出生数減少が止まらない
今回は、11月7日に発表されました人口動態統計を見ていきます。
世の中には、いろんな未来予測があります。占いのようなものまで含めたら、それこそ星の数ほどありますね。そのなかでも人口動態はかなり確度高く未来を映し出す数字であると考えられています。
生まれてきた赤ちゃんの数が決まってしまえば、 将来的にそこから人口が大きく上振れするということは考えづらいです。ありうるとしたら、移民政策が大きく変わって、外国人がたくさん日本に住むようになる等の例外的なケースになるでしょうか。
同時に、ここから一気に下振れするということも考えづらいです。戦争や大災害、それからコロナがもっと酷くなったような病気が流行して、人がたくさん亡くなってしまうとか、そういったことが起きない限りは、ここから大きく変わることはありません。そういう意味では、人口動態は日本の未来を想像することができる重要な数字となっています。
今回、参考とする人口動態統計は、2023年の上半期、つまり、2023年の1月から6月末までの数字となります。一応、「概数」ということで、確定の数字ではないのですが、例年、ここから確定値まではほぼほぼ乖離がないので、これを確定に近い数字として受け止めるのは間違いではないでしょう。
昨年と比べたときの出生数が示す意味
今年の上半期の出生数(概数)は、36万7232人ということになりました。
この数字がどういう意味を持つのかというと、前年同期比で ▲4.1% となっているようです。
実は、8月に人口動態統計の速報値が出ていまして、その段階では2023上半期は前年同期比で ▲3.6% となっていたのですが、精査の結果、▲4.1% になったということで、やや悪化したということになります。
これには理由があって、速報値の段階では外国人のお子さんの出生数も含まれているんですね。概数にするにあたって、外国人出生数を抜くと日本人の出生数としてはこの数字になる、ということです。
では、上半期36万7232人という出生数が、年間にするとどうなるかというと、例年の傾向から算出すると、大体、70万人台前半に着地するんじゃないかなと考えられています。2023年通年の出生数で73~74万人ぐらいになるんじゃないですかね。
昨年2022年通年の出生数(速報値)は79万9728人でしたので、そこからおよそ5~6万人減。また一層と少子化が進んでいるのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
出生数の推移からわかること
ここで過去の出生数の推移を見ていきます。
子どもの数が年間100万人台だった時期から年間90万人台になるまでにどれぐらいかかったかというと、8年間かけてその変化が起きました。同じように、90万人台から80万人台が3年、80万人台から70万人台も3年かけて起きました。
出生数がはじめて70万人台になったのは昨年のことでした。そして、今年が70万人台前半にまで落ち込む予測になっているわけです。来年、さらに減少したとすると、70万人台を維持できるのは2年間になるんじゃないかなと思われます。
だんだんと少子化のペースが加速していってますね。少子化そのものも大変な社会問題なのですが、そのペースが速くなっているのがまた問題です。産業構造など、様々なことを変革していくスピードを加速させていくのはとても難しいことだからです。ハードランディングと言いましょうか、痛みを伴った改革を強いられる可能性が高いことがここからわかります。
もう1つ押さえておきたいのは、2023年の出生数は、コロナ禍が収束して行動制限がなくなった後の数字になるので、やや持ち直すんじゃないかと注目されていた点です。
にもかかわらず、昨年と比べても落ち込んでしまっていますので、ややネガティブな状況なのかな、という受け止めています。
近未来の出生数を左右する婚姻数
もう1つ、重要な数字があります。それが婚姻数です。
こちらの落ち込みが、出生数よりもさらにひどくて、2023年上半期は前年同期比で ▲7.6% になってるんです。かなりインパクトのある数字です。
独身研究家の荒川和久さんのYahoo!ニュース記事によると、恋愛結婚する場合、恋愛を始めてから結婚するまでには平均値で4.6年、中央値では3年ほどかかるそうです。
コロナで行動制限がはじまった時期の3年後が2024年からになりますので、 そこからの数年間は婚姻数はがくんと減るだろうと予想できます。
また、婚姻数と出生数には強い関係がありますので、結婚の数が減れば減るほど出生数も減る可能性が高いです。
今年、前年同期比で婚姻数が ▲7.6% になり、さらに、来年、再来年、その次の年くらいまでは回復の見込みが低いとなると、出生数への負のインパクトも相当なものです。
さらにこの婚姻数の統計、実は続きがあって、2023年7月の数字も速報値ながら出ているんですね。それを見ると、7月単月でなんと昨年比 ▲25.5%。
すごくないですか。7月の結婚の数が昨年と比べて3/4になっちゃってます。
まあ、これは7月単月なので、年間で均すと、それがどれぐらいの凹みになるのかというのはもちろんあるのですが、ここから急回復して、8月9月にめちゃくちゃ結婚するということは考えづらい。
ニュース等ではまだあまり報じられていませんが、この傾向が続くなら相当なダメージがあるんじゃないかなと恐れています。
出生数や婚姻数に注目する理由
教育分野をウォッチしている自分が、なぜここまで執拗に出生数や婚姻数にこだわるのか。それは数年後の教育環境にダイレクトに影響するからです。
大学の数が多すぎて淘汰が始まってるという話もありますけども、今年の出生数が大学に影響を及ぼすのは18年後なわけです。その3年前には高校に、そのまた3年前には中学に影響が出ます。さらにその2、3年前には中学受験に影響が出るかもしれませんね。
学校や大学に限らず、もっと身近なところでいくと、子どもが生まれてから何か習い事させたいな、ピアノとかどうだろう? 他のお稽古は?と考えた時に、今ギリギリ採算が取れてるような教室は、数年後には厳しくなってる可能性が高いです。子どもも大きくなってきたから塾でも通わせようかな?と思っていたのに、子どもの数が減り、商売が成り立たなくなって、近所にあった塾がなくなってしまうというようなことも起こりえます。
冒頭申し上げたように、人口動態(出生数)は確度の高い未来、すでに起こった未来だと受け止め、注視していく必要があるんじゃないかと思っています。
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