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「アメーバ状」になりたくて生きている

(オードリー若林)歩いたことのない景色を歩いて、色んな人が海のハバナ湾沿いでアコーディオンだ、ギターだ、ってやってんのをみたら、時間忘れるじゃないですか?なんか、そういうことをずっと心待ちにしている感じなんですよね。
(星野源)色んなこと考えているじゃないですか、普段。バランスを取ろうと。社会的なところとか、音楽だったら歌詞を間違えないようにしようとか。・・・そういうのが全部なくなって、ステージとお客さんの間も全部なくなって、「アメーバ状」になるというか、無になるというか。その時が一番気持ちいいんです。

2021年9月7日、星野源のオールナイトニッポンより。ゲストはオードリーの若林。冒頭の引用は、2人のやり取りの中で出てきた言葉。自分が心のどこかに持ち続けていたことを、的確に言葉にしてくれた感覚だった。

私の「人生初アメーバ」は、中学校の時。私は吹奏楽部に所属し、ホルンを吹いていた。「ドラムを叩く女子の先輩がかっこよすぎる」という理由で入部したが、23歳の今に至るまで、あの頃の感覚が私の原点だ。

個人練習も好きだったけれど、とにかく合奏が好きだった。ユーフォニアムやトロンボーンたちと和音を作っているときに、前列のクラリネットやサックス、真後ろのトランペットが主旋律を奏でる。かと思いきや、オーボエのかっこいいソロが始まり、気持ちのよいタイミングでフルートやピッコロの合いの手。そうこうしているうちにホルンの主旋律がやってきて、後ろで打楽器隊が応援してくれる。曲はエンディングへ、盛り上がる曲のラストなんかは、それはもう、全員が無双状態になる。

毎日の合奏練習、コンクールでの演奏、定期コンサートでのパフォーマンス。色んな場面があったけれど、音楽をしている時間が一番「アメーバ状」になれた。23歳になった今は、企画編集の仕事やイラストを描く仕事をしているけれど、あの合奏中の感覚を体験したいとずっと思い続けている。

映画やドラマも、音楽を演奏するシーンがとにかく泣ける。『耳をすませば』で、雫ちゃんと聖司くんが歌っているところに、おじさんたちが楽器を持ち寄って演奏に加わる場面。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、マーティーがギターをかき鳴らし、チャック・ベリーの『ジョニー・B・グッド』を演奏する場面。ドラマ『カルテット』で、4人それぞれが楽器を構えて演奏する場面。

ここまで音楽音楽と言ってきたけれど、「アメーバ状」になるのは音楽に限らない。あらゆる境目がなくなり、社会の体裁や規則への意識もなくなり、心赴くまま時間を過ごす風景にどうしようもなく焦がれている。

映画『ニュー・シネマ・パラダイス』で、まちの人が集って建物の壁面に映し出された映画を見る場面。映画『Cocktail』で、バーテンダーのブライアンとダグが息ぴったりのパフォーマンスを見せる場面。映画『PULP FICTION』で、ヴィンセントとミアがツイストダンスを踊る場面。どれもどうしようもなく好きな場面で、心の拠り所になっている。

思い通りにいかないことの方が多いけれど、そんな「アメーバ状」になる瞬間を体験したくて生きてるんだなぁと、改めて思えた放送でした。


【おまけ】Pop Virus feat. MC waka(若林のラップが痺れます)


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