NIKKEの世界観をSCPっぽく書いてみた「【攻撃・警戒位置表示レーザー計測システム=ACaMAL(赤丸)】それはアルトアイゼンから始まった」
アイテム番号:WPC-0110
オブジェクトクラス:Thaumiel
カテゴリー:攻撃支援システム
正式呼称:攻撃・警戒位置表示レーザー計測システム(Atack and Caution position Marking system Applying Laser measurement)
通称:ACaMAL(アカマル)
開発背景:Tyrant級をはじめとする大型ラプチャーは体躯が非常に巨大でありRPC-6110やRPC-0020はその大きさが地上の巨大建造物に匹敵し、それ以外のTyrant級ラプチャーも単独兵器と呼ぶには巨大過ぎるが故に「どこを攻撃すれば有効なのか分からない」という原始的な課題は我々を大いに苦しめました。現在、我が軍が保有する火器及び兵器ではこのような超巨大な敵全体に有効な攻撃を一度に加えることは不可能であり、攻撃有効位置を割り出して火力を集中するしか現実的な対応が望めません。
ラプチャーのアークへの本格侵攻はいつ訪れてもおかしくない状況であり、我らの防衛ラインは少しずつ後退を余儀なくされています。Tyrant級ラプチャーへの対応は人類にとって喫緊の課題です。
開発経緯:作戦地域からの報告によればTyrant級ラプチャーのほとんど全ての個体が、小隊規模の戦力を一撃で壊滅させる程の攻撃力を有する兵装を備えていることが明らかになっています。
事案1:以下はTyrant級ラプチャーRPC-001の迎撃作戦に従事した第8エレベータ守備中隊首席指揮官カーク中尉からの聞き取り調査の音声ログです。
■■■■年/■■月/■■日 インタビュアーはミシリスインダストリーM.M.R.研究所から中央軍司令部付Tyrant級ラプチャー特別対策班へ出向中のA技官(階級は技術少佐待遇)
[記録開始]
A技官「アルトアイゼンについて意見具申したいことがあるそうだな」
指揮官カーク「本日はこのような機会を作っていただき誠に…」
A技官(遮って)「前置きはいい。私は軍人ではない。軍属の技官だ。早いところ本題に入ってくれないか?」
指揮官カーク「了解いたしました。アルトアイゼンは前後に長すぎて火力を集中すべきポイントがはっきりしません。僭越ながら申し上げますと我が軍の火力でアレを圧倒出来る単一の火器ステムは存在しません。しかし小官が偵察NIKKEのレーザー測定器を使ってアルトアイゼンの各データを監視し続けたところ、急速な温度上昇が確認された直後に大出力のビーム砲が発射されていることが判明しました。それ以外にも後方ブロックを切り離してスパイクによる刺突を行う直前にも温度上昇が確認されています。」
A技官「興味深いな。続けて。」
指揮官カーク「小官は士官学校に入学する以前は工科大学で熱力学を学んでおりました。それで、これも誠に僭越ながらいくらか他の指揮官の方々よりは今後の作戦遂行に向けて提案できることがあります。」
A技官「というのは?」
指揮官カーク「アルトアイゼンが深刻な損害を伴う攻撃を行う前にはあの巨体のどこかに、必ず他よりも急激に温度が上昇する場所が表れます。もちろん肉眼で見えるような変化ではありませんが、レーザー温度計を応用すれば計測と予測が可能なのではないかと愚考します。」
A技官「なるほど、アルトアイゼンの温度上昇を利用して、攻撃を予測するというのだな?ふむ。」
(数秒間沈黙)
指揮官カーク「予測だけではなく兵装の無力化、ひいてはラプチャーの破壊にも有効だと考えます。」
A技官「それは何故だ、貴官の返答は予測できるが、私の意見の押し付けにならないようここは慎重に貴官の意見を聞こうか。」
指揮官カーク「ご配慮に感謝します。アルトアイゼンは恐らく本体内のどこかで運動エネルギーを大幅に増幅させるシステムを保有しています。我々人類の持つ技術では運動エネルギー増幅装置はNIKKE用のスナイパーライフルに使用されている磁力を使用した加速装置くらいしかありませんが、ラプチャーの技術力は我々のそれをはるかに凌駕しています。しかし未知の技術であっても運動エネルギー増幅装置の稼働に伴いアルトアイゼンの内部で多量の熱が発生しているのは作戦地域で実際に得られたデータからほぼ間違いありません。また、多量の熱が発生している個所は運動エネルギー増幅装置そのものの位置と同じではないかと推測できます。ただし運動エネルギーをどのようにしてあの様な大出力のビーム兵器に転換しているのかは全く不明です。もしかしたら昔ながらの荷電粒子砲なのかもしれません。」
A技官「運動エネルギーを増幅させるのに熱が発生しているという説が正しければそうだろうな。荷電粒子砲かどうかは別として大出力攻撃の直前に一部の温度上昇が確認されるのは間違いないようだ。」
