「アカペラサークル」で楽しめるのは「歌が上手い人だけ」なのか

きっかけとなった1つのツイート

先日、Twitterのタイムラインを眺めていたところ、1つのツイートに目が止まりました。

「アカペラサークルに入ったが、結局楽しめるのは歌が上手い人だけだ」
※念のため元のツイート文面から改変しています。

結論から言うと、これは半分正しくて、半分誤っていると思います。

しかし、たった140文字だけでは自分の言いたいことがまとまらないし、そのツイートをした方に対して直接意見するのは適切でないと感じたため、noteに書いてみました。

正しい側面

「アカペラサークル」に所属している、あるいはしたことのある方なら想像に難くないかとは思いますが、たしかに「歌が上手い」ことが「楽しい」に繋がる場面は多いです。

【「アカペラサークル」で、「歌が上手い」ことが「楽しい」に繋がる例】
①歌が上手い
→サークルライブのオーディションに合格する
→お客さんから拍手喝采を浴びる
→(承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!

 ②歌が上手い
→バンドにたくさん誘われる
→ライブにたくさん出演できる
→ (承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!

 ③歌が上手い
→周りのサークル員にちやほやされる
→ (承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!

 ※あくまで一例です。

つまりは「歌が上手い」ことが承認欲求や自己肯定感を満たすことに繋がりやすいため、「歌が上手い」ならば「楽しめる」と言えるでしょう。

誤っている側面

一方で、「歌が上手くない」からといって「アカペラサークル」での活動を絶対に楽しめないかというと、そうとも限らないと思います。

【「アカペラサークル」で、「歌が上手くない」けれど「楽しい」と感じられる例】
❶歌が上手くない
→しかし生徒会長の経験があって、人をまとめるセンスに長けている
→サークルライブの実行委員長となり、企画・運営を取り仕切る
→発表の場を提供することで、サークル員から感謝される
→ (承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!!

 ❷歌が上手くない
→しかし写真を撮るのが上手い
→ライブに出演したサークル員の写真を撮影する
→バンド写真や、個人のプロフィール写真として使ってもらえる
→ (承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!

 ❸歌が上手くない
→しかし笑いのセンスに長けていて、誰もが爆笑するネタを考えられる
→ネタバンドを組んでライブに出演
→お客さんから拍手喝采を浴びる
→ (承認欲求や自己肯定感が満たされる)
→楽しい!

 ※これらもあくまで一例です

このように、たとえ歌が上手くなくても、歌以外の得意分野や素質を活かし、承認欲求や自己肯定感を満たす、という楽しみ方も可能ではないでしょうか。

実際はどうか

ここまではあくまで仮定の話です。

実際は「歌が上手い」人の方が「アカペラサークル」での活動を楽しめている、という場合がほとんどだと思います。(僕自身も、決して自慢できるほど歌が上手い人間ではないため、そのことで苦しんだ時期がありました。)

原因は何か

「アカペラサークル」において、「歌が上手くない」人が楽しめない原因は、大きく2つあると思います。

原因①:「アカペラサークル」の目的

ひとえに「アカペラサークル」といっても、規模や活動形態は様々ですが、おおよそ共通して言えることは、「人の声のみを用いた"アカペラ"という形態で音楽を演奏し、人前で披露することを主な活動目的とする集団」であることです。

上記の目的を踏まえると、「歌が上手」ければ、よりよい音楽を演奏することができ、それによって人々の共感を得ることに繋がり、その先でまた披露する機会や範囲が広がり、活動目的を達成することにより近づきやすくなる、と考えられます。

したがって、「歌が上手い」ということは「アカペラサークル」において圧倒的なアドバンテージになりうるだろうし、「歌が上手くなければ楽しめない」という主張にも肯けます。

原因②:「プレイヤー至上主義」の風潮

現在のアカペラ界隈で、強い発信力・影響力を持っているのは誰か。

特定の個人の名前は挙げませんが、多くの人々に共通しているのは「何らかの大会、コンテスト、コンクールなどで実績を残したプレイヤー」であることではないでしょうか。

発信力・影響力が強ければ、「こういったことをやりたい」と考えた時に賛同を得やすく、その他さまざまな機会にも恵まれるでしょう。必然的に、多くのアカペラーたちはこういった「実績があり、強い発信力・影響力を持つプレイヤー」に憧れを抱きます。

同様のことが「アカペラサークル」内でも起こっているのではないか、と僕は考えています。

極端に言うと、サークル全体の集まりにはほとんど参加しないのに、オーディションを勝ち抜いてライブに出演し、サークル員の憧れの的になる人がいる一方で、サークル運営に徹する人は周りから見向きもされない、といった状況もありうるのではないでしょうか。

このような「プレイヤー至上主義」とも言える風潮が、「歌が上手くない」と「アカペラサークル」を楽しめない、といった状況を生んでいるのだと思います。

「歌が上手くない」我々は、どうすれば楽しめるのか

ここまで読んでくださった方には「結局、歌が上手くないと楽しめないんじゃないの?」と思われてしまったかもしれません。

しかし冒頭で例示したように、「歌が上手く」なくても「アカペラサークル」を楽しむ方法はある、と僕は考えています。

方法①:「歌」以外で自分の価値を見出し、発信する

僕がこれまで7、8年アカペラを続ける中で出会った方々の中には、決して歌が上手いとは言えなくとも、「アカペラサークル」での活動を楽しんでいる方々がいらっしゃいました。

