【患者さん向け】コレステロールの治療薬の話
こんにちは、山本メディカルクリニックの山本です。
家族性高コレステロール血症の話に引き続き、コレステロールの治療薬の話をします。
LDLコレステロールを低下させるため、よく使われる薬には、大きく分けて3種類あります。
・コレステロールが体内で作られるのを抑える飲み薬
・コレステロールの吸収を抑える飲み薬
・コレステロールが体内で作られるのを強力に抑える注射薬
です。
コレステロールが体内で作られるのを抑える飲み薬は、現在もっともよく使われる薬で、種類では「スタチン」と呼ばれるものです。薬の名前の最後に「〜〜スタチン」とつくものです。これらは薬の強さの強い、弱いはありますが、メカニズムは同じです。
しかし、コレステロールを下げることの目的は、脳卒中や心筋梗塞などの病気を予防することです。これらの病気になる確率を強く低下させるのは、高強度スタチンといって、「効きの強いスタチン」です。私は、患者さんのリスクに応じて、スタチンの強度を変えることはありますが、基本的に、脳卒中、心筋梗塞を予防するために使用するので、スタチン全体のなかでは、強いスタチンに分類されるものを使用しています。
コレステロールの吸収を抑える薬は商品名で「ゼチーア」(バイエル薬品)という薬です。小腸で、コレステロールが吸収されるのを抑えることにより、血中のLDLコレステロールを低下させる、というものです。まだ、後発品はありませんが、従来のスタチンとゼチーアを1錠にまとめた配合錠は売られています。
もともと、スタチン系薬剤を使用してLDLコレステロールを低下させると、動脈硬化による病気の確率を下げることが知られていました。しかしゼチーアも、スタチンに組み合わせて使用することで、さらに動脈硬化による病気の確率を下げることがわかっています。
そのため、強いスタチンをめいっぱい使ってもコレステロールが下がりきらない患者さんには、ゼチーアを追加します。
コレステロールを下げる薬には注射薬も存在します。現在は、「レパーサ」という薬が1種類だけ発売されています。注射といっても血管に注射するわけではなく、皮下注射で、自分でご自宅で注射することもできます。この薬を使うと、LDLコレステロールが大きく低下します。経験則ですが、LDLは40程度まで低下します。
そしたらこの薬だけ使えばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、現在の保険制度のルールでは、上記二種類の薬を使ってもLDLコレステロールが下がり切らない場合や、糖尿病などがあり、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高い場合に限られています。
簡単ですが、コレステロールを下げる薬について説明させていただきました。
繰り返しになりますが、患者さんのリスクに応じて適切な薬を使う必要があります。
もし、健康診断などでLDLコレステロールが高いと指摘されたら、一度、お医者さんに相談してみましょう。
*なお、本稿に関して、私や当院は、特に利益相反はありません(製薬企業から講演料、執筆料などを受け取っていません)。
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