“立つ”大切さ
脊髄損傷の方のような、日常の大半の時間を車椅子に座った姿勢で生活している方にとって「立つ」、「立ち上がる」ことは必要と言えるでしょうか?
正しい立位姿勢をとることによって、下半身に正しく体重をかけることができ、足に対して良い刺激が入り、骨密度の向上や、正しい感覚情報が下半身に伝えることができます。
正しい姿勢を保持するためには、股関節や骨盤の位置もしっかりとしている必要もあります。普段車椅子に座っていることによって、骨盤が傾いてしまったり回旋がしてしまう方が多いのが現状です。そのような悪い姿勢で立位姿勢をしても、筋肉が良い反応をしてくれないこともあるので、必ず正しいポジションで立つことが大切です。
普段座った時間が多い方が立位姿勢を取る最も大きなメリットは、重力がかかった状態ですべての関節を伸ばした姿勢になり、下肢や全身に体重をかけることができることです。
普段車椅子に座っていることで、股関節・膝などは常にまがっており、背骨も丸くなってしまっています。そのため、立位姿勢をとることで股関節や膝を伸ばすとともに、骨盤が起きている状態でその上の体幹を保持することで背骨も伸展させることができます。
そして重力の存在です。人は生活するうえでは重力が常にかかっています。この重力に打ち勝つことが立位をするうえで最も重要とも言えます。
人間の身体には「抗重力筋」という筋肉が存在します。立位をしていると頑張っている筋肉たちです。
写真の色がついているあたりが全て「抗重力筋」があります。非常に多くの部分に配置しています。
体幹を含めた上半身にも多いのも分かると思います。
そのため、立位姿勢を取る際には、上半身のポジションも重要です。横からの姿勢を見ると、耳から肩と骨盤が一直線で結ばれていることが望ましいです。
脊髄損傷の方の中には、自分の身体を手放しでまっすぐ保持することは難しい方もいらっしゃいます。
上半身の姿勢を保つ「抗重力筋」のトレーニングをするために手を離して立位の姿勢をとることもトレーニングで行います。正しい姿勢を作ってそこで維持をする練習です。少し怖いと感じる方もいるかもしれません。しかし、万が一バランスが崩れても後方にいるトレーナーがしっかりサポートするので安心してチャレンジングなトレーニングを行えます。
立ち上がりの動作について
当たり前ですが、「立つ」にはまず「立ち上がる」という動作が必要です。ただ立位の姿勢を保持するよりも、立ち上がる動作は、関節や骨、筋肉などに大きな負荷がかかります。普段そのような動作を行わない脊髄損傷の方に身体にとって立ち上がりの動作は大きなリスクも配慮しなければなりません。
「立ち上がり」を正しい動作で行うために、J-Workoutではオリジナルの補助道具(※1)も使いつつ、トレーナーが適切で適量のサポートを行います。
適切な膝の位置か、身体の動き・流れや体重移動、そして、トレーナーがおしりをサポートして適度な体重の免荷をすることで、膝や股関節に負担がかかりすぎず立ち上がることができます。
上半身のバランスをとることが不安定な方などは、前後に1名ずつサポートが入り下肢と上半身、両方を補助することもあります。想像以上にスムーズに立位姿勢がとれるはずです。
J-Workoutではできるだけ装具を使わずに立位姿勢をとっています。
装具を使うと、トレーナーが把握しきれない/コントロールできない範囲が原因で姿勢が悪くなってしまう可能性があるためです。
装具を使わず、正しい姿勢で自身の正しい筋力を使って立ってみませんか?
★Point:忘れていけないのは、鏡を使って自身の全身の動きや姿勢を確認しながらトレーニングを行うことです。感覚障害がある脊髄損傷の方にとって、自分の身体がどうなっているのかを把握することは回復にとって非常に有効です。自分で感じている感覚と実際とをつなぎ合わせる作業は感覚機能を高めるためにも大切な作業です。
正しく立つ、立ち上がるための影の主役たち紹介 ※1
J-Workoutでは「立つ」トレーニングを行う時、「膝ブロック」と「青ブロック」という道具を使用します。これは安全に正しい姿勢で立つためには非常に重要なアイテムです。
基本的に立位での正しい足幅は腰幅と言われています。腰幅で立つことで、体重がしっかりと足全体に乗せることができます。また、下半身に麻痺があると、下半身をしっかりとコントロールすることが難しいため、足首や膝が内側や外側にズレてしまうことがあります。
そこで活躍するのが「青ブロック」と「膝ブロック」です!この2つを脚の内側に、外側にはトレーナーの足や膝によってサポート行い正しい位置で安全に立位姿勢をとります。
誤ったアライメントで立ち上がりや立位をしてしまうと、膝や股関節などに悪い影響が出てしまう可能性があるので、この2つの道具があるだけで、トレーナーはサポートもしやすく正しいポジションで立ち上がりや立位が可能となります。
さらに足首の返りが非常に強いという方の場合は、「ゲイトベルト」というストラップを巻いて足首のポジションを良く保ちながら立つサポートなども行います。
他にも頸髄損傷など手に麻痺のある方に重宝している「グローブ」もあります。
これは握ることが難しい方がトレーニング中にモノを握る際に使いやすいものです。これがあれば、barなどに掴まりながら立つ際に上半身が安定したり、動きのコントロールが行いやすくなるため頸髄損傷の方もより安心して立位姿勢がとれます。
【注意】
「立つ」「立ち上がる」ことは、非常に大切と書いておりますが、長い期間立位を行っていない方にとって骨折や筋肉・靱帯損傷などの怪我に繋がる恐れがあります。個人で独自にチャレンジすることはおやめください。医師や医療従事者、病院や専門機関、J-Workoutなどに相談することをおススメします。