ドキュメンタル9の話
半年に一度のお楽しみ、
ドキュメンタルの季節がやってきましたね。
今回で正式タイトルとしては9本目、Amazon Prime Videoから2月26日配信を開始しています。
前回のドキュメンタル8が諸事情により、前々回から1年以上間隔を空けての配信でしたので非常に心待ちにしていたのですが、8の感想としては、部分部分おもしろかったけど、全体的にちょっと薄味だったかな…というのが正直なところでした。
ただその後まもなく配信された「Documentary of Documental シーズン2 アマゾン怒りのお蔵入り!幻のシーズン&誰が悪かったのか!?緊急討論会」は、一度お蔵入りになった作品を丁寧な編集と十分なボリュームで、かつ自身がドキュメンタルに求めていた映像的刺激を存分に含んでおり、8へのフラストレーションを解消してくれる代物でした。
この内容こそがブランクの原因ともなった「諸事情」そのものでもあった訳ですが、このシリーズへの熱を失わずに済んだという意味でも、個人的には非常に意義のある作品でしたね。
さて、そんな流れを経ての待望の9ですが、自身はまだ未視聴です。これからいよいよ視聴しようという所でこの文章を書いています。
ここからはその最新作に対しての期待と不安、何も知らない状態でただただ思うことをだらだらと書いていきたいと思います。
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まずドキュメンタル9の参加者はこちら
チョコレートプラネット長田
フットボールアワー後藤
千原ジュニア
とろサーモン久保田
椿鬼奴
あばれる君
サンシャイン池崎
ゆりあんレトリィバァ
霜降り明星粗品
霜降り明星せいや
(敬称略)
初出場が4名で、変わったところではコンビが1組、よしもと以外の事務所2名、女芸人2名と中々バランスのよい構成のような気がします。
千原ジュニアさんとフット後藤さんという安定感のある手練の回し役がいることで、元気空回り枠になるであろうあばれる君、サンシャイン池崎さんのお二人も伸び伸び動き回れそうですし、個人プレーが多そうなゆりあんさんもうまく輪に入っていけそうです。
千鳥、千原兄弟に次ぐコンビでの出場となった霜降り明星の連携も見たいところですね。本編終了後もYouTubeやラジオなどで後日談が聞けそうなので、長く楽しめるという意味でもこの人選は嬉しいです。
チョコプラ長田さんの工作器具も活躍しそうですね。何となく一番優勝への思いが強そうだなとも思っています。奴さんの渋そうな立ち回りにも期待。個人的に一番あの空間での闘い方が見えない人でもありますね。
でもやはり個人的に最も一番期待するのは、とろサーモン久保田さんかな。過去回での活躍ももちろんなのですが、何と言ってもあの人間性が持つ危うさ、おもしろさがやはりドキュメンタル向きの方だと思います。今回も是非ともかき乱してほしい。
順当にいけばこうなるかな…とい動きを想像して書いてみましたが、まあ全くもって分からないですね。いつもそれらを裏切ってくれるのもドキュメンタルの魅力です。
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最近のシリーズで言えることですが、参加者を配信前に発表するのがスタンダードになってきましたね。割と本編を見ながら誰かな誰かなと、入室を参加者と一緒にドキドキしながら待つのが好きだったので、公式にネタバレをくらっているような、楽しみを一つ奪われているような、そんな気分になってしまい、ここに関しては演出として好みではないな…と思ってしまいます。
全4回というのも個人的に怖いポイントで。自身の中で過去最も振るわなかったと思っているドキュメンタル6もそうだったので…撮れ高的な問題なのかなと、勝手に不安に思ってしまいますね。
あと、これは満足度の面で何ら影響はないのですが、テレビCMや広告の雰囲気もポップになった気がします。始めの頃は地下の格闘技場のような、アングラで怪しい雰囲気を醸していましたが、今回の9のイメージを見てみても、カラフルでとてもスポーティな印象を受けます。
その兆候は8からあったと思うのですが、ひとつ懸念事項としては、Amazon判断のお蔵入りが発生してしまったことによって、ドキュメンタルがそれまでの「無法地帯」から、きちんとルールに則った「競技」としての側面を強く打ち出した番組づくりにシフトしているのではないかということです。
最初の方でも8に関しての感想は薄味だったと言っていますが、その要因としては、やはり下ネタを始めとするタブー表現が少なく、それが物足りなさに繋がってしまった、ということだと思います。
