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「平日だけの寮生活」という学びのスタイル

このnoteは、2023年10月26日の Voicy「【教育の明日をよむ】knockout の10分キャッチアップ」の配信内容をもとに作成したものです

今回は、「平日だけの寮生活」っていいなというお話です。

このテーマにしようと思ったきっかけは、先週末、中学受験塾スタジオキャンパスの代表をされている矢野先生が、X(旧 twitter)にアップされていた素敵な写真でした。

不二聖心女子学院という静岡県裾野市にある学校の写真だったのですが、とっても雄大な自然に囲まれた場所で学ぶ女子学生たちの姿がそこに映っていたんです。

投稿をよく見てみると、「『週末帰宅型』の寄宿舎を備える」と書かれてあり、あ、それってすごくいいなと思ったんですね。


ボーディングスクールの種類

イギリスに留学しているわが家の長男は、2年間ほど、現地のいわゆる「ボーディングスクール」と呼ばれる学校で過ごしました。

ボーディングスクールは、イギリスやアメリカでは比較的よくある学校の形態です。学ぶ場所としての学校があるだけではなく、寮が併設されており、全寮制であれば、そこでみんなと一緒に生活をします。ボーディングの生徒と通学(デイスクール)の生徒が一緒に学ぶスタイルをとっている学校もあります。

ボーディング生のスタイルは、以下の3つに大別されます。

  • フルボーディング:学期中はずっと寮で暮らす

  • ウィークリーボーディング:週末帰宅型。平日は寮で暮らし、週末になると親元に帰る

  • フレキシブルボーディング:名前の通り、寮生活と通学を柔軟に使い分ける


ともに暮らし、ともに学ぶ

長男は、当たり前ですが、「フルボーディング」でした。

イギリスの学校は三学期制をとっており、学期中はずっと寮に住んでいました。そして、長期休みになると、ホストファミリーのところにお邪魔し、一緒に暮らしながら現地の家庭的な生活文化を学ばせてもらっていました。

ホストファミリーのお世話になるのは必須ではなく、フルボーディングであっても、長期休み中に自宅に帰って家族と過ごす生徒もいます。

このボーディングスクール、多感な十代の時期に過ごす生活スタイルとしてメリットが多いなと個人的には思っています。

まず1つは、寮生活を通じて、いろんな価値観、いろんな背景を持った生徒たちとふれあい、そこでたくさん気づきを得ることができる点です。

「学寮(カレッジ)生活を中心としたリベラル・アーツ教育」という理念のもと、下北沢で居住型教育施設を運営しているHLABさんも同じような考え方をされています。

学びというのは、学校で勉学を学ぶだけではなく、ともに暮らす人と協働しながら、 いろんな刺激を与え合う。そういったことも含めた全体が学びであるという考え方です。まさにそういった効果、 影響、機能が寮にはああります。

学校の中だけで見えるその人の側面は、極めて限定的です。一緒に暮らすことによってはじめて見えてくる違いはあります。文化の違い、考え方の違い、価値観の違い。そういったものをお互いに交換し合うことで促進される異文化理解は絶対にあると思ってます。

長男に話を戻すと、彼の学校は、いろんな国・地域から生徒が来る学校でした。結果的には、同時期に同じ寮に入った6人の生徒が自然と打ち解け合い、そのグループの中で濃い関係を築き、日々やり取りをしていたようです。そんな小さなグループでも、やはり違いに気づいて、そこから学ぶことは多かったと本人も言ってます。

矢野先生が紹介されていた不二聖心女子学院は、国内の寄宿舎付き学校となりますので、基本的には日本人だけの環境なのかなと想像しているのですが、 同じ日本人同士であっても、住むところによって、あるいは、家庭ごとに、いろんな考え方があることでしょう。それをぶつけ合い、交換しあうことが成長の良い糧となるのではないかと思います。


親離れ・子離れの契機

もう1点は、いわゆる親離れ・子離れです。寮に入れば自然と子どもから手や目を離す機会になります。それにより自立も促進されます。

自分で子育てをしていても思うのですが、やはり子どもと一緒に暮らしていると、彼らがやるべきことを巻き取ってしまっていると感じる時が多々あります。炊事や洗濯といった身の回りのことは最たるものかもしれません。そして、それ以上に、外部とのコミュニケーションの窓口を親が担ってしまうことや、 意思決定をする際に、相談相手のような立場で助言してしまうことによって意図せず影響を与えてしまうことのほうが大きいかもしれません。

本来であれば、子どもが自分で決めて、自分で実行し、その責任を自分で取る。この一連のプロセスを経て、ふりかえりをすることが大きな学びをもたらすと思うのですが、相談されることによって、あるいは、こちらから目をかけることによって、それとなく良い選択肢を提示してしまう。結果的にそれが、本人の自己決定・意志決定に繋がらない面はあると思うんですね。

それは短期的に見たら成功をもたらし、失敗をしない道なのかもしれません。ただ、自分なりに試行錯誤をしながら、こういうことをやったらこういう結果になるんだという引き出しを増やしていかないことには、それがなぜベストなやり方なのかという知見が本人の中にたまりません。

寮生活することによって、強制的に、子ども本人が意志決定をやらなければならない環境に置かれます。このことの意味は大きいと思うんです。

以上のような2つのポイント、「共同生活をすることによる異文化理解」と、「親離れ・子離れを通した自己決定環境の実現」。この2点が、ボーディング生活・寮生活の大きなメリットだと感じています。


落ち着きと刺激の両立

一方で、長男のボーディング生活のことを振り返ると、ここはもう少しなんとかならなかったのかな…?と思うところもあります。

長男がいた学校も郊外型で、冒頭に例に挙げた不二聖心女子学院の環境に負けず劣らずの、広大な自然に囲まれた環境にありました。フルボーディングで生活していると、最初のうちこそ、いろんな刺激を受けていたようなのですが、生活に慣れてくるにつれ、その環境で得られる刺激では満足しなくなっているように見受けられました。10代の後半といえば、冒険に憧れる時期。都会的な環境でいろんなことを体験してみたい、文化的な刺激を受けたいと願う気持ちは強かったはずです。

そういう機会がもう少しあったら良かったかなとは思います。

まあそうは言っても、彼はけっこう行動派なので、何かと理由を付けては週末に電車で1時間半ぐらいかけてロンドンに足を運び、美術館や博物館を
めぐったり、お店を見たりしてたみたいではありますが(笑)

日常の落ち着いた暮らしと、 週末の刺激のある暮らし。この2つの暮らしが無理なく両立できたら最高の環境でしょうし、それができるひとつのかたちがウィークリーボーディング、週末帰宅型の寄宿舎なんだろうなと想像します。それが今回、矢野先生の紹介されたツイート(ポスト)が胸に響いた理由です。


ボーディングスクールのリアルライフは?

ボーディングスクールでの生活については、以下の対談記事のなかにさらに詳しく書きました。親の目から見たリアルな実態が語られています。ぜひこちらもご覧ください。


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