指揮官カーク「はい。以上のことから小官はアルトアイゼンの内部に温度上昇が確認できる箇所があればその位置を特定し、NIKKEや指揮官に警告して運動エネルギー或いは何らかのエネルギー増幅が完了するより前にその位置に重点的に火力を集中し、これを破壊する。それによりエネルギー増幅装置を使用した兵装の無効化とラプチャー本体の破壊につながると考えます。」
A技官「なるほど、敵が攻撃準備を完了する前にそこを潰す。そういうわけだな」
指揮官カーク「要点をまとめるとそうなります」
A技官「問題は現在の我々の技術力ではレーザー温度計の性能が低すぎて使えなさそうだということだ。そして何より莫大なエネルギーの正体が不明だ。他にも課題は多いが、検討の余地は充分ある。分かった、ありがとう。早速本社に掛け合ってみよう」
指揮官カーク「ありがとうございます。大佐殿」
[記録終了]
研究報告1:以下は同じくRPC-001の研究を行っているM.M.R.研究所主任研究員である「E」に対する聞き取り調査の音声ログです。なお「E」はNIKKEやラプチャーの研究の為に製造された特殊個体NIKKEです。
■■■■年/■■月/■■日 インタビュアーは前述のA技官です。
[記録開始]
A技官「では始めよう。君が主に行っている研究は?」
(以降5分間本件とは直接関係の無い会話が続く)
A技官「何か成果と言えることは?」
E「今のところはまだ。でも予測できたことはあるわよ。アイツが大きなビームをぶっ放す前、それとトゲで突き刺しに来る前、確かに機関部近くで温度が急激に上昇してる。よく見つけたわね。何とかいう指揮官さんだっけ?」
A技官「アルトアイゼンに機関部を見つけたのか?つまり内部構造が分かったということか?」(立ち上がる椅子の音がする)
E「ストップストップ。興奮しないで。一つずつ説明するから座ってよ。」
(すまんと言いながらA技官が着席する音)
E「まず内部構造はさすがに分からない。お手上げ。機関部だけどアルトアイゼンにも当然コアがある。最初はコアに機関部があるのかと思ったけど、たぶんそうじゃない。機関部とコアは別のところにある。ここ見てくれる?」
(タブレットを操作する音。戦闘時の映像が再生され音声が聞こえる。)
E「何とかっていう指揮官さんのところにいた偵察NIKKEの映像ね。彼女すごいわね。何も命令されてないのに異変に気が付いてサーモグラフとカメラ映像を同時録画してみたい。しかもここ見て。カメラズームしてるでしょ?」
(再生が止められる。A技官が「カークめ自分で気が付いただと?」とつぶやく。)
E「NIKKEの手柄は指揮官のものよ。仕方ない。それはいいの。ここ。」
A技官「む、確かに温度が上昇してるな」
E「でしょ?急にね。たぶんここに機関部があってコアはその近くにある。」
A技官「何故そう言い切れる?」
E「確証はないわよ。でもこのアルトアイゼンって列車でしょ?しかも他のラプチャーと違うところと言えば?」
A技官「人間によって造られた…!そうか!」
E「分かったみたいね。そう。これはエンターヘブンによって造られたテロ用の戦車でしょ?人間によって造られたときにコアはなかったと思うの。だって要らないもの」
A技官「人間が運転することを想定するだろうから」
E「そうよね。そこにラプチャーやNIKKEのコアなんておっかないもの載せないわよね。自律して勝手に動き出すかもしれないから。結局そうなっちゃったわけだけど。」
A技官「ではコアはどこにある?」
E「うーん。それは分かんない。でもそれは分かんなくていいんじゃないかな?アルトアイゼンをぶっ壊すためにはコアじゃない部分を壊した方がいい。つまり機関部よ。」
A技官「何故?」
E「アルトアイゼンはあの巨体をあのスピードで走らせないといけないわけよ。つまり機関部がかなり大きなエネルギーを生み出してる。そんな時に大出力でビーム撃ったり突進してきたりしてくるのってかなりストレスがかかってると思う。更に大火力で速射砲やらミサイルやら打ちこんでくるでしょ?」
(Eが吐息)
A技官「続けてくれ」
E「アルトアイゼンは圧倒的な火力で襲い掛かってさっさと勝負をつけたがってる気がする。多分、人間で言えばかなり無理して走ってる。」
(突然A技官の大きな笑い声。失礼、と詫びる声)
E「アルトアイゼンって今のが6台目でしょ?それで以前の1台目から5台目までの映像記録を見たのよ。そしたら確実に火力が増して速度も増してるの。でもエンターヘブンは多分「全く同じモデル」を何台も作って放棄した。それが破壊されるたびに新しくラプチャーが寄生してるみたいね。つまりハードウェアは何ら変わってないのよ。それで速度や火力がアップしたってことは、次第に無理をさせることになるって推測が出来るの。」
(A技官の唸る声)
