月夜のフランス人形
月曜日から金曜日はただのお飾りとして棚の上に置かれていて、
土日は家の子どもにおままごとに付き合わされる。
その子ったら、私を大事に扱わないものだから、
私の肌はだいぶ色が落ちてしまったわ。
髪の毛だってきちんとお手入れしてくれないから、ボサボサよ。
でも、月の出る夜だけは違うの。
家の人たちがみんな寝静まった後、私は月の精とワルツを踊るの。
ルンタッタ、ルンタッタ、ふわっ。
月の精が私の身体を持ち上げてくれる。
その瞬間、私の身体は大きな満月の浮かぶ夜空に浮かぶ。
お飾りとして大人しく座っているよりも、
つまらないおままごとに付き合わされるよりも
何倍も胸が踊るわ。
楽しい夜が終わった次の日の朝には、
私の肌の色も髪の毛もぜーんぶ元通り。
そうして私は次の満月の夜まで、家での役目を果たすの。
また踊りましょうね。