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【インタビュー】”共感できることの大切さ”

今回はインタビュー企画。様々な分野で活躍する人々がどのようにジェンダーやフェミニズムに興味を持ったのかという個人的なストーリーをインタビュー形式でお届けしたいと思います。

インタビュアー:山名 奏子
インタビュー対象者:K.T.

1. 簡単な自己紹介をお願いします。

今年で43歳になります。社会人20年目ぐらいです。愛知県で生まれて、大学から東京に住んでいます。会社は今、3社目です。2社目に長く勤務していました。3000名くらいの会社で、最後は人事部長でした。大勢の方の雇用にかかわる、責任あるポジションでした。今は、サキュラーエコノミーのスタートアップ企業のサポートしたり、前の会社の仕事を個人で受けたり、自分と距離が近い働き方ができるようキャリアのシフトをしています。

――「自分と距離が近い働き方」とはどういうことですか?

目の前にいる人に具体的にサービスを提供して、貢献するというイメージです。人事部長のときは、会社の仕組みのために仕事をしているように感じていました。

2. ずっと日本に暮らしていて、どこの国に一番住んでみたいですか?またその理由はなんですか?

ハワイかな!暖かいから。
あとは、今回のコロナのことを見ているとNZはとても魅力的。ラグビーが好きなので、ラグビーを見られるっていうのもあります。

――NZのどういうところが具体的に住みやすそうですか?

コロナ禍の首相ジャッジが大きいです。民主的なものが機能しているイメージがあります。

こないだ都知事選がありましたが、これまで自分が入れた候補者に決まったことがないんですね。どこかで、決まらないよなと思いながら投票しているんです。自分の一票と政治は繋がってるはずなんだけど、断絶しているように思えます。翻って、NZではどうなのかしら(そうではないのでは)と勝手に妄想しています。

3. ジェンダー問題に興味を持ったのはいつですか?またなぜ興味を持ちましたか?

影響を受けたのは2つあると思います。「母親」と「バブルの頃の女性像」(笑)です。

まず、母は私に対して「自立してほしい」「働いてほしい」と期待をしてくれました。ふたりで女性の生き方についてよく話しました。中学生のころにフリーダ・カーロの本を読んで話したことを覚えています。

そして、「バブルの頃の女性像」とは。私は今43歳なのですが、小さいころ「バブル」を見ているんですよね。女性像でいえば、アンノン族とか、自由を謳歌する「翔(と)んでる女」とか。パルコや資生堂のCMもとても好きで、女性がどんどん自由になり、自律的になる、それがかっこいいという情報や雰囲気を浴びていました。なので、小さい頃は、これから大人になると、何でも好きなことができるって全然疑っていなくて。その辺が原体験だって思います。
(注・雑誌やCMはリアルタイムで知ったのではないかもしれません)

話がずれるのですが、山田五郎とみうらじゅんが70年代についてYoutubeで対談する番組を見ていたら、「あのころは男女平等になると思ってたよね(だけど、ならなかった)」って言ってました。本当にそうだなと思います。今の方が保守的です。

4. 日本でずっと暮らしている中で、ジェンダーの面で一番驚いたこと、衝撃を受けたこと、不快に感じることは何ですか?

愛知県での高校時代です。男の子のほうが元気で、男の子たちにグループがあり、男の子が女の子を評価する構造がありました。だれが一番かわいいかとか、そんな類の話です。思春期に、男から選ばれるか選ばれないかにさらされるのって、しんどいですよね。あと、男の子たちが「俺ら」「俺ら」って言うんですよね。「俺ら」って誰だよって思ってました。これから社会の中に出ていったときに、「俺ら」がどこかしこいるんだなって察知しました。

高校はもともと男子校だったから、女子トイレが少なくて、それも気持ちよくなかったです。それで、女子大に行こうと決めました。表向きは「女子トイレがきれいなところに行きたい」って言ってましたが、本当は、前出の「俺ら」、つまりホモソーシャルへの違和感があったからです。

高校の女友達とは、男に評価される構造から外れて楽しくやっていました。卒業するときに「もう、こんな男尊女卑な環境は嫌なんだよね」っていったら、「本当ににそうだよね」といった人と、「え、こんなもんじゃない?」、または「何のこと?」となった人がいました。で、その後の仲の良さも分かれました。「本当にそうだよね」って言った友達は今も近所に住んでて、結構なフェミニストです。

その後も、意識的に高校時代の「俺ら」ロジックの臭いのするところは避けてます。

――それは意図的に選んでるってことですか?

はい。そのほうが身のためだと思っています。

 ――ちょっと話が前後しますが、「男ロジック」が嫌だった高校時代から、女子大にいって、どのような違いがありましたか?

