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『中庭のオレンジ』は優しい気持ちになる本

最近の本選びは「短編集」を探しがち
日本のものも外国のものも、いろんなお話をちょこちょこ読むのが好き

そんな中出会ったのが吉田篤弘さんの『中庭のオレンジ』
2022年12月25日、昨年のクリスマスに発売した21編が入った短編集

夜更けに読みたくなるような10ページ前後の話たち
どれもこれも起承転結が全て入っているものではなくて起承だけのものや結だけのもの、いろんなお話の断片を集めたような不思議なものでした

その中でもタイトルになっている『中庭のオレンジ』と『オレンジの実る中庭』、『オレンジ・スピリッツの作り方』は3つでひとつの物語になっていて、他の作品とはちょっと違った構成

読み始めの『中庭のオレンジ』で心を掴まれた
戦争で本が燃えてしまう前に、中庭の地面に急いで埋めた
埋める時に一緒にオレンジの種を入れたところ、戦争が終わった後に大きなオレンジの木が一本あった

そのオレンジの実には、土の中の物語が詰まっている
物語の果実で作るお酒をグラスに注いで過ごす夜更け


その他の短編では『カウント・シープ#5391』も好き
ひつじが1匹…ひつじが2匹…でお馴染みの
眠れない夜に数えられるひつじたちの話

5391番目のひつじが呼ばれるには6時間数え続ける必要があるようで
そんなの出番あるわけないじゃん、朝来ちゃうじゃんと
仲間同士で話しているとか

幸せってなんだろうね?というひつじの問いと
そのオチに、私も普段の生活を顧みて幸せってなんだろうねと問う


あと『合奏』もお気に入り
歳をとっても新しく何かを始めて、仲間を見つける
私もおばあちゃんになってから楽器を始めてみたいなと思っていたから嬉しい話

顔を知らない手紙の主と、同じ月の下で演奏をするなんて素敵な関係



どのお話も誰かとの関係性の中で大切なものを見つける主人公がいて
周りには見守る素敵な人がいる

私も誰かにそうしてあげたいし、反対に周りの人に見守られているおかげで
毎日生きていけているんだ


オレンジのお酒を買ってきて、夜にのんびり飲もうかな
グラスにちょっとだけ入れてちびちびと

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