諭吉だってとろけたい
「久々に来たら店の雰囲気大幅に変わっててわかんなかったよ。でもよかったよ。元気そうで」
そう言ってK太は万札5枚を俺に握らせ「釣りはいいよ!コーヒーでも飲んでよ!相変わらず気持ちよすぎるとろけるくらいのシャンプーだったよ!じゃな!」
そうい残し、そそくさと走って行ってしまった。
千円札と間違えたのだろうと追いかけたが見当たらない。相変わらず足が速いな。
どうしたものかとクシャクシャになった一万円札を見つめていると、「さっきの話聞いていたのですが、私もシャンプーとやらを体験したいのですがよろしいでしょうか」と一万円札の福沢諭吉が俺に向かって話しかけてきた。
訳がわからず焦っていると、一万円札からよっこいしょと福沢諭吉が出てきた。
「ここの中は狭くて肩がこって仕方なかったのですよ。では早速お願いしてもよろしいでしょうか」
目の前に一万円札から出てきた福沢諭吉が俺にシャンプーをしろとせがんでいる。
いったいどういうことか訳がわからん。
呆然としている俺に諭吉さんが、それなりの対価は支払います。と言って見たことの無い硬貨を握らせてきた。
え、何この硬貨って思っていたら諭吉さんが消え始めていた。
「もうそろそろ私の出番はなくなってしまう様なのです。私は溶けてしまいますが、渋沢さんにはきちんととろけるシャンプーとやらをしてあげて下さい」
そういい残し諭吉さんは消えてしまい、俺の手元からも5枚の一万円札が消えていた。
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