E「それに機関部は人間が作った部分でしょ?アルトアイゼンはコアをそこに接続して制御してるんだと思う。人間が作った部分の方が幾分もろいんじゃないかしら。」
A技官「つまりアルトアイゼンはかなり無理をして走ってる。そしていわばコアという脳の他に機関部という心臓がある。心臓はかなりストレスがかかっていて、そこは脆い可能性がある。そしてその心臓は熱を持っている。」
E「そう。だからレーザー温度計で計測して温度が急激に上昇した部分を攻撃すればいいんじゃない?ってことよ。」
A技官「今日はありがとう。それでは私は本社へ」
(遮って)
E「待って待ってってば。気が付いたのはそれだけじゃない。あと2つあるの。」
A技官「聞かせてくれ」
E「2つ目はいずれアルトアイゼンは完全なボディを手に入れるってことよ」
A技官「なんだと?」
E「Tyrant級ラプチャーには自己修復機能を持つ個体がいるのは知ってるでしょ?アルトアイゼンもそうだと思った方がいい。1台目から5台目と乗り換えていくうちに自己修復機能で機関部のハードウェアを修復、というより強化することを学習したら?無理して走っても大丈夫な個体が出てくるわよ。事実、アルトアイゼンを破壊するのに要する時間は少しずつ伸びてる。」
A技官「つまり早いうちに機関部だけでなくコアも完全に破壊しなければ、そのうちパーフェクトアルトアイゼンが完成するということか」
E「その通りよ。」
(呪う言葉)
E「もう一つはこのシステムが完成したら他のラプチャー攻撃にも応用できるかもしれないってこと。」
A技官「というと?」
E「アルトアイゼンは恐らく機関部の急激な温度上昇で攻撃が予測できるし、いわば弱点も分かる。それって他のラプチャーにも同じようなことが言えると思う。」
(5秒沈黙)
E「どういうわけだかTyrant級ラプチャーはエネルギーを増幅させた後に大出力攻撃をする奴ばっかなのよ。タメてタメて一発ドカンっていうね。例えばRPC-299。こいつは温度上昇は見られないけど突撃してくる前に体内から高周波の音を発してるの。これも偵察NIKKEの記録映像をいじってたら見つけた。これは推測でしかないけど多分運動エネルギーを増幅させて高速で突撃するために出力を一気に上げて体内の器官を収縮させてるんじゃないか?って思う。」
(A技官のうめき声)
E「ほら、思いっきりパンチする時、例えばそうね、うちのCEOの、いややめとく。憎たらしい相手の顔を殴る時どうする?」
(A技官の乾いた笑い声)
A技官「腕に思いきり力を入れて力をタメる。そしてシュエ…(咳き込む)を殴る」
E「そのタメに当たる部分が体内器官の収縮と出力の上昇。グレイブディガーは多分その時に動力伝達装置と掘削ドリルが一緒にかなりの高速で回転するから高周波の音が出るのね。これをさっきのアルトアイゼンの温度計と同じ要領で偵察NIKKEに計測してもらえばいい。」
A技官「そしてエネルギー増幅と出力上昇を行っている部分を表示してそこを攻撃すればいいというわけだな」
E「そ。向こうのエネルギー増幅が完了する前に増幅装置のある部分を集中的に攻撃すればいいってこと。」
A技官「以上か?」
E「以上よ。」
A技官「ありがとう。これでインタビューは終了だ。」
[記録終了]
開発と運用:以上のような研究成果からTyrant級ラプチャーの大出力攻撃を回避しラプチャーの破壊を遂行するため、大出力攻撃の予兆に当たる温度上昇・高周波ノイズの発生・中性子線の増加・高速振動等の異変を複合的に感知し、出力の増大やエネルギーの増幅が完了するより前に該当箇所を攻撃するための攻撃支援システム「攻撃・警戒位置表示レーザー計測システム」の開発が行われ3か月の期間を経て、初の同システム実装部隊がRPC-001の迎撃任務に当たりました。目標の破壊には至りませんでしたが、後部ブロックを機能停止に追い込み、目標はその直後に突如転進し撤退しました。
作戦の結果を受けて統合作戦本部は、■■■■年■■月1日付で、それ以降地上作戦へ投入される予定の全NIKKEと全指揮官のHUDへ同システム実装のため必要なシステムのインストールとハードウェアの交換を実施しました。
システム実装決定から1か月で全ての実装が完了しました。
後記:「攻撃・警戒位置表示レーザー計測システム(Atack and Caution position Marking system Applying Laser measurement) には当初「キャンセルリング」の通称が与えられましたが作戦地域では普及せず、作戦中は専ら頭文字を省略して「ACaMAL(アカマル)」と呼称されているようです。この略称は正式な報告書でも使用可能です。
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