ほっとけーきはすてき
Twitterで、その日はホットケーキの日だと知った。
色々なホットケーキを見漁っているうちに、私はこう思った。
どうしてもホットケーキが食べたい。
だが私の場合、その時は強く思っていても後になると想いが消えてしまうことが多い。
そうだ、週末になってもホットケーキ欲が残っていたら、1人で食べに行こう。残っていなかったらお家でゴロゴロしよう。
🥞🍯🫖
【結論】
食べに行った。
向かった先は『サロン卵と私』という、オムライスとパンケーキの専門店。お目当てはティータイムメニューのカステラパンケーキだ。
休日ということもあり、並び初めてからお店に入り、カステラパンケーキが席に届くまで50分ほどかかった。
ナイフを入れると小さく「サクッ」と音がして、口に入れるとふわふわしっとりとした食感が広がる。
半分ほど食べてからふとパンケーキから顔を上げると、瓶に入ったメープルシロップに気がついた。そうだ、これも一緒についてきたんだった。すっかり忘れていた。
真ん中にはちょうど、パンケーキを撮影していた数分の間に溶けてしまったバターが染み込んでいる。そこに満足するまでメープルシロップをかける。
またナイフでちょうどいい大きさに切り、口に入れる。最初とはまた違った食感だった。時間の経過によってサクサク感としっとり感は失われてしまったが、今度は染み込んだバターのしょっぱさとメープルシロップの甘さが上手く調和している。
セットでついてきたダージリンティーは、パンケーキを詰め込みすぎて苦しくなった喉に酸素を与えてくれた。やっぱ合うなあ。パンケーキには紅茶だわ。
私は今、1人で絵本の中に出てきそうなパンケーキを食べている。「メープルシロップかけ過ぎ」なんて誰にも言われないし、「紅茶飲まないの?」と尋ねられもしない。
ああ、なんて幸せなんだろう。なんて贅沢なんだろう。心がポムポムプリン(訳:めっちゃ幸せ)になってしまっている。
それと同時に、ほんの少しの孤独感もあった。私が今していることは、いわゆる6つのこ食の中の孤食だ。たまにはと思って1人で行ってみたが、目の前に相手がいないことがこんなに寂しいだなんて思わなかった。
美味しいものを独り占めできるのはそりゃあ嬉しい。けど、やっぱり親しい誰かと一緒におしゃべりしながら食べたい。前日からしつこく「ねえねえ、お母さんは?」(訳:お母さんと一緒に行こうよ)と言っていた母を思い出した。
そんなことを考えながら食べていると、気づけばパンケーキは残り3分の1くらいになっていた。そろそろずっと放置していたアイスクリームを食べようか。
専用のスプーンを手に取り、アイスクリームを口に運ぶ。
はむっ。
ふわっ。
あれ…?アイスクリームってこんな食感だっけ?もう1回食べてみよう。
はむっ。
ふわっ。
あれ?あれれ?もしかしてこれは…アイスクリームじゃなくて…ホイップクリーム…?
え?え?ずっとアイスクリームだと思ってたものがホイップクリームって、そんなことってある?
確かに「このアイス全然溶けないなー」って思ってはいたけど。なんなら「最近のお店のアイスはすごいなー」って感心するところまではいってたんだけど。
なんでだろう。なんでだろう。なんでだなんでだろう。脳内のテツandトモが、明日か明後日には全身筋肉痛になりそうなくらい全力で歌って踊っている。
実を言うと、私はホイップクリームがあまり好きではない。甘さの度合いがちょっと強いと感じる。(同じ理由でミルクチョコレートやホワイトチョコレートもあまり好きではない)
でも自分で頼んだものなので、食べることにした。
スプーンでホイップクリームを半分ほどすくい、心を虚無虚無プリン(訳:無)にして食べる。もう半分はパンケーキの上に載せた。残り3分の1くらいになったメープルシロップを全てかけ、ラストパンケーキを味わう。
ぱくっ。
甘あ。
先ほどよりもたっぷりとかかったメープルシロップの刺さるような甘さと、ホイップクリームの「誰がなんと言おうと絶対ここに居座ってやらあ」というくどい甘さが、喉の奥で住処を求めて対立していた。
争う2つの甘さを宥めながら、最後のひと口を飲み込む。あれだけ「あっま。くっど」と思っていた甘さが、無くなってしまうと恋しくなる。『大切なものは失って初めて気づく』を実感した。
今度行く時は、絶対に誰かを誘おう。おしゃべりして、パンケーキもシェアして、一緒に心をポムポムプリンにしよう。そう誓った後に「ごちそうさまです」と言い、ぽかぽかな気持ちでお店を出た。