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【JChem】ChemAxon/Infocomノード群を使ってみよう_03_Marvinノード群お遊戯編
【Let's enjoy the Marvin!】
前回まででMarvinノード群を活用する準備は出来ました。
KNIME社からも”Enjoy”と言ってもらえたので、今回はMarvinノード群を愉しむことにします。単なる体験記ですのでお遊戯を観覧するつもりで優しく見守っていただけると嬉しいです。以下引用部分以外は個人の見解です。
さて先月TeachOpenCADD-KNIMEのW1を体験しました。
https://note.com/knimesupportteam/n/n8a816518cf1f
決してW2に進めるのを怠けているわけではありません、信じてください。
構造を描画しただけだと、ちょっと物足りなく思いました。そこで気になった化合物をMarvin Viewノードでより詳細に見てみようなんて思い立ったのです。
【今回眺めるデモデータ】
上記のTeachOpenCADD-KNIMEのW1の出力データをMolecule Type Castノードで処理してありますので、次にMarvin Viewノードを繋ぎます。
設定は繋いだ時点でSMILES形式のカラムを見つけて適切に設定されていました。
実行時は右クリックしてExecute and Open Viewsを選択して下さい。
結果は、新たにウィンドウが開いて以下のようになります。
【原子のフォントサイズなどはMarvin Sketchで設定】
あと、初期設定だと各原子のフォントサイズが小さすぎたりするのですが、このMarvin Viewウィンドウでは変えられないです。
設定法が特殊でして、一旦Marvin Viewウィンドウを閉じて、KNIMEとは別にMarvin Sketchを起動し、下図のように
File> DocumentStyle> Settings…と選択。
表示されたウィンドウで原子のフォントの設定などができます。
その後OKを押して決定し、Marvin Sketch を閉じてください。
Marvin Viewウィンドウを再度表示すると設定が反映されています。
この仕様、どうしてこうなった!?
【リスト表示方法二種】
スプレッドシート形式が初期設定です。
Table>Options…メニューで
文字データの表示サイズやカラム種など変えられます。
あるいは
下記のようにMoleculeMatrix表示も選べるのでお試しあれ。
【スプレッドシートのカスタマイズ例】
ほとんどの場合、構造が小さすぎると思うので、セルの上下左右をドラッグして適切な広さに変えてください。
構造式以外のカラムは順序を手動で入れ替えできます。幅を縮めてはみ出ると境界線が波線になったりと、いろいろありますが使って慣れて頂けたらと思います。
【個別に化合物を詳細に調査】
気になる構造式のセルを上図のように選択、CHEMBL1016なんか見たことあるなぁって思いまして。
これ市販薬ではと名前を調査してみます。
メニューから
Tools > Namingを選択
下図は調査対象を選択、今回は全てを選択していますが、CAS番号は見つからないとエラーが出るので、お好みで。
「OK」で下記ウィンドウが。あー、blopressだ。
正確にはブロプレスの活性本体(Candesartan)ですが、まあそこは大目に見ていただけたら。
【Blopressについて】
http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/nakasuji/summar/yokou/kubo.pdf
ラットにおけるAⅡによる昇圧反応をカンデサルタンは経口投与で強力かつ持続的に抑制
(ID50 = 0.03 mg/kg)したが、薬物動態試験の結果、生物学的利用率(BA)は5%程度と低いものであり、経口剤として開発するには不十分と考えられた。その原因は分子内に2つの酸性基が存在することにあると考え、それらのプロドラッグ化による経口吸収性の改善を図った。
ジカルボン酸って、経口吸収性は一般的に悪めですもんね。ということで、pKaを見てみようと思います。
【MarvinでpKa予測】
無料で詳細なpKa予測までできるのは本当に驚きです。ChemAxon社とパトコア社は太っ腹やわぁ。
予測値と言えば精度が気になる方はこちらもお読みください。
pKaを予測する場合はメニューから
Tools > Protonation > pKaを選択
設定は…すみませんよくわからないのでデフォルトのまま「OK」
こんなん出ましたけど~ (古いとは承知しております)
多くの分子が環境により水素を得たり失ったりする特定の官能基を有します。それぞれのプロトンの取得あるいは喪失までの電離平衡はpKa(酸解離定数)と呼ばれる定数によって表されます。
ということで、以下見ていきたいと思います。
左上のウィンドウを見ると、酸性官能基(プロトンドナー)は赤色で、塩基性官能基(プロトンアクセプター)は青色で、各官能基ごとのpKaが表示されています。
カンデサルタンのカルボン酸は3.51, テトラゾールは5.85とまあありそうな値が出てますね。
【プロトネーションフォームとは】
上図の右側のウィンドウは初見では何のことかと思いませんか?
