Uターンが正解なのかどうか
東京では深呼吸ができない。
毎日0時過ぎに足早に通り過ぎる新宿は呼吸困難で、人が多すぎる。
今の仕事に転職して初めてゆっくり実家に帰った。
冬がまだ始まったばかり、まだ肩身の狭そうな雪が積もってた。雪を見て初めて、あぁ冬だな、と思えるのは雪国に生まれたからなんだろうな。
クリスマスプレゼントと称して母とライブに行って、楽しい1日目。
翌日は午前中いっぱい寝通して、作ってもらったごはんを食べて、ピアノを弾いて、ゆるりと終わるはずだった。
死。
大叔父が亡くなったそうだ。まだ9時前。
末期ガンだったけど、年内は大丈夫だろうと母は言っていた。
祖母の弟にあたる人で、よく盆には顔をみせに来てくれていたから身近な親戚だった。祖母によく似た優しい目をして、いつも笑顔で現れる。
最後に会ったのはいつだったろうか。
眠るような最後だったそうだ。
死後もまるで眠っているようで、いまにも起きて元気に話だしそうだと思った。もう目を開けることはないのだけれど。
92歳。孫が9人。
幸せな数字なのだろうか。思い出す限りの笑顔からは、きっとそうなんだと信じたい。
実家を出てから初めて帰ってきたクリスマス。
苺ショートは紅白だから、チョコレートケーキを食べた。いつものケーキ屋で、甘すぎないチョコレート。
何も気にせずに苺ショートが食べたかった。
最後の数ヶ月は点滴で過ごしたという大叔父、何が食べたかったのだろう。
家族のピンチにかけつけられるかどうか、
故郷に帰ることが本当に私の人生にとって正解なのかどうか、
まだよくわからない。