【絵本 おじさんのかさ】
りっぱな黒い帽子に、りっぱな黒いコート、りっぱな口ひげをたくわえた おじさんは、黒くて、細くてピカピカのりっぱな傘を持っていました。
【並べて楽しい絵本の世界】
でも、おじさんは雨が降っても傘はさしません。
外に出かけるとき、大きな鏡の前で身なりを整えているおじさんのうしろには、奥さんが傘を持って、つつましく立っています。
(昔の亭主関白の甘えん坊の頑固おやじの姿だ・・・と筆者は思う)
すこしくらいの雨は、ぬれたまま歩く
もう少したくさん降ってくると、雨宿りする
急ぐ時は傘を抱いて走る・・・
大降りだったら、そもそも出かけない。
かさが ぬれるからです
公園の大きな木の下のベンチで、かさの上に手をのせてうっとりしていると、
あめ・・・降ってきました。
ちいさなおとこのこが、雨宿りにやってきました
おじさん あっちにいくんなら、いっしょにいれてってよ
あろうことか、おじさんは 上をみて聞こえないふりをします。
(おとなげないなぁ)
とおりかかった おともだちの ちいさなおんなのこと
ちいさなおとこのこは
おじさんを横目にみながらも
たのしそうに 歌いながら 雨の中を帰っていきました。
あめがふったら ポンポロロン♪
あめがふったら ピッチャンチャン♪
と歌いながら。
おじさん・・・その歌が耳からはなれない。
つられて声にだしてうたってみる。
「ほんとかなぁ。」
とうとう おじさんは
かさを ひらいてしまいました
見開きいっぱいに描かれる大きな立派な黒い傘に
思わず吹き出してしまいます。
なんかしらないけど威張るおじさんとか、
お説教をする先生とか、都合よく奥さんに甘えている父親とか、
今どきの若者は、なんて言っている大人を見ると、子どもの頃は、かなり白けていました。
「だから女は嫌なんだよ」なんて言われようものなら、牙をむいた時期もあったなぁ。もちろん今だってそんなこと言われたら、怒るけど。
でもこのページいっぱいにひらいた傘をみると
ちょっとだけ、許してあげてもいいかな
なんて思います。
佐野洋子さんがこの作品を持ち込んだ時、編集者から、
「主人公を子どもににしたら、本をだしましょう」
と言われたエピソードがあるそうです。
そしたら、佐野洋子さんは
「子どもなら雨なんか降らなくたって、かさをさすわよ」
とつっぱねた とか。
こんなエピソードを聞いたら、おすすめしたくなります。
子どもさんにも読んであげてほしいです。
今日もお読みいただきありがとうございます。