ギャグ漫画日和と青春
私は昔、漫画を読まない子供だった。
別にそう教育された訳ではないのだが、推理小説が好きでそればかり読んでいたため、漫画にはあまり興味を持てなかったのだ。
だから、妹に面白い漫画を借りてきたので読んでみてほしいと言われた時も、あまり乗り気ではなかった。
あまりにも勧められるので仕方なく手に取ったその本のタイトルは、
『ギャグ漫画日和13巻 チンパンジーの巻』
…?
ただでさえ漫画に詳しくない私に取って、まさに未知との遭遇。
困惑する私をよそに、
「この話を、どうしても読んでほしい!」
と、妹はあるページを開いてくれた。
第260話「夢へ向かってジャンプ!」
少女漫画風のタッチで描かれるその話は、
どうしても踏み切りの際に
「へっパップ!」
と叫んでしまう走り幅跳び選手の話だった。
そのせいで記録が伸びない。
どうしても矯正したいのに、むしろどんどん悪化していく。ついにはもう会話が成り立たないほどにへっパップに侵されていく。
そういう話だった。
衝撃を受けた。
どう生きてきたらこんなネタを思いつくのだろう。
面白い、面白すぎる!
私の知らない面白さだ。
それからというもの、私はギャグ漫画日和に夢中になった。
1巻から全て買い揃え、暇さえあればギャグ漫画日和を読んでいた。
中学生になったある日。
私の所属していた部活で、大きないざこざがあった。
原因はもう忘れてしまったが、とにかく私は対立の板挟みとなってしまったのだ。
人間関係が拗れてしまった集団で生活をするというのは、どうしても苦しいものだ。
今思えば、あの日々も確かに青春だった。
目指す方向はみんな同じで、思いが強い故の対立だったのだと思う。
しかし、当時はとても苦しかった。
今日は部活に行きたくないな、と思う日もあった。
そんな時、家に帰ると私は決まってギャグ漫画日和を読んだ。
みんなに舐められているペリーの話とか、
変身の瞬間にお父さんが全裸になってしまう魔法少女の話とか、
そんな独特の世界観にクスッと笑うことが、
明日も頑張る活力となった。
そうやって、難しいことは考えず
ただ1日1日を乗り越えていくうちに、
いつのまにかいざこざは解決していた。
あの時から、ギャグ漫画日和は私の心にエネルギーを注いでくれる存在だ。
「何のために生きるのか」
と聞かれても答えなど浮かびそうにないが、
ギャグ漫画日和のような日々の小さな幸せは、確かに明日を生きる理由になっている。
ふふっと笑えた瞬間があるだけで、今日まで生きていてよかったなと思う。
そんな瞬間がまだまだあるかもしれないという希望を胸に、明日も頑張ろう。