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【思い出】昔のWILLER EXPRESSの「リラックス」

全国に広大な高速路線バス網を持つ「WILLER EXPRESS」。そんな同社の代表的なシートが「リラックス」である。

現在はグレーを基調にピンクのラインが入ったデザインだが、これは実は2代目。2007年に登場した旧「リラックス」は、同社のコーポレートカラーでもあるピンクをより押し出したデザインだった。

しかしこの初代「リラックス」、導入時期が長かったためか同じように見えて実は違う座席が存在する。旧「リラックス」の登場は10年以上前だが、異なる3タイプを(当時の私の記憶を頼りに)比較してみることとしよう。



タイプ1.黎明期(2007年~2015年頃)

「リラックス」の‟元祖”とも言えるタイプ。丸みを帯びた座席やひじかけ、フードカバーの存在など、当時としては先進的な機軸が多々盛り込まれている。

ただ、(写真では分かりにくいが)とにかくクッションが薄かった。着座した時の沈み込みは皆無に等しく、‟板”の上に腰かけるような感覚が近い。ピローも固定、ひじかけも小型と、全体的に‟粗削り”と言わざるを得ない仕上がりだったように記憶している。

この座席は、大宇バスBX212の中でも最初期に導入された数台にのみ搭載と、実はかなりのレアもの。大宇バス自体がWILLER EXPRESSの黎明期を支えたクルマであるだけに、“黎明期の中の黎明期”とでもいうべきか。

細かいアラが目立つ仕上がりだったが、WILLER EXPRESSの原点であり、生き証人ともいえる座席だった。2013年8月の路線化後もしばらく残存したものの、大宇バス自体の引退に伴って2015年頃に姿を消している。

タイプ2.過渡期(2008~2016年頃)

「黎明期」(上記)の座席に若干の改良を施したもので、2007年後半から導入開始。目に付くところでも、ピローの可動化・クッションの形状変更・「WILLER EXPRESS」のロゴ位置の変更などが施されている。

クッションも‟若干”改良されて柔らかくなったものの、あくまで‟若干”であり劇的な改善にはほど遠かった。また、このモデルまではシートカバーが白一色なのが特徴である。

大宇バスの後期車のほか、2007年から導入された日野セレガHDリミテッドの一部に搭載されていた。セレガリミテッドが2016年頃までに引退したのに伴い、この座席も過去帳入りしている。

タイプ3.完成期(2009年~2018年)

2009年初頭に導入されたタイプで、初代「リラックス」としては一つの”完成形”。あとに「リラックスプライベートモニター付き」「リラックスのびのび9列」などが登場しているが、全てこのタイプからの派生である。

座席本体に目をやると、ピローの可動域拡大、中央仕切りの大型化、通路側ひじ掛けの大型化など、大幅な改良が施された。また、このモデル以降は座席カバーに「WILLER EXPRESS」のロゴが入るようになっている。

変更点が多いことから、当初は「Nリラックス」(=通常の「リラックス」とは違う座席)として販売されていたのも特筆すべき点と言えよう。

もっとも、当時はそこまで厳密に運用されていたわけではなかったようで、私が「Nリラックス」を予約したところ、タイプ1の座席を搭載したバスが来たことは何度かあった(ちなみに逆パターンも経験がある)。当時のWILLER EXPRESSには、「まぁ同じリラックスなんだから」と言わんばかりの、ちょっと‟ユルい”一面があったのかもしれない(→「余談」も参照)。

2010年代に入ってタイプ1・2の引退が進んだためか(あるいは当のWILLER EXPRESSもだんだん面倒臭くなってきたのか)、2013年頃からタイプ1~3はまとめて「リラックス」に統一された。

2018年までに「リラックス<<new>>」に置き換えられる形で引退。

【余談:バスごと当日無料アップグレード?】

高速ツアーバス時代のWILLER EXPRESSには「ネオ」と呼ばれる4列シートがあり、東京~仙台・大阪・名古屋などで催行されていた。JRバスの楽座シートに近い座席で、平たく言ってしまえば4列のびのびシートである。

