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癒し音声作品『ねこぐらし。』が怖い

(本記事には『ねこぐらし。』シリーズのネタバレが含まれます)

DLsiteに突如として登場した、大人気声優を起用した癒し音声作品『ねこぐらし。』シリーズ。

タッチの南ちゃん役でも知られる日高のり子さんまで起用され、話題になった。

この作品で、『ねこぐらし。』シリーズは最終コーナーを曲がったのだと思う。

声優の魅力や、癒しSEのクオリティの高さといった話ならば、DLsiteのレビューを見ればいくらでも書いてあるだろう。私は、この作品に流れる『不穏さ』の話をしようと思う。つまり、『私』は誰なのかという話だ。正直私は、この作品の結末が怖くて仕方がないのだ。

はじめに、『ねこぐらし。』シリーズのあらすじを説明しておこう。

主人公(仮に『私』)は、三毛猫に導かれて不思議な旅館にたどり着く。

『猫鳴館』と呼ばれるその旅館では、選ばれし者である『私』に、『猫娘』たちが奉仕をして一番癒せた娘を決める『ゲーム』をしているのだという。『私』はここで2ヵ月逗留し、猫娘たちに代わる代わる奉仕(主に耳かき)を受けることになる。

と、ここまでが『私』に開示されるルールなのだが、作品紹介で書かれているのはそれだけではない。

以下引用

“ここは死後、天国にも行けたが前世に未練がある生物の魂が集まる、あの世とこの世の狭間の世界。旅館・猫鳴館。

様々な人々&人じゃない者達が猫の姿となって働いたり働かなかったり(猫なので)…。自由気ままに、けれど、どこか心の中にモヤっとしたものを抱えながら暮らしていた。

そして今日から、10年に一度の祝祭「九魂祭」。
猫には9つの魂(ことわざ:猫に九生有りに由来)があるという言葉の由来となった祭りが始まる。
猫鳴館に溜まった穢れを依代と共に流し祓う事を主目的とする。
現世に住まう選ばれし人(主人公)を神と見立て、巫女が奉仕することで荒御魂を鎮める。
最後にはマレビトである人と、連れ添う巫女が穢を持って現世に流される、というものだ。

要は、選ばれし人に猫娘は巫女として奉仕し、再び現世へ生き返るためのお祭り、なのだ。

しかし、猫たちの多くが人として生き返りたい、という気持ちが非常にあるので、多くの猫娘が巫女になるために立候補することになる。
結果、二ヶ月間の準備期間の間で、あれやこれやで最も愛された猫『惚れさせた者』が巫女になれるというお祭りに変化した。

これは死後の世界では非常に有名なお祭りであり、注目度が非常に高い。
天国も地獄もこの時だけはあの世配信サイトの画面に夢中。
どの猫娘が勝利し巫女となれるのか。あの世とこの世の狭間で、猫娘たちの恋愛ゲーム、いや、儀式が始まる。”

いやもう、重い!『私』の責任重いよ!?というか『あの世配信サイト』って何!?リアリティーショーなの!?テラスハウスなの!?

今回、猫神様から『私』に、このルールが開示された。『私』はここから元の世界に一緒に帰る1人だけを選ぶことになる。

ここでひとつの疑問が生じる。『私』はいったい誰なのか?ということだ。

この種の音声作品では、聞き手は『私』になって聞くという原則がある。もし『私』が『先輩』と呼ばれていたなら聞き手は先輩だし、『提督』と呼ばれていたら提督、『勇者様』と呼ばれていたら世界を救った勇者だろう。「おかえりなさい。お疲れさま」と言われたなら、疲れて帰ってきた恋人だろう。「現実ではニートなのにお疲れさまなんて言うな」などとわがままを言ってはいけない。

けれど、『ねこぐらし。』では『私』が何者なのか明示されない。どころか『私』自身が自分が何者なのか分かっていない節がある。『私』については、猫娘たちの方がよく知っているくらいだ。

