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焼くなっ!焼き肉っ!

「ここの焼き肉屋ってさ、焼いてるのにどんどん肉が生になってくんだぜ!」
運ばれてきた肉をトングで網の上に乗せながらザキさんが自慢げに言ってきた。
ここの焼き肉屋は焼かれた状態で提供された肉を、如何に卸された状態に近く戻せるかを求められる店らしい。
その生になった肉はどうするのかとザキさんに聞いたら、この店の奥にいる猛獣たちの餌にするらしいとのことだった。
「たださ、その猛獣の肉がここで出されてる肉って噂なんだよね」
そんな話を聞かされながら、ザキさんは一生懸命に肉を黙々と真剣に網に乗せている。
俺が話しかけようとしたら、今は声をかけるなと叱責された。
「よしっ」
肉をさらに乗せてから、ザキさんが実はさ、、、と話し始めた。
何でも先月会社の後輩とこの店に来た時に、トイレに行ったまま後輩が帰ってこなかった。心配になり様子を見に行った姿がない。店員に聞いたがそんな人はいなかったと。翌日も会社に出勤もしてこなかったので同僚に後輩の事を聞いたが、そんな人はいないと逆に心配されてしまったらしい。
後輩の記憶が残っているのがザキさんだけなのか、ザキさんが変になってしまったのか気になったので真意を確かめるために俺を誘ってまたこの焼き肉屋に来たらしい。
「ちょっと飲みすぎたわ。トイレ行ってくる」
そういったままザキさんは戻ってこなかった。
店員に聞いてもトイレに言った客はいないという。
俺も来月またこの焼き肉屋に来なければならないのか、、、。一抹の不安がよぎった。


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

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