私も2009年に実見しようと予約~乗車したところ、当日来たのはなぜか「リラックス(タイプ1)」だった。乗務員氏に「ネオじゃないのか(意訳)」と聞いたところ、

「往復とも予約に余裕があったので『それならより良いシートをお客様に』という上の判断だ」(意訳)

とのこと。‟ユルさ”を顧客満足度向上のテイに置き換えるのは企業として完璧な回答だとは思うが、「ネオ」のためにわざわざ来た私にとってはありがた迷惑残念だった。

余談だが、この後私は何度か「ネオ」のリベンジを試みている。しかし、来るのは毎回「リラックス」で、最後まで乗車機会に恵まれることはなかった。「ネオ」も、あとに「シアター」に置き換わる形で運行終了している。


タイプ3a.リラックス(プライべ―トモニター付き)(2012年~2018年)


2012年3月に運行開始したモデルで、タイプ3の「リラックス」にプライベートモニターを取り付けたもの。

一見では、タイプ3の「リラックス」にプライベートモニターを足しただけのように見えるが、リクライニング角度がタイプ3の140度から130度にまで抑えられている。前席の利用者のリクライニングと、後席のプライベートモニターを両立できる角度が130度だったそうだ。

登場当初はプライベートモニターに加えて、写真のように各ひじかけにコンセントが設置されていた。ただ、翌2013年頃からコンセントは順次撤去(※厳密にはコンセントのないひじかけに交換)されている。

このコンセント撤去は(記憶の限りでは)公式サイトでは一切案内がないまましれっと進められていたので、経緯などは不明。ただ、当時私が乗務員の方に聞いたところ「満席でプライベートモニターとコンセントを同時に使用されると、思った以上にバッテリーに負荷がかかりすぎた」ということらしい。

ウィラーの象徴とも言える「リラックス」に、ウィラーらしい設備のプライベートモニターを搭載した座席で、一時は東京・大阪を起点に各地の路線で見られた。

2015年頃から「リラックス<<new>>」に押し出される形で一気に退役開始。末期は大阪〜松山などで細々と使用される程度だったが、それも2018年11月のプライベートモニターサービスそのものの廃止とともに終了。短い天下であった。

【備考:コンセントのついたひじ掛けのその後】

なおコンセントつきのひじ掛けはその後、タイプ3の「リラックス」の一部に移殖された。もっとも特に運用が分けられていたわけではなく、「リラックスは、運が良ければコンセントがある」というような感じだったように記憶している。


タイプ3b.リラックスワイド(2010年~2018年)


タイプ3の「リラックス」をベースに座席幅・シートピッチを拡大し、3列独立シートとしたもの。コンセプトとしては現在の「コモド(https://travel.willer.co.jp/seat/comodo/)」に近い。

2010年の運行開始から、東京~大阪などの幹線はもちろん、東京~秋田・金沢、名古屋~仙台などの長距離線を中心に導入が進んだ。単に座席幅やシートピッチを拡大しただけでなく、通常の「リラックス」より柔らかいクッションが採用されていたように記憶している。

ちなみに、私はこの座席にシャトル便以外でお世話になることはなかった。座席自体はリラックスが少し広くなっただけだし、それにしてはやや高めの価格設定だったからである。

こう言ってしまってはなんだが、「リラックスワイド」の運賃に+数千円で(最高級シートの)「エグゼクティブ」「ニュープレミアム」に手が届くなら、私にとって‟どちらを選ぶか”は考えるまでもないことなのだ。

このように、自分の中では中途半端な位置づけだった「リラックスワイド」だが、座席自体は2018年の「(旧)リラックス」全廃までしぶとく生き残った。大幹線はともかく、1日1便のみといったような区間ではアッパークラスといえば「リラックスワイド」しかないようなことも多く、根強い需要があったのかもしれない。

2018年に「(旧)リラックス」の全廃とともに運行終了。


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