Consensus2021 中国と米証券取引委員会動向
Consensus 2021二日目は中国と規制関連を中心に議論が進んだ。今夜CBDCについて議論が予定されている前段として中国、特にデジタル人民元の動向への注目度は高い。既に10都市での実証実験が始まっており、CBDCでは世界をリードしているといって過言ではなさそう。中国の覇権問題は別として、経済圏の大きさから影響力は大きく、モデルケースとなるであろう。
北京冬季オリンピックにむけた中国人民元の動き
各国中央銀行によるCBDC競争の発端となった中国人民銀行によるCBDC動向に注目が集まっている。現状では国内個人間決済のみとの公式発表であるが、来年の冬季オリンピックを皮切りに海外勢にも解禁されるとの見方がある。ある程度の市場規模を確保した後に使用を半ば強制する地政学リスクも指摘されている。
海外決済を見据えた動き
中国人民銀行は実証実験を香港を含め沿岸部において進めており、2022年の北京冬季オリンピックを見据え海外との決済手段にも発展する可能性は高い。タイ、UAEのデジタル通貨での海外プロジェクトに参画している。Center for a New American SecurityのYaya氏は地政学リスクとして将来的にデジタル人民元の使用を強制する政策が出る可能性を示唆した。
当局とIT企業の付き合い方
公的には個人間の決済手段としての位置づけである。既存のWeChatやAlibabaが運営する民間決済会社と競合関係でもあり、技術提供も受けている模様である。これらのIT企業に、より厳密な金融規制を敷く前哨戦という報道も。
中国における暗号資産規制について
Ballet社のBobby氏は2021年5月に発表のあった取引規制は従前から出ているものの再掲であると強調した。規制導入によって香港や海外に拠点を移した中国系取引所が現在も中国本土向けのサービスを展開しており、規制強化による厳密な取り締まりが予想される。取引としては、一旦USDTに交換してから暗号資産を買う流れが一般的とのことである。中国本土のからの取引が一切なくなるとどの程度市場の流動性に影響をあたえることになるだろうか。
クリプトママは物申す
クリプトママとして知られる証券取引委員会理事のHester氏は、金融機関は不勉強であるとして、今後の暗号資産の裾野が広がることによるリスク増加に懸念を示した。
証券取引委員会の取り組み
Hester氏は、一部の金融機関が暗号資産のリスクについてよく理解しないまま、もしくは説明しないまま顧客に紹介しているとして、市場における暗号資産関連のリスク増大に対して懸念を示した。パネリストのTyrone氏も、暗号資産が既存の運用資産カテゴリーにあてはまらないとして、どのファンドカテゴリ―から投資するべきかといった質問を運用会社から受けているという現状を告白した。今後ETFが上場承認されればより多くの関心を集めることは必至で、啓蒙活動が求められる。
ETF上場のもたらす意味
証券取引委員会にGensler氏を迎え、カナダに引き続き米国でのETF上場承認も目前とされる。ただし一方で証券取引委員会における規制動向と相関性があるとして、年内の上場は難しいとも見られている。また暗号資産業界では既存金融市場に上場することを疑問視する声もあり、カナダで初めてのETF上場を成功させたPuropose InvestmentのSom氏を招いて議論が行われた。
ETFの存在意義
ETF StoreのNate氏は既存金融との橋渡し役としてETFは必要と述べた。簡便化された口座開設によるKYC/AMLリスクや保有資産の一括管理や税務処理の一括化等、既存の金融システム内から暗号資産へアクセスする需要はあると述べた。
証券取引委員会の今後の対応
現在申請中のETFの上場承認は来年に持ち越されるだろうというのがパネリストの見方である(Purpose InvestmentのSom氏は今年末とみている)。また複数のETFを同時承認することによって需要を分散させることも予想される。米国市場がカナダ市場よりも大きいため短期的な需要の増加による需給バランスが崩壊する懸念に対し、Som氏はGrayScale投信(需要の急増による取引停止等は今のところ起こっていない)を例に挙げ、問題はないだろうと述べた。