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「ただいま臨終」という言葉:宮本輝さんのエッセイより

ぼくは、宮本輝さんの「錦繍」という小説が大好きで。
ぼくの中では唯一、10回以上読んだ小説で、1冊目がボロボロになったので、2冊目もあるくらいなんですが。
ま、「錦繍」の話はいつかまた、するとして・・。

今日はなぜか、本当にタマタマなんですが。
なぜかふと、「ただいま臨終」という言葉を思い出しまして・・。
これは、同じく宮本輝さんのエッセイ集にあった言葉で。
30分くらいかけて探してやっと、「命の器」という文庫本・エッセイ集の「潮音風声」の中の「覚悟」という2ページのエッセイを見つけました。

この「覚悟」というエッセイの中で、宮本輝さんは、磯永秀夫さんという詩人の詩を引用してまして。
それが・・。
「「ただいま臨終!」
 この厳しい覚悟に耐えられずして
 どこににんげんの勝負があるか」
というものなんですが。

ぼくはこの文面を2000年頃、30代半ばのときに初めて読んで。
実感という意味ではピンと来てなかったんですが。
なんとなく直感的に、人生の意味を表している、大事な言葉、好きな言葉だと。
背筋がピンと張るような、緊張感のある言葉だなあ、と強く感じていたのを思い出しました。

そして今、50代後半になって、改めてこの言葉に触れてみると・・。
ここ最近のぼくの死生観である、「死を覚悟してこそ、生のありがたみに感謝し、豊かに全うするべし」という想いとピッタシ重なります。

ぼくの中に潜在的にあった、「今を生きること」に対する信条を言い当てていたので、直感に引っ掛かったのだと思います。
というか逆に、この言葉があったので、今の信条に行きついたのかもしれませんが・・。
まあとにかく、この間、ぼくは父親や妹や友達の死を見届けたり、いろいろあったので・・ね~。

で、元に戻って・・。

宮本輝さんは、その「覚悟」というエッセイの中で。
「私はこの詩(=磯永秀夫さんの詩)を口ずさむたびに、いつでも死んでみせるという覚悟を持って、うんと長生きするのだ、と烈しく決意するのである」
と書いてるんですが。

芥川賞を受賞後に、結核や不安神経症という病気を長く患っていた彼だからこその。
「人間はいつかは分からないが、必ず死ぬ」という命題を受け入れた上で、強い意志で抗おうとする、彼の覚悟がビシバシ伝わりますし。
濃く長く人生を全うすることは、ぼくの目指しているところでもあり、強く共感します。

人生観や死生観なんて、人それぞれでいいと思うのですが。
なんか、自分にとってとても大事なものを長い間、意識から忘れていて、それを思い出した喜びと。
自分もそれなりの人生の経験をして、言葉の意味が分かるようになってきたんだね~という感慨のようなものがあったので。
うれしくて、日記的に書いてみました。

みなさんも、いい人生の時間をお過ごしください~。

<見出し画像につき>
本題ではありませんが、宮本輝「錦繍」の文庫本の表紙です。
ぼくは、この小説が大好きで。
ぼくの中では、最初は灰色から始まって、だんだんと鮮やかな紅葉の色に変わっていく・・イメージです。
蔵王のゴンドラからの紅葉、一度は見てみたいです♪

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