インディ・ジョーンズと略奪文化財について

 現在、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』の日本公開40周年を記念して、4K修復版の4DX上映が行われている。私もこの週末に早速鑑賞して来たのだが、かつて観たときには感じる事のなかった違和感を抱いた。

あらすじ:第2次世界大戦前夜の1936年を舞台に、旧約聖書に記されている十戒が刻まれた石板が収められ、神秘の力を宿しているという契約の箱(=聖櫃)を巡って、ナチスドイツとアメリカの考古学者インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)が争奪戦を展開する。
(引用:映画.com レイダース 失われたアーク《聖櫃》

 欧米人考古学者が植民地支配下にある国家で文化財を盗掘し、自国に持ち帰ろうとする物語の根幹自体が、文化財の不正な海外流出を規制し、原産国や原所有国での保存・保護を原則とする文化財不法輸出入等禁止条約(1970年採決・1972年発効)の理念に反している。同条約は加盟国が批准する前に起きた問題に関しては適用されない事となっているが、エジプトやギリシャなどの被略奪国は過去の略奪文化財について返還を求め続けている。

 同条約など存在せず、文化財略奪が当たり前に行われていた時代(1936年)が舞台とは言え、1981年に製作された作品が、主人公の盗掘活動を英雄的に描く事は無責任極まりない。スティーヴン・スピルバーグ監督による映画史に残る大傑作冒険活劇である故に、その誤った価値観はこれからも世界中の人々に刷り込まれていく。この影響力の大きさこそが、ハリウッド映画産業の有する暴力性に違いない。

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