こういった方々に共通して言えることは、「歌」ではない分野で自分の価値(得意なこと、自分にしかないセンスなど)を見出し、サークル内で発信していたということです。

「アカペラサークル」だからといって、その中でできることは「歌」には限りません。

・編曲(アレンジ)
・サークルライブの運営
・打ち上げの幹事
・サークルのホームページやSNSの運用
・新歓の時に配るビラのデザイン
・サークルのオリジナルテーマソング制作

これらの他にも、「アカペラサークル」でできることはたくさんあるはずです。その中には、この記事を読んでくださっているあなたにしかできないこともきっとあります。

自分の好きなことや得意とすること、学業や仕事での専門分野といったものと「アカペラ」を掛け算すると、「自分の価値」が見出しやすいと思います(僕自身も、現在所属しているサークルでは「編曲」や「サークル運営」において自分の価値を見出してきました)。

その上で大切なことは、「自分の価値」をサークル内で発信することだと思います。

「発信」と言っても、SNSやサークル全体のLINEグループで投稿することだけが全てではありません。まずは自分のバンドメンバーや仲の良い人、、飲み会で同じテーブルになった人などに「最近こんなことをやっているんだよね」と伝えることも「発信」の一つだと思います。

自分の価値を見出し、発信することを続けていけば、ゆくゆくは周りのサークル員が自分の価値を理解し、共感してくれると思います。そうすれば、「アカペラサークル」での活動も少しずつ楽しいものになっていくはずです。

方法②:所属する環境を変える

ここまで

「アカペラサークル」

とカギカッコ付きで書いてきたのには理由があります。

それは、前述の「人の声のみを用いた"アカペラ"という形態で音楽を演奏し、人前で披露することを主な活動目的とする集団」ではないアカペラサークルもある、ということが言いたかったからです。

例えば、先日創設された「ACAPPELLER.JP」というサークルがそれに当たります。

僕も先日加入しましたが、サークル員同士のやりとりを見ていると、「歌が上手い/上手くない」といった話は一切出てきません。

むしろ、「歌以外に自分の価値を見出している」人が多く所属していて、「アカペラを通してこういったことができないか」「アカペラとこれを掛け算したら面白いんじゃないか」といった会話が日々繰り広げられています。

時には、あるサークル員の熱い想いに他のサークル員が強く共感し、プロジェクトが立ち上がることもあります。

今所属している「アカペラサークル」で楽しめていない、やりたいことが実現できないという方は、こういったアカペラサークルに所属し、自分を取り巻く環境を変えてしまう、というのも一つの方法なのではないでしょうか。

それでも「歌が上手く」なりたいなら

誤解の無いように補足すると、僕は「歌が上手い」人を否定するつもりはありませんし、ましてや「歌が上手くなりたい」という気持ちを否定するつもりもありません。

かといって、「歌が上手く」なるための直接的なアドバイスはできないため、あくまでここからは参考程度に捉えていただければと思います。

「歌が上手くなりたい」のであれば、プロに頼るのが1番の近道だと思います。

もちろんいきなり「近くの音楽教室でトレーニングを受けろ」と言うつもりはありません。

例えば、プロのトレーナーの方が執筆したブログや書籍を通して学ぶことも有効だと思います。

また現在はありがたいことに、YouTube上でボイストレーニング・ボーカルトレーニングの方法を解説しているトレーナーの方もたくさんいらっしゃいます。

(アカペラ界隈の方はご存知かもしれませんが)例えば、「しらスタ」のしらいし先生の動画は、楽曲の「歌い方」を分析し、「どのようなポイントを意識すれば上手く歌えるか」をとてもわかりやすく(かつ楽しく)解説してくれます。

まずはこういった無料で学べるものを利用し、その先で必要であれば信頼できるトレーナーの方に直接レッスンしてもらう、という方法であれば、コストも最低限に抑えられるでしょうし、自分のペースで上達できるのかな、と思います。

楽しめるかどうかは自分次第

ここまでつらつらと偉そうに書いてきたのにこんなことを言ってしまっては元も子もないのかもしれませんが、結局のところ楽しめるかどうかは自分がどう行動したかによるのだと思います。

今いる場でどう楽しめるかを模索することも大事ですが、それが難しければ環境を変えればいい。

どうしたらいいかわからくなったら、SNSで「わかんねーよ!」と発信すれば、「こうしてみたら?」と助言をくれる人が現れるかもしれません。

そして、もしそれでも楽しむことが難しければ、「アカペラサークル」から距離を置いた方がいい場合も、もしかするとあるのかもしれません。

このnoteが、冒頭で紹介したツイートの投稿主の方に届くかはわかりませんが、かつて同じような気持ちを少しでも抱いたことがある身としては、何かを考えてくれるきっかけになればいいなあ、と思います。

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