エンレストが高血圧に使えるようになった
こんにちは、山本メディカルクリニックの山本です。
今日は薬の話題です。これまで、心不全(心臓がバテてうまく動かなくなる病気)にしか使うことができなかったエンレスト(サクビトリルバルサルタン)というお薬が、高血圧症にも使えるようになりました。よくある、血圧がよく下がるというこれまでの降圧薬よりも、さらに血圧を下げる効果が強いという触れ込みのようです。
エンレストは、サクビトリルとバルサルタン(これまでのディオバン)の2種類の薬の化合物です。かなり省略して話すと、バルサルタンはこれまで使用していた薬、サクビトリルは、これまでに高血圧治療では使用してこなかった薬です。
サクビトリルは、簡単に言うと、血管を広げ、体から塩分を排泄するのを助ける役目をすることにより、血圧を下げる効果が出ます。
もう少し詳しく言うと、血管を広げ、体から塩分を排泄するために、体の中には「ナトリウム利尿ペプチド」という物質があります。体内ではいろいろな物質を作ったり壊したりしていて、ナトリウム利尿ペプチドを壊すためにネプリライシンという物質が働いています。この、ネプリライシンの働きを阻害するのがサクビトリルです。
ナトリウム利尿ペプチドには、血圧を下げる以外にも、心臓を保護する作用があることがわかっており、そのため、エンレストは心不全の治療薬として使われるようになってきました。今後は、高血圧の治療薬としても活躍することが期待されますが、個人的には、何か心臓の病気を合併した高血圧の患者さんには、利益があるのではないかと考えています。
当院でも数人、エンレストを処方している患者さんがいます。降圧の程度などについては、今後また振り返ってみたいと思います。