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「会いたい」の影があなたを食ってしまわないように。

新商品があったら、なんとなく買ってしまう。多分、新しいから。

新しいってことは今までになかったってことだ。
それは希少価値なのかもしれない。あるいは新しいは進化なのかもしれない。でも新しいことは、世界中どこでも溢れるようになっている。新しいことはもう全然新しくない。だとしても私は、もしかしたら誰かも、スタバの新商品を買い続ける。

「フラペチーノのアイスで、Sサイズで、お持ち帰りで。あ、袋いらないです」

◆◆◆

私は、水泳が好きだ。
泳ぐことはいつも「途中」であり、そして「今」だから。
泳いでいる時、私は向こう岸につくまでの「途中」に属していながら、単なる過程ではなくそれ自体が「今」という点の上にいる。
昔先輩が「水泳は試合の時、今1回水をかくこと、それを繰り返してたら気づいたら終わる。こんな不思議なスポーツはないでしょ」と言っていた。

なんでもない一日の始まりに電車に乗るまでの道をとぼとぼ歩く時、私はその先輩の横顔を思い出す。

◆◆◆

誰かに会いたいと思ってしまう夜が、苦手だ。
今すぐ会いたくて、でも会えない事もわかっていて、ゆらゆらする気持ちの中に自分が沈んでいくような気がするから。
会いたいと口に出してしまえば、なんだかあなたがいないとダメだと認めてしまっているようで、怖くなる。私が地面に足をつけることにあなたを巻き込みたくないな。会いたいという気持ちなんて、この世から無くなってしまえばいのに。
私の「会いたい」の影があなたを食ってしまわないと、いいのだけれど。


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Kanako Yamazaki
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