Microspecies plugin は特定のpHにおけるメジャープロトネーションフォームを特定します。主要な構造はユーザーが指定した互変異生体フォームまたは自動計算された支配的な互変異性体フォームに基づきメジャープロトネーションフォームを予測します。
私なりに注釈を加えてみます。
横軸はpHで、縦軸は各プロトネーションフォーム(プロトン化、脱プロトン化の状態)の存在率(%)の予測値です。
要するに、どのpHだったら、フリー体が多そうとか、カルボン酸は脱プロトン化されてそうとかの存在率を予測しています。水溶液中で本当にそうなっているかはなかなか検証できないのですが、ある化合物が生体内で異なる組織間の様々なpH勾配の中をどのように状態を変えながら分布していくかを想像する助けになりませんか?
<参考>プロトン化とは
【想像力を働かせてみよう】
カンデサルタンのチャートを見てみましょう。
例えば、プロトネーションフォームの1をクリックすると、右上のウィンドウに拡大されて表示されている通りフリー体です。
しかもチャートを見るとpH2.6の時に、82%強がフリー体で存在するのがピークで、pH7.4くらいだと0%って本当!?
因みに左下のテーブルは各pHでの各プロトネーションフォームの一覧です。
じゃあpH7.4で最もメジャーなのはどんな状態なのかとみると、9割以上が8すなわちカルボン酸もテトラゾールもプロトンを放出してイオン化してるとの予測。
私にはちょっと信じられないぐらいの予測結果でしたけど、もしそうなら膜を透過しづらいので、分布しにくいなぁと想像します。
<参考>pH分配仮説
pH-分配仮説と分子型分率
薬物は必ずしも同じ形をとっているとは限らない。これは、同じ薬物でもpHによって分子型やイオン型をとる場合があるためである。
例えばアミノ基(-NH2)を分子内にもつ薬物なら、酸性にすればイオン型が多く存在し、塩基性にすれば分子型が多く存在することになる。カルボキシル基(-COOH)を分子内にもつ薬物なら、酸性にすれば分子型が多く存在し、塩基性にすればイオン型が多く存在する。
イオン型と分子型であるが、当然イオン型の方が親水性が高く、分子型の方が疎水性が高い。そのため、分子型で存在する方が吸収されやすいのである。
分子内にアミノ基やカルボキシル基などをもつ薬物は、pHが変化するに従って「存在するイオン型薬物と分子型薬物の割合」が変化する。
「イオン型薬物と分子型薬物の割合」を分子型分率というが、分子型で存在している割合が高いと、この分子型分率の値は高くなる。pHが変化するに従って薬物の分子型分率も変化するが、分子型分率が変化するということは薬物の吸収率も変化するということである。
もしpHが変化することで分子型薬物の割合が増加(分子型分率↑)すれば、吸収率は改善する。逆にイオン型薬物の割合が増加(分子型分率↓)すれば、吸収率は悪くなる。
このようにpHによって分子型分率が変わり、その結果として吸収率が変わることをpH-分配仮説という。
実際どうなのか確かめたくなりつつも、楽しかったです。
気が付けば3000字を超えたので、MarvinViewでのお遊戯の時間はここまで。
また一緒に遊びましょう!
【Marvin Viewへのさらなる期待】
実はMarvin Viewに欲しい機能が一つあります。
Table Viewノードにはあるのに、Marvin Viewノードには各カラムでの並べ替え機能がないんです!
(あ、もしあったら教えてください。ちゃんと謝ります。)
だからMarvin Viewに繋ぐ前に、Sorterノードで並べ替えをしてその順番固定のままで眺めることになります。
もともと十分に絞り込んだ化合物セットをマニアックに眺めるためのMarvin Viewなので、こういう仕様を選んだのかなと理解はしています。
ま、ソートだけにそうとう難しいんですかね。おあとがよろしいようで。
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