日常に潜む非日常①「フリーキッチン」
皆さん、映画はお好きでしょうか。私は好きです。
いいですよね、映画。
今は少しお高めなランチ以下で登場人物の抱えきれないほどの幸福や不幸に転がり落ちていく様、誇り高いプライド、不器用な優しさなどを見れるんですから。
ランチの味は3日も経てば忘れますが、映画の味は3日どころか1年以上も忘れられなくなります。
それにね、映画に出てくる料理も美味しいんですよ。ただ手元にはないから食べられないだけなんです。
映画「フリーキッチン」(2015)をアマプラで視聴。
原作は「生活」「うちの妻ってどうでしょう?」「ぼくの小規模な失敗」で有名な福満しげゆき氏のデビュー作「娘味」を原作としたホラー風ブラックコメディ映画です。
元々この人こう言う底の見えない、闇い作風が好みだったのに最近は奥さんや子供をネタに好感度上げてるのが見え見えなので興味が無くなりました(脱線)。
フライヤー観ました?もう不穏な匂いがプンプンしてるでしょ?こういう不穏な映画大好きなんです。
金を払って人の不幸を見る、これ最高の娯楽ですよ(趣味が悪い言い方ですけど……)
主人公・ミツオの食卓には、毎晩肉料理が上る。
卵料理や魚料理は絶対に上がらない。
ある日はミートローフ、ある日はタジン鍋、ある日はステーキ、またある日は唐揚げ……
(30代後半の男の肉。あと20代の女性もいる。一人は結構肥満か…)
プロローグとモノローグに流れる古びた遊園地で流れてそうな不協和音な曲が最高に気味悪く、母親が獲物となる人物に狙いを定めて解体するシーンなんかは特に良かった。弛緩剤打ち込まれた時点で緊張感は高かったけど、その後はああ、『作業』してるなって感じで見れました。
ミツオとその母親が人肉に手を付けるきっかけがモラハラ夫と料理を教えに来た夫の不倫相手だったのですが、モラハラ夫のシーンで幼いミツオが母親を庇ったところで、幼少期の自分を思い出しました。
料理下手では無かったけど少々ズボラだった母親を注意した父親に向かって「私、お腹すいてないよ」と庇った記憶が蘇りまして…。まあ不倫もしない仕事一本な父親だったからまだミツオの母親よりかは救われてたのでしょうが。
物語は至って緩くシンプルに、終盤でも静かなホラー(スプラッタ)が待っています。
恐らく低予算で作られたのかな、俳優さんもあまり名前も聞かないし、演技もちょっとイマイチですけど
埋もれてしまうには余りに勿体無い作品だと思いました。
カニバリズムと日常がテーマなのでさぞグロいのかと思いきや意外にそうでもなく(モラハラ夫が死んでるシーンで腸出してるくらい?いちごミルクみたいな見た目で可愛いなと思った)まあ低予算ではなかなかやるなと思いました。
ラスト間際、息子依存で子離れ出来ない母親からの親離れを果たすミツオ。生き残ったヒロインのカナちゃんから出された誕生日ケーキのロウソクを吹き消して……
(それはまさに、お袋の味でした)
まあ誰にでもお袋の味はあるし!
スタンド使い同士が引かれ合うように、同類同士も惹かれ合うんですね。
作中に出てくる肉料理で1番美味しそうだったのは、やはり序盤で出てくるミートローフかな。
途中でミツオが肉食に嫌悪感を抱き始めたために料理の画が少なかったのがちょっと不満。それ以外は満足です
Amazonで娘味(原作)買うか迷ってます 読んでからもう一度観たい。
漫画でも映画でも現実でも、美味しそうな肉を見るとお腹が空いてきますね。それが何の肉かはさておき。
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