未来2023年12月号詠草『こわれた街だ』
未来2023年12月号詠草『こわれた街だ』 風野瑞人
週一度燃えないゴミの物語る文明というエントロピー
くるくると回転ドアの風圧に飛ばされた先 だれもいない
心理的損傷 今日も何食わぬ顔で書かれたカルテのタワー
ものうげな疫学教授の「諸世紀」がスマホのタップで波へと変わる
ひとりでは渇いてしまう リモートでそっと見せあうあぶない約束
ドップラー効果ひびかせすれちがうingのシンドローム
黒鍵を重ねるようなアドリブが流れつづける満室の街
月光の弱いシャワーを浴びながらコンビニ店が夜を洗い流す
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