初対面を装っているが、猫娘たちは、みな生前に『私』と関係があった女性らしい。僅かにこぼれる断片的な情報から、『私』の輪郭が見えて来る。

1人目の猫娘、ミケ猫。CV. 上坂すみれ

猫鳴館では新入りの猫。若干話し下手で友達が少ないらしい。

耳かきの他には、ねこじゃらしを使ったマッサージと顔剃り、あと肩たたきなどのマッサージをしてくれる。耳かき棒は竹製。

『私』については「たしか、好きでしたよね、耳かきされるの」「こんな風にあなたと過ごせる日が来るなんて」「いつのまにか、お髭まで生えていたんですね。すっかり、男の子から大人の男性になっちゃって」「(夜トイレにひとりで行けると言われて)そうなんだ。だって、昔は…」「もうずっと昔、あなたは、覚えていないでしょうけど、ふたりでこうして、お昼寝しましたね。看護師さんに見つかって、ちょっぴり怒られて。また、あんな風に、一緒に——」と言っている。

2人目の猫娘、シロ猫。CV. 竹達彩奈

『私』のことを「お兄さま」と呼ぶ。

耳かきの他には、尻尾を使ったマッサージをしてくれる。耳かき棒は炭酸綿棒。

『私』については「お兄ちゃ…お兄さま」「耳かきで、お耳掃除、していきましょっか。これでこしょこしょされるの、お兄さま好きだよね」「私の耳かき、気持ちよかったですか?昔も好きだったもんね」「春菊、食べられるようになったんだ…」「お兄さまを一番想っているのは、私なんだよ?他の猫に浮気など、したらいや」「おやすみなさい、お兄ちゃん。いつまでも、大好きだよ。お兄ちゃんが私を忘れても、ずーっと」と言っている。

3人目の猫娘、クロ猫。CV. 逢田梨香子

少し芝居がかった中性的な話し方をする。ゲームの勝敗には興味がなく、『私』に興味があるというが。

耳かき以外だと耳指圧、炭酸泡マッサージをしてくれる。耳かき棒はチタン製。

『私』については「ほら、前に言ったろ?君は短い髪の方が似合うって……いや、ごめん。なんのことかわかんないよね。あまり気にしないでくれ。どうせ話せないことだから。」「本当は君に、こうして触れる資格なんてないんだ。そんな上等な人間じゃ…今は猫だが、とにかく違うんだ。本当は、私は、ただ君が幸せになれれば良いと祈って、部屋の隅で丸まっていなきゃいけない奴なんだ。えへっ、どの面下げてこんなところにいるんだって話だよね。まったく、自分の卑しさが心底憎いよ。……ごめんね、君に言いたいことたくさんあるんだけどさ、いえないんだ。それがここのルールだから」「こんなこと、前にもあったな。夜、私帰れなくなって、一緒に——」と言っている。

4人目の猫娘、シャム猫。CV. 茅野愛衣

のんびり、ダラダラした性格。お姉ちゃんと呼んでいいらしい。ゲームのルールは、お昼寝しててよく聞いていなかったという。

耳かきが充実していて、梵天・赤ちゃん綿棒・耳かき棒で耳かきをしてくれる。耳かき棒はヒノキ製。耳かき以外だと、手袋マッサージとボディーマッサージをしてくれる。

『私』については「私は、君のこと、信じているのです。もう、私がついてなくても大丈夫だよね。ちゃあんと楽しくやっていけてるよね。だから私、他の猫みたいに一生懸命は頑張らないよ?えへへ、なんの話かわかんないよね。いいんだよいいんだよ」「私ね、昔、革を加工するのが好きでさ、お財布とかよく作ってたんだ。それで、お気に入りの後輩にプレゼントして。あの子、まだ使ってるのかなぁ」「ほら、前もそうだったでしょ?ほら、バイトで、休憩室でさ、私、君を口説いたじゃない?や、そんなつもりはなかったんだけど、そんな感じになってさ。ん?覚えてないの?それでもいいよ。今がこんなに気持ちいいんだもん」「なんか、こういうの、懐かしいね。私、心配だったよ。君、いつも顔色悪くて、バイト終わった時、寝かせてあげたよね。懐かしい、懐かしいにゃあ——」と言っている。

