28歳と千と千尋
2001年『千と千尋の神隠し』公開
10歳の千尋と出会ったのは、10歳の私でした。
今日の私は、28歳。
あのとき感じた気持ち。恐れ、勇気、憧れ、感動。
10歳の感情をすべて思い出すことはできなくて、寂しくなる。
「一度あったことは忘れないものさ。思い出せないだけで。」
ハクのことを思い出そうとする千尋に、銭婆がかけた言葉です。
千尋が私と同じ年月を重ねて28歳に成長していたとしたら、もしかしたら彼女もすべては覚えてはいないかもしれない。
あの紫の髪ゴムをみて、千尋は何を思い出すのでしょう。
嬉しかったことですら忘れてしまうこともあるけれど、きっと、大丈夫。
映画と思い出、音楽と思い出、本と思い出、絵と思い出。
思い出は単体で存在してはいなくて、幾重にも積み重なっていて、今日から明日へ繋がっていく。
10歳の思い出も、28歳の思い出も、生きている限り持っていけるのかもしれない。そんな考えは、よくばりでしょうか。