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カーテンコール
スケジュール帳を広げて、もう数日後に迫る来月の予定を組んでいる。このスケジュール帳は大学時代の友達がプレゼントにおまけでつけてくれたもの。いやそれプレゼントやろ、と思うかもしれないけれど、ちょっと違う。友達がプレゼントとしてくれたのはミスドの福袋に入っているドーナツ引換券で、その福袋に入っていたスケジュール帳もおまけにつけてくれた。「中に割引券があったから」と。私は長期間、ミスドのドーナツをお得に食べられる人間になっている。
さてスケジュールに話を戻しましょうかね。私はバイトのシフトをどうするか紙に書き出して、来月の自分を想像しながら決めている。
既に決まっている楽しい予定、その前後、疲れを考えて連勤をどこまで頑張れるのか。正直、たくさん休みたい。楽しい予定で埋め尽くしたい。でもお金は大切だ。出来る限り稼がなければいけない現実。アルバイトやなくて別の方法で、稼ぎたいな。役者と両立しながら。
「あっち側に立ってみたい」と思ったのは、大学3年の春、もうすぐ4年になる頃だったと思う。地球ゴージャス『怪盗セブン』のカーテンコール中、客席で拍手をする中、そう思った。舞台からの景色はどんなんなんやろう、あっち側に立ってみたい、と。
もう就職活動は始まっていて、元々芸能界へ興味はあったけどスタッフ側の方だった。芸能マネージャーへの興味はそこそこ大きく、そこへ向けての就活もした。そんな中での役者になりたいという想い。
特に就活が上手く行っていたわけではなかったけれど、演劇や芝居をその時まで特別やったことはなかったし、大学に行かせてもらって突然にこんなこと言ったら、さすがにおとんとおかんもあれかな、いやいやそれはって、思うかな。
おとんにもおかんにもメールで話した。昔からそう、文章のが伝えたいことがちゃんと言葉に出来るからよく手紙を使っていた子どもだった。でも今回は、直接話す勇気が出なかったからだ。ほんまに緊張して一人でそわそわそわそわしていた。どうしよう、と、何がどうしようなんかも分からず。そんな不安をよそに、二人からの返事は「好きに選んでいいよ」というもので。そっか、自分の人生自分で選んでいいんや、責任は自分なんだ、って。
あれから10年経って、選ばんかったらなくてよかったなあってことも少なくないけれど、それ以上に、出会えて良かった人たちと過ごせて良かった時間がある。規模は違えど「あっち側」はやっぱり心が震えるものだった。色々あった、今も色々ある。上手くいかない、楽しいだけじゃない、右にも左にも前にも後ろにも上にも下にも行けないんやないかって動けなかったりする。あと人が多すぎる東京にいつまでも慣れない。
それでも、選んで良かったと言いたい。戻りたいと思うことはない。選んだ人生がいつ終わるかは分からないけれど、最後の舞台では、カーテンコールで拍手をする私にありがとうを直接伝えたいと思う。