見出し画像

ハッピー196

「あ、よかった〜。今日はまだ開いてた」

まだ開いている商店を見てホッとしたアキヒコは、先月単身赴任で東京から縁もゆかりもない地へ来たばかりだった。

最寄り駅の繁華街と呼ばれている場所とは反対口の住宅地に住まいを借りてしまい帰り道に唯一あるのは【よりみち】という商店1軒のみ。

東京に住んでいた頃の最寄り駅から自宅までに3軒も4軒もコンビニがある感覚でいたので、唯一あるこの【よりみち】は帰宅時に開いているととても助かる。

今日はノー残業デーだったので早く帰ってこれたのが救いだ。【よりみち】は19時には閉めてしまう。

おそらく、単身者は駅の反対側で食事を済ませて帰るのだろう。ファミリー世帯も昼間に買い出しをしているだろうから遅くまでやっている必要はないのだ。

「こんばんは〜!」

自動ではない引き戸を開けるとレジにはいつものおばあちゃんが座っていた。

「あら、おかえりまだ閉めないからゆっくり見ていきなね」

おばちゃんの優しい声に甘えたかったが、アキヒコはお目当てのものを手に取りすぐ会計をした。

スーパーよりも安い500ml缶チューハイ。1本196円。

これを帰って風呂上がりにプシュッっとやるのがたまらんのだと、ニヤつきながらアキヒコは帰路についた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?