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UWC 応募時の注意点と気になる卒業後の進路

このnoteは、2023年11月7日の Voicy「【教育の明日をよむ】knockout の10分キャッチアップ」の配信内容をもとに作成したものです

はじめに

今回の内容は、前回の続きとなっています。もし前回記事をご覧になってないようでしたら、先に読んでもらった方がつながりがわかりやすいかもしれません。一応、下記にリンクを置いておきます。


UWC 応募を認める学校・認めない学校

素晴らしい国際教育環境を実現している UWC 。
今回はまず、応募にあたっての注意事項をお伝えしてます。

最初のステップとして必要なのが、学校長による受験の承諾です。承諾書を書いてもらう必要があります。

「2024 年度UWC奨学生募集要項」より


実はこの最初のステップ、一部でかなり問題になっているところなんです。というのも、UWC に応募する(=承諾書を出す)段階で、生徒に退学を求める学校がどうもあるらしいのです。UWC 日本協会からも以下のような FAQ が出されています。

「応募者と家族のための F.A.Q. (2023年8月版)」より


ひどい話ですね。

応募して、合格して、晴れて UWC に進学できるとなったら、そちらの学校(カレッジ)に転校することになるわけですから退学でも致し方ないかなとは思うのですが、4~6倍の倍率がある選考に応募する段階で、承諾書を出すだけで、退学を強いられる。これはおかしな話だと思います。

ともあれ、具体的な校名はお伝えできませんが、そうした学校がいくつかあるという話は聞いています(とくに日本国内のカレッジである UWC ISAK Japan は私立の学校ですので、在籍校が私立校だった場合、承諾書=推薦状を出しづらいという“大人の事情”はなんとなく察するところです)

逆にすごく寛容な学校もあります。

良い対応の学校は名前を出しても問題ないと思うので出しちゃいますが、例えば、茨城県にある公立中高一貫校の並木中等教育学校。こちらの学校は、2022年2023年と2年連続で3人の合格者を出してるのですが、2人合格者を出した2022年当時の茨城新聞には「2年後にドイツ校、オランダ校で卒業資格を得た段階で、並木中教校は退学となる」との一文がありました(※当該記事のWEB表示期間は終了)

前回の記事でもお伝えしましたように、UWC では国際標準カリキュラムである国際バカロレアの高校課程(IBDP)で学びます。IBDP では卒業時に試験を受け、その結果によってカリキュラム修了のお墨付きを得られるシステムになっています。

これは、あまりにも試験の出来が悪かった場合、IBDP の修了資格がもらえないことを意味します。下手をすると最終学歴が中学卒業になってしまうということです。日本からの派遣生はこれまでIB取得割合が9割以上。つまり、100%ではありません。

「応募者と家族のための F.A.Q. (2023年8月版)」より


最悪の事態を避けるためでしょうか。日本の学校にも籍を残しておけるようにしてくれるのは生徒思いな学校だと感じます。


真に必要な英語力は

さらにもう1つ、応募時の注意があります。

UWC 応募時に必要な英語力は英検2級程度だと前回の記事でもお伝えしました。たしかに応募にはそれで問題ないのですが、英検2級程度だと進学後にちょっとキツいだろうなというのは、正直、思います。

国際バカロレア(IBDP)で大学受験をする場合、それも海外の大学受験をする場合、UWC に入学して1年後には卒業時予測スコア(Predicted Score)を学校の先生から出してもらい、そのスコアを元に出願をすることになります。

つまり、UWC に進学して1年後には大学出願時のための成績が決まってしまうということになります。わずか1年で成果を出さなければならないのです。

学習言語である英語ができないと、良い成績を取るのは当然難しくなります。少なくとも入学までには相当頑張らないと、応募時英検2級程度ではキツいだろうと考える理由はここにあります。