5人目の猫娘、ベンガル猫。CV. 高槻かなこ

大人な雰囲気の猫娘。でも、膝枕に抵抗感を見せたりとうぶなところがある。

耳かきの他に散髪・炭酸シャンプー・髭剃りをしてくれる。そういえばクロ猫も髪を切った方がいいって言ってたっけ。

『私』については「ん?ふーふーするのは子ども扱いみたいで嫌だったの?ふふっ、前と同じ事言うのね」「なんかちょっと懐かしいわね、この感じ。少し大人になってから切らせてくれなくなったから」「私ね、昔からこういうのしてあげたかったんだ。でもほら、君、嫌がったでしょ?子ども扱いするの。猫になって、今いちばん得してる」なんて言っている。

6人目の猫娘、ペルシャ猫。CV. 津田美波

エセアメリカ人みたいなカタコトの日本語でハイテンションに話しマース。「チョロイ」という単語を「cute」という意味で覚えている。ちなみに当然膝枕。「なんなら女の子猫にとって耳かきなんて膝枕の口実、みたいなとこありマース」と。ベンガル猫とは見解が違うらしい。

耳かきの他には、爪切り、ハンドマッサージ、オイルマッサージ、ヘッドマッサージをしてくれる。耳かき棒は竹製。

『私』については「お客様、めちゃんこ会いたかったデース!理由は言っちゃダメなんですって」「私が君とこんなことするなんて、変な気分ですね。あの子に見つかったら、怒られちゃいます」「猫になる前は、私にこんなこと絶対させてくれませんでした。役得です」「なんか……えへ、こんなの、夢みたい。君は、私の男の子じゃないのにね。ごめんね、抜け駆けして。でも、いいよね。今は、ふたりきりだもん」と言っていた

7人目。猫神さま。CV. 日高のり子

この人は違う。例外。プレイヤーじゃなくてGM。攻略不能キャラ、全ての元凶、黒幕。

耳かきに加えて、頭皮マッサージ、しっぽでマッサージ、あと環境音で癒してくれる。

と、まあここまでで出揃った情報をまとめると

ミケ猫(CV. 上坂すみれ):『私』がまだ小さい頃、病院で一緒にいたらしい。
シロ猫(CV. 竹達彩奈):『私』のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ関係だったらしい。
クロ猫(CV. 逢田梨香子):『私』と何かネガティブな因縁があるらしい。
シャム猫(CV. 茅野愛衣):『私』のバイトの先輩で、『私』を口説いたことがあるらしい。
ベンガル猫(CV. 高槻かなこ):『私』が子どもの頃、髪を切っていたらしい。歳上?
ペルシャ猫(CV. 津田美波):『私』の相手は自分ではなく、『あの子』だと思っているらしい。
猫神様(CV. 日高のり子):元凶。黒幕。GM。

ここまで来ても『私』が何者なのかはわからなかった。どうやらそれを知らせることは、猫神さまの『ルール』に抵触するらしい。
それでも、猫娘たちと『私』の関係はわずかながら見えてきた。

ここで『あなた』は選択を迫られる。

最初の時点で、不自然なくらい具体的に提示された“2ヶ月”という猫鳴館での滞在期間。もしこれが現実時間とリンクしているなら、8月15日に『儀式』が終わり、あなたは猫鳴館から帰ることになる。

この『儀式』であなたが救えるのは、この中の1人だけだ。誰かを選び、救うことは、他の5人を見捨てるということだ。……え?マジで?なんか明らかに肉親っぽい猫が混じってなかった?この中から『1人を選べ』と?

これからこのシリーズはどのように展開していくのだろうか。私としては、それぞれの猫娘を選んだ場合の結末の作品がリリースされるのでは?と思うのだけど。

幼い日を過ごした大切な友達、自分を『お兄ちゃん』と呼ぶ女の子、死してなお自己嫌悪に苛まれながらもあなたの幸せを祈る子、弱ったあなたを支えてくれた先輩、歳上のお姉さん、例え横恋慕でもあなたを愛してくれた女の子。

あなたは誰を選び、どんな結末を迎えるのか。

……全部買ったらハーレムエンドとか無いの?ダメ?


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