全然違いました!大学が津田塾だったので、授業で「ジェンダー」「フェミニズム」の構造や知識を知ることができたし、周りの友人もジェンダーに興味がある子しかいなかったんです。これまの違和感や嫌な経験を言語化、とにかく、しゃべって、共感しあいました。それが「癒しの時間」というか、間違ってなかったんだなって思える時間になり、それまでの世界と変わりました。

5. ジェンダーの不平等に関する困難や苦労にあなたはどのように対処していますか?

かなり、ディフェンシブにやってる気がします。つまり、ジェンダー観のあわない人や場とはかかわらないです。一方、身近な人間関係、パートナー選びは大事です(笑)。日々、ジェンダーのことでストレスを感じるようなら鬱にります。仕事上でしょうがない人がいても距離をおきます。「私たちには言葉が必要だ」(韓国フェミニズムの本)に「(男にジェンダー差別の構造を)説明しなくていい」ってあるのを読んで、よりこのスタンスに自信をつけましたね。

――じゃあ割と、戦うっていうよりは避けることで対処しているんですね。

そうですね。
あ、でも、例えばタクシーの運転手って、なんでか知らないけど女性にタメ語使ってきて、むかつきますよね。「こいつヤバいな」って思ったら、その後「そこ右です」とは言わず、「そこ右」と、こちらも敬語は使わないという対処をします。
あと、中年男性ばかりの部署に所属した時期がありました。飲み会で毎回「会社で一番かわいい女の子」の話をするから、「またその話ですか?」と辞めさせました。本当に、あほらしいですよね。なので、環境整備もしているかも(笑)

――個人的には、「デート市場」から離れたっていうのは大きいかもしれないですね。異性にジャッジされるっていうのが一気になくなった。

たしかに。若い女性は本当に大変です。
それで思い出したのですが、私は、30代「女装時代」なんです。30代はとにかく外見を綺麗にしていました。体を鍛えて、エステにいって、髪をさらさらに伸ばして、9センチ以上のヒールをはいて。洋服、化粧品にお金も使いまくりました。

当時、高山真さんのエッセイが私にとってのバイブルでした。「自分が美醜の判断軸で値踏みされたときに、『そんな軸は私に関係ないわ!』って対処では弱い。値踏みの軸を『ずらす』『もてあそぶ』」というようなことを書いてます(※)。
なるほど!と思って、値踏みされそうな時期は、外見磨きをして「おらおら、文句あるかー」ってしとく。だけど「選ばれたい」わけじゃないから、じゃんじゃん意見を言って自由に振る舞うわけですね。30代はいろんなイベントにも行って、こんな風に過ぎていきました。デート市場でどう評価されるかは、私たちが気にすることじゃないけど、ま、こんなやり方もあるかもしれません。

6. あなたのどの面が比較的男性っぽいですか?また、あなたのどの面が比較的女性っぽいですか?

「男性っぽい女性っぽいってなに?」って言いたいけど、今回は控えて(笑)。
実は星占い、ホロスコープが好きです。”女の極み”みたいでしょ?でも実はホロスコープは統計なので”男っぽい”世界ですが。あと、今なら、ヨガ、ヴィーガンを好んでいます。”女性マーケット”に入っているものですよね。
女の人との方が共感できるから、女性っぽい部分が大きいんじゃないかなと思います。男性に共感することってあんまりないから。

7. あなたの仕事または生活における成功の定義とは何ですか?

そうですね…。今よく思うのは「機嫌よくいること」。食事、ヨガ、人間関係、キャリアは、自分をご機嫌でいさせるための要素。うまく統合し、「ご機嫌システム」をつくりたいと思ってます。

8. あなたには、 とても重要なメンターや影響力のある人がいますか?

はい、その時々に存在しています。大学時代は画家の山本容子さんが大好きでした。大学の講演にお呼びしました。「あなたから見て私世代の女性ってどう映るの?」って聞いてくれて、感動して震えました。会社に入ってからも、大学院に通う取締役の方がいて、発言や行動を意識していましたし。
40手前までは「この先こうなりたい」という方を意識していましたが、今は共感できる方をメンターとしています。

9. あなたは、自分がフェミニストだと思いますか?

思います。

――どうフェミニストを定義していますか?

女性の社会的立場が構造的に弱いことに自覚的であり、変えるべきであるという考えを持つ人、これがフェミニストの私の解釈です。給与格差、政治家の男女比率、「これおかしくない?」って思えばフェミニストと、ポジティブに使っています。

10. 将来の計画は何ですか?
a. ご自身の計画

「自分のポートフォリオを作りながら働く」という自由度の高い働き方の実現やサポートを、女の人とやりたいなと思っています。前出の「ご機嫌システム」もそうですが、自分が生きやすいように仕事や周辺のことを自覚的に組み立てることができればと思います。

a. 社会への希望

社会。無力感にさいなまれますね。
政治的な指導者の中にもっとフェミニストが入っていく世界を望んでいます。まさにこのNPOもそうだし、かかわっていきたいと思っています。

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