UWC 近年の卒業生進学実績

ここからは UWC を卒業した後の出口がどうなってるのかを見ていきたいと思います。

UWC のサイトにある紹介資料「ユナイテッド・ワールド・カレッジのご案内」に2011年~2021年の11年間の卒業生の主な進学先が掲載されています。

「ユナイテッド・ワールド・カレッジのご案内」より


海外の大学に進学した生徒が123名いますね。そのうちの6割超がアメリカの大学です。この理由についてはまた後ほど言及します。

国内の大学に進学したのは35名。うち21名が慶応大京大です。この2校で6割という状況です。

ただし、国内大学への進学傾向については今後変わってくるだろうと予想しています。慶応大へ進学した卒業生の方々は帰国生入試で受験をされたと思うのですが、慶応大は2025年度以降の入試変更を予定しておりまして、医学部以外のすべての学部で募集を停止することを公表しているからです。

余談ですが、慶応大に限らず、現在いろいろな国内大学が帰国生入試に変更を加えています。

例えば、早稲田大は、帰国生入試を取りやめ、英語学位取得プログラムへとシフトする動きを見せています。他にも、国際バカロレア入試を設け、IB生はその枠での受験を推奨する大学もあります。動向を注視していただければと思います。


独自の奨学金システム「Davis UWC Scholars」

先述の海外大学進学者123名のうち6割超がアメリカに進学している件に話を戻します。

UWC では大学進学するにあたっていくつか独自の奨学金制度があるようです。そのうちの1つが、アメリカの大学に進学するときに支援が得られる Davis UWC Scholars です。

こちらの奨学金、かなりの規模となっておりまして、年次報告書を確認したところ、毎年1000人ぐらいの大学進学者が支援を得ています。

「Uniting the World: The 2023 Report of the Davis UWC Scholars Program」より

そもそも UWC は各学年の生徒数が数千人のはずですので、そのうち約1000人というのは相当な規模になります。

支援金額に関して詳細は公開されていないので不明ですが、奨学生1人あたりいくらというかたちの奨学金ではなさそうです。

Davis UWC Scholars から実際に支援を得ている学生さんが解説をしている動画が YouTube で ありました。一例としてご覧ください。


こちらの UC Berkeley に進学された Motohashi さんがおっしゃるには、世界大学ランキングで100位以内のアメリカの大学に進学すると自動的にスカラシップの権利が得られるようです。

UC Berkeley の授業料年間約450万円のうち、約400万円はこの奨学金で賄えているとお話をされていますね。別途、寮費や生活費がかかるとはいえ、授業料をほぼカバーできる額の奨学金が得られるのは大きいです。

この奨学金の存在が、アメリカ進学の多い理由ではないかと推察しています。


イギリス名門大学へのフルスカラシップ

そしてもう1つ、注目したい奨学金システムがあります。

それが UCL(University College London) というイギリスの有名大との提携による奨学金制度です。全員が対象というわけではないですが、条件を満たせば授業料と寮費が全額減免となるスカラシップがあります。


それだけではなく、生活費も毎年7000ポンド支給され、他にもビザ取得費用や1回分の往復航空券代も支援してもらえるようです。まさにフルパッケージのスカラシップですね。

イギリスはアメリカと違い、大学が用意する海外留学生向けの奨学金は無いに等しいので、こうしたかたちで協定が組まれているのは UWC ならではのメリットだと思います。


ちょっと気になる受験校数制限

最後に、ひとつ気になっていることがあります。

先日、X(Twitter)でとある投稿が流れてきました。発言主は UWC イギリス校の現役生。その投稿によると、彼女のカレッジでは大学出願校数に制限があるとのことでした。

昨今の国を超えた大学受験では、アメリカを中心に、合格率が異常に下がっており、多くの大学に出願をしなければならない状況にあります。もし本当に出願校数に制限があるとなると、それだけチャンスが減ってしまうことになります。

これがイギリス校だけの話なのか、それとも UWC 全体の話なのかはわかりません。ただ、そうした独自の制限を設けている可能性も頭の片隅に置いておくといいのかなと感じました。


おわりに

2回に渡って UWC(United World Colleges)についてまとめてきました。

正直、インフレと円安によってかなり自己負担金額が高くなっていると感じます。以前と比べると、旨味やメリットに乏しくなってきてるのかな?という気もしないでもありません。とはいえ、教育環境として素晴らしいのは間違いのないことです。

チャンスを手に入れたいと願ってる方は、ぜひ挑戦してもらえればと思います。

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