見出し画像

Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー

2025年ベルリン映画祭コンペ部門選出作品。Ivan Fund長編二作目。まさかのコンペ選出作品の中で超能力少女ものの被りが出るとは、PDの好みなのだろうか?物語はアニカという、動物と交信できるらしき少女が主人公となる。彼女はミリアムとロジェといい二人の壮年男女(祖父母?)と旅を共にしており、ミリアムがアニカの交信結果の解釈を伝えることや事業の宣伝を担当、ロジェが車の運転や顧客との値段交渉などと担当し、三人は様々な街で様々な人々と仕事を続けていく、というオフビートなロードムービーである。ただ、映画はこの怪しげなビジネスを決して映画の中心には持ってこず、日常生活の一部として淡々と流し去っていく。何気ない瞬間だが…というような代物でもない、本当に何でもない瞬間をずっと映していることも多く、いまいち掴みどころのない映画だったという印象。というか、映画の最序盤に、バンの後部に取り付けたシャワーを浴びるアニカを、大人二人がほぼ全裸で道端に放置するシーンがあり、彼女が二人を呼んでも応えないというのを長々と映していたので、能力を無理矢理使わされているネグレクト系の集団なのかと思ったら、その後は特にそういうわけでもなく、疑似家族として世間一般の家族くらいの繋がりがあるっぽいので、この特大ノイズが最後まで消えないままずっと意味が分からない時間を過ごしていた。アニカは作中で何度か乳歯が抜けており、徐々に大人になりつつあることが示唆されているが、動物との交信能力はそこで失われてしまうのだろうか?だからこそ、今の生活は永遠には続かないという儚さのようなものが見えるのか?という点は興味深いと思ったけど、だからこそ、ほぼ全裸で放置するシーンがキショすぎて、その後の無邪気な展開には寧ろ恐怖さえ覚えた。

・作品データ

原題:El mensaje
上映時間:91分
監督:Iván Fund
製作:2025年(アルゼンチン, スペイン, ウルグアイ)

・評価:50点

・ベルリン映画祭2025 その他の作品

★コンペティション部門選出作品
1 . レオノール・セライユ『Ari』幼稚な男が自分と向き合うナイーブな映画
3 . ガブリエル・マスカロ『The Blue Trail』ブラジル、"未来はみんなのために…"
4 . ミシェル・フランコ『Dreams』アメリカとメキシコ、独占欲を巡る恋
6 . ヴィヴィアン・チュウ『Girls on Wire』中国、ワイヤーを使えば人間も空を飛べる
7 . レベッカ・レンキェヴィチ『Hot Milk』スペインのビーチで毒親と妖精に囲まれて
8 . ルシール・アザリロヴィック『The Ice Tower』少女が見た"雪の女王"と不在の母親
9 . メアリー・ブロンスタイン『If I Had Legs I'd Kick You』ワンオペ母の"アンカット・ダイヤモンド"
11 . Huo Meng『Living the Land』中国、麦畑を囲む春夏秋冬
12 . Iván Fund『The Message』アルゼンチン、動物と交信できる少女の無邪気なロードムービー
14 . エレーヌ・カテ&ブリュノ・フォルザニ『Reflection in a Dead Diamond』ユーロスパイ映画の4次元フラクタル
16 . カトライナ・ゴルノスタイ『Timestamp』ウクライナ、戦時下の学校教育について
18 . Frédéric Hambalek『What Marielle Knows』ドイツ、両親の行動が覗ける力を手にした娘

★パースペクティブス部門選出作品
2 . Ernesto Martínez Bucio『The Devil Smokes (And Saves the Burnt Matches in the Same Box)』メキシコ、子供だけの家に悪魔がやって来る
10 . Tanushre Das&Saumyananda Sahi『Shadowbox』インド、PTSDの夫を支える家族たち
13 . Arnaud Dufeys&Charlotte Devillers『We Believe You』ベルギー、暴力夫に立ち向かう日
14 . Liryc Dela Cruz『Where the Night Stands Still』豪邸を相続した姉と再会した弟妹たち

いいなと思ったら応援しよう!

KnightsofOdessa
よろしければサポートお願いします!新しく海外版DVDを買う資金にさせていただきます!

この記事が参加している募集