20240612
高橋源一郎『さよなら、ギャングたち』(講談社文芸文庫)を読み終わった。初めての高橋作品。軽やかな文体に反して死や暴力といった暗い要素が背後に漂っている。文脈や常識を無視して突き進む推進力にも感心した。加藤典洋による解説を読むと、そうした印象の裏で作者自身が抱えていた失語症による産みの苦しみという側面が理解できる。作品自体は二ヶ月で書き上げられたそうだが、最初の一文に至るまで二年かかっただろうと加藤は指摘している。さらに、巻末に記されている高橋の人生遍歴もわたしが抱いている『飛ぶ教室』や2011年以降の〝左翼おじさん〟的なイメージから大きく離れた印象を受ける。