【患者さん向け】家族性高コレステロール血症の話。
こんにちは、山本メディカルクリニックの山本です。
コロナワクチンで落ち着かない日々かもしれませんが、元気でお過ごしでしょうか。ずっとコロナにとらわれて、コロナ以外の病気の治療は、おろそかになっていないでしょうか。
症状のないものの治療を続けるのは、なかなか難儀なものです。でも治療したほうが良い病気の上位に来ると思っている、家族性高コレステロール血症の話をします。
家族性高コレステロール血症は、生まれつき、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高くなってしまう病気です。LDLコレステロールは、通常、肝臓のなかに貯蔵されるようにできているのですが、このメカニズムが生まれつき人と異なり、肝臓の中に貯蔵されず、血液中に出てしまっているのが、家族性高コレステロール血症です。痛い、苦しいなどの症状が出ることは極めてまれです。身体診察をすると、異常に合致する異常が指摘されることはありますが、御本人がつらい症状として自覚していることは、経験上まれです。
しかしながら、悪玉コレステロールは、読んで字のごとく、あまり、たちが良くないコレステロールです。動脈硬化を進める重要な原因の一つと考えられており、LDLコレステロールが高い人は、高くない人に比べ、心筋梗塞や脳梗塞を発症する確率が高くなります。
とくに、心筋梗塞は、LDLコレステロールの値とその年数の掛け算が、ある値に達すると発症すると考えられており、生まれつきLDLコレステロールが高い家族性高コレステロール血症は、かなり若い年齢で心筋梗塞を発症することが知られています。
そのため、救急病院などにいますと、心筋梗塞の患者さんが運ばれてきて、ずいぶん若いな、と思うと、家族性高コレステロール血症だったことがわかる、なんてこともあります。
でもできれば、心筋梗塞など大きな病気にかかる前に、リスクは見つけて、病気になる芽をつんでおいたほうが良いです。ですので、たとえば健康診断でLDLコレステロールが高いと指摘された方は、そのまま放置せずに、一度医師の診察を受けた方が良いと思います。
もちろん一般論として、すぐに飲み薬を飲んだ方が良いかどうかは、ケースバイケースですので、初回の外来から飲み薬を出す場合もありますし、まずは生活指導(食事制限や運動など)をして、様子を見ることもあります。
家族性高コレステロール血症を治療する目的は、動脈硬化の進展をなるべく抑制し、心筋梗塞や脳卒中など、大きな病気を起こさないようにすることです。
心筋梗塞などをきっかけに、家族性高コレステロール血症と診断された患者さんでも、治療を行うことにより、もう一度病気になるリスクや、動脈硬化がさらに進行するリスクを下げることができます。
大きな病気になっていない患者さんは、もちろん今後大きな病気にならないように、LDLコレステロールを下げる治療を開始するのが望ましいとされています。
成人(15歳以上)の家族性高コレステロール血症は、
・血中のLDLコレステロール値が、180mg/dL以上
・2親等以内の血のつながった親類に、若くして*心筋梗塞、狭心症になった人がいる(*男性55歳未満、女性65歳未満)
・黄色腫(皮膚や関節にできるしこり)がある。
のうち、2つ以上を満たせば、診断できるとされています。
家族性高コレステロール血症の患者さんは、おおよそ500人に1人の割合で存在すると言われています(別の研究によると200人に1人程度存在するという報告もあります)。日本の人口に当てはめると、少なめに見積もっても、24万人の患者さんがいることになります。しかし、これまでの研究によれば、日本で家族性高コレステロール血症と診断されている患者さんは、遺伝子変異の割合から潜在的に存在すると推定されている患者さんの1%程度です(Eur Heart J. 2013 Dec;34(45):3478-90a.)。
気づかないうちに、大きな病気になってしまうリスクを避けるために、健康診断などで悪玉コレステロールが高いと言われたら、一度、診察をうけることをお勧めします。
当院でももちろん、ご相談をお受けしますので、お気軽に御来院ください。
長くなってしまったので、高コレステロール血症の治療方法は、また別の機会に。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?