度は食べていると思うのだけど、どうやら日常に紛れ込んでしまっているらしい。

でも、私にとって焼きそばパンは思い出の食べ物なのだ

学生時代に焼きそばパンはよく食べた

奨学金を複数借りて、一人暮らしをしていた大学生時代。

私の家計管理が甘かったのもあるが、そこまで贅沢できる生活はできなかったように思う。

食事の多くは大学の学食で済ませ、図書館に入り浸るか、アルバイトに勤しむか、カフェでひたすら勉強するかのどれかしかなかった。


当時の私にはやりたいことがあった。

海外に行ってみたい、というささやかなものだったのだが、私にはお金が必要だった。

奨学金とアルバイトのお金。今思えば、お金を貯めるのは容易だったのでは?とさえ思うのだが、当時の私にはそんな価値観はなかった

ある程度節約をしながらゆるく、貯金を進めていく。そんな感じだったと思う。


大学生も終盤に入った4年生の時、私は就活をやめた。

リクルートスーツに身を包んで、本心でもない気持ちを面接でしゃべって内定を取るためにあくせく活動する。それがどうしても自分には合わなかったのだ。


代わりに私は当時付き合いのあったとある大きめの会社で働き始めた。

インターンシップではあったが、まあ実態はアルバイトである。週4, 5日程度働き、大学にも多少通いながら生活をしていた。

その会社には図書館があって、当時の私は朝誰よりも早く行って、仕事の予習をしたり瞑想をしたりして仕事を始める。

お昼は図書館で暇つぶし。夜も7, 8時くらいに帰っていくような生活をしていた。


仕事終わり。最寄り駅について、駅から少し離れた家に帰る途中、私はよく焼きそばパンをコンビニで買って食べていた。

帰りながら、歩きながら食べやすいし、食事の時間を短くできるから好きだった。

他のパンでもいいじゃないか?と思ったりもしたんだが、焼きそばパンがなぜか満足度が高く、私にはピッタリだったのだ。

安いし、満足感もあるし、時短にもなる。なにせ家に帰ったら食事が終わっているのだから、お風呂に入ってゆっくりして寝ればいいだけなのもよかった。

満足度を得るための食べ物が、ストレス発散の吐口に変わる時

私は覚えている。当時、まあまあ稼げていた時も、たまに懐かしみながら焼きそばパンを食べていたことを。

たまにコンビニで見かけると、ふとしたタイミングで食べたくなったりしたもので、食べると満足感が”まだ”あった。


でも、仕事が忙しくなって、ストレスがたまるようになって、私は焼きそばパンにかつての気持ちを抱かなくなっていった。

徐々に、カゴにぶち込まれる食品たちの一部に成り下がっていき、徐々にストレスの吐口になっていく。


焼きそばパンはある意味、エンプティーフードである。栄養価はさほどないのに、糖質や脂質はかなりありほぼカロリーを摂取するためだけの食べ物と言える。

それほどまでに私はストレスが溜まっていたのだろう。

文学やアート、昔好きだった趣味に時間を割けなくなっていくのとあわせて、私の思い出の食べ物はストレス発散の対象に変わっていった。


焼きそばパンを買い、弁当を買い、お酒を飲む。

どう考えたって体に良いわけなんてないのに、疲れ切った私の頭と体にはそれが必要だったんだと思う。

酒に溺れかけた時もあるけれど、私の依存先が食事であったことだけが救いだったといえよう。

体重はかなり増えてしまったが、体が致命的に悪くなることはなかったし、致命的な依存症が残ることもなかったのだから。

やっぱり焼きそばパンは満足度が高い

ストレスを感じなくなって、私の食欲は次第に落ち着いてきた。

結果的に食べる量も減ったし、体重も減った。お金がないのもあるが、ドカ食いさえもなくなった。


かつて楽しく働いていた時に好きだった読書にも、最近は堰を切ったようにのめり込んでいる。

毎日、数冊本を読むし、オーディオブックでも聴くようになった。

知ることで私の漠然とした不安は解消され、安心がもたらされるし、得た知識をいろんなところで活用したくなってくる。


そんなある日、また焼きそばパンを食べた。

麦茶とあんぱんと焼きそばパンのセット。

食べることで何かを解消するためじゃなく、自分で選んで食べている焼きそばパンは以前と同じ味がした。


「焼きそばパンは値段の割に満足感があるからいいよね」

そう私は心の中で思う。

私が失くしていた気持ちをまた一つ取り戻したような気がした。


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