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世界を変えたAirbnb、そのカギとなった指標
社会にインパクトを与えるビジネスとはどういうものでしょうか?また、そのインパクト創出の進捗を管理するための指標とはどのようなものでしょうか?
わかりやすい例として私がよくご紹介するのが、民泊サービスとして有名なAirbnbです。空き部屋を貸したい人と、部屋を借りたい旅行者とを仲介するWebサービスを提供しています。
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社会を変えるインパクトの創出
Airbnbは「すべての人が、どこであっても居場所があると感じられる世界」をビジョンとして掲げ、「旅のすべてについての、人と人が直接つながる場の創造」をミッションとしています。
ビジネスを通じて、同社が現れる前には存在しなかったような社会・人々の生活のありかたの実現を目指し、特に旅行のありかたに変化を与えています。
また、主軸ビジネスとあわせて、米国の国立公園を運営する財団など、世界中の非営利団体に知見を共有し、地域の活性化に貢献する社会的な取り組みなども積極的に行っています。
社会変化に向けた道筋と、変化を測定するインパクト指標
さて、あなたがAirbnbの創業者だったとして想像してみてください。
ビジョン「すべての人が、どこであっても居場所があると感じられる世界」を実現したいとイメージし、Webサービスを使って見知らぬ人同士が空き部屋を貸し借りする「文化」を普及させることで、その世界が実現できると確信していたとします。
その時、その文化が普及していく進捗を、どのような指標を使えば確認できるでしょうか?
自社が提供するサービスでどれだけ儲かったかを示す財務情報を指標としてしまうと、ビジネスの意思決定が常に「儲かるか、儲からないか」という軸で判断されます。文化の普及に真っ直ぐ向き合うことはできません。
ビジョンの達成に向けた進捗を管理するための指標を考える際には、まずその達成に向けた道筋を描くマップが必要です。そのうえで、道のりの進捗を管理するための指標を考えるのです。
Airbnbの場合、上述のビジョン達成に向けた道筋を以下の図のような形で描いているといえます。そして、その道のりの進捗を管理するための指標として、①宿泊・体験の予約数(Nights and Experiences Booked)と、②予約総額(Gross Booking Value)の2つを設定しています。これらの指標は、どれだけ儲かったかを示す収益・財務の観点からではなく、目指すビジョン達成という観点から、管理できるシンプルな形で設定されていることが重要です。
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投資家の視点とインパクト指標
Airbnbは、2015年から2017年にかけて20億ドルを超える資金調達を行っています。その間、上述のインパクト指標は下図のように順調な伸びを見せています。
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財務指標を見ると、2015年は約1.4億ドル、2016年は約1.5億ドル、2017年は約0.7億ドルの赤字を出しています。しかし、上述のとおり資金調達できていたことを考えると、投資家は足元の財務状況以上に、インパクト指標によってAirbnbへの期待を感じ、ビジョン達成の進捗度合いを見極めていたと考えられます。
まとめ
社会を変えるインパクトを生みだす企業というと特別な存在と思われがちですが、社会の変化を目指し、実現している企業は多く存在します。今回ご紹介したAirbnbの例のように、インパクトを実現する過程で進捗を管理する指標が財務情報ではない、ユニークなものである事例もあります。そうした「カギとなる指標」をいかに見つけられるかが、企業が社会にインパクトを与える際にとても重要だということを改めて感じました。