やはり歴代のシリーズを見てきた自身のドキュメンタルに対して求めるものは、「地上波で見られない過激なお笑い」であって、言ってしまえばそれがドキュメンタルの絶対条件となっていると言っても過言ではありません。それは過激であれば過激であるほど満足度が高くなり、禁忌を目撃したい!という渇望が、見ている内にどんどんと湧いて出てしまうのです。
恐らくドキュメンタルの熱心な視聴者層はこのタイプの人が少なくはないのではないでしょうか。8より過激さが残るDocumentary of Documentalの方が評価の高いのもそれを指し示していような気がします。
ただそれは作り手も知らず知らずの内にそうなってしまった…ではなくて、明確な意図が絡んでいると思うんですよね。言い方は悪いですが、あえて薄味にしていると。何故そんなことをするのだろうということですが、その目的はやはり「視聴者層の拡大を目指す」ということだと思います。今まで通りのやり方だと、お笑いマニアにはちょうど良くても、大衆には濃すぎるのでしょう。もっと希釈する必要がある。
お蔵入りがトリガーだったのか、計画的なシフトだったのかは分かりませんが、お笑いマニアだけに向けられた閉じた世界のコンテンツから、より広い層をターゲットにした万人向けのコンテンツへとドキュメンタルも変わっていく段階に入ったのかもしれません。
「コアから万人へ」は何もドキュメンタルに限った話ではありません。笑ってはいけないシリーズも、個人的にはマニアックで尖ったネタが多かった以前の方が確実におもしろかったと思います。もちろん企画の新鮮さとかネタ切れとか要因は他にもあるでしょうが、近年の作品にはどこか物足りなさを感じますし、そしてそれが過去最高視聴率などを獲得することに不思議な気持ちになってしまうのも事実です。
それで言うと、ダウンタウン自身もそうなのかもしれません。かつてのバイオレンスで先鋭的な芸風は、キャリアを重ねる中で次第に治まっていきました。いつまでもキワモノでは居られないのです。そしてそうした変化をし続けているからこそ、未だにお笑い界のトップランナーとして君臨しているのでしょう。
本来こうした成熟と呼ぶべき現象は一コンテンツとして見れば正当な進化と呼べるものなのだと思います。エンタメとして万人向けの作品を生み出すことが一番難しく、またそれを目指して成功した一握りの作品だけが普遍的なものとして後世に残っていくからです。ドキュメンタルも今、その道を目指して進んでいるのではないか、最近の流れを見るにそのように感じてしまうのです。
素晴らしいコンテンツが歩む道としては自然で正しい。しかし、一部では渇きを生んでしまう。これは仕方のないことなのですが、ドキュメンタルの場はやはりタブーが飛び交う無法地帯であってほしいし、下品な応酬で胸を熱くしたいのも潰えがたい望みです。
配信番組が増えてきた昨今、このような番組に対する考え方、期待も古くなってきているのではないかという思いもあります。「地上波では流せない!」は配信番組にありがちな売り文句ですが、そうした煽りも少々野暮になってきた頃なのかなと。地上波の下位互換としてではなく、個々で存在感を高めてきたそれら番組にとって、必ずしも過激さだけをセールスポイントにする時代ではなくなってきたように感じます。
大衆性の獲得を目指すコンテンツにとって、我々、過激原理主義者は切り離されるロケットブースターのようなもので、勢いづける役割を果たした後は不要物としてただ置いていかれる存在なのかもしれません。それ故にこうした番組の変化は寂しく、離れる方がお互いの為と、次第に距離を取っていくようになるのです。
ただ、まだ望みを失ったわけではありません。
その理由は、少し前に地上波で放送されたドキュメンタルのシステムを元にした「女子メンタル」の企画の存在がありました。ご存知の方も多いと思いますが、これが大衆的なのにおもしろかった。マイルドかつ刺激的で、万人受けもコア受けもする素晴らしいバランスの番組でした。
これが出来てしまうんですよね。このバランス感覚が結局、松本ファンで居続けてしまう理由で、リアルタイムで視聴していて、8で軽く落胆していたのもあってか、とても感動したことを覚えています。
ドキュメンタルが変わっていくことは仕方がない。ただ、ただ丸くなるのではなく、別の評価軸ですごいと思わせてくれるような光る新しい何かを一つでも見せてくれたら…。そんなものに出会えればかつての過激さが損なわれていようと、それでもう十分満足です。
偉そうに訳のわからないことを長々と書きましたが、大好きなシリーズですし、そんなこんなでずっと続いてほしいと思っています。
このシリーズが始まると聞いてAmazon Primeの加入もしましたし、不安が杞憂に終わりますようにドキュメンタル9には期待しています。
さて、今から見ますかね!
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