Consensus2021 暗号資産含む業界全体の現状確認
今年のコンセンサス初日は米FRB理事、ヘッジファンド業界の大物を皮切りに業界識者による議論が白熱した。初日の焦点はビットコイン、暗号資産運用会社、イーサリアムの展望についてだった。今年のConsensusは直近の暗号資産価格上昇を受けてか、クリプト色の強い出だしとなった。
明日は中国動向、3日目は決済含むCBDC、最終日は少し法規制、金融システム関連の講演が予定されている。
業界の発展に必要なのは人材の多様性
個人的な注目は業界人材の多様性。先日開催されたDeCrypt主催のEtherealでも、イーサリアムのVitalik氏を含む数人から業界のガバナンスや資源配分プロセスの成熟化を望む声が少なからず聴かれた。IT人材というよりもバックオフィス系の人材の市場価値があがりそう。
人材の多様性
PolychainのOlaf氏は、次の5年でDAO関連領域が加速度的に成長し、この領域で働く人材の多様性は不可避であるとした。これは彼がEtherealでも指摘した資源配分プロセスの拡充が必要としたポイントにもつながっており、既存金融からの人材流入に期待が高まる。またVitalik氏や多くの識者が、ガバナンス整備が必要と述べており、関連の人材流入に期待が高まる。
また、Time社のCFO募集広告にも言及した。Time社はCFO募集に際して暗号資産に精通していることを条件としていた。ヘッジ、資金調達の一環として暗号資産の台頭は免れないとし、CFOに求められるマインドセットとして暗号資産に忌避感を抱かず必要あれば取り入れる姿勢が求められるとした。
機関投資家層からわかる市場への興味の高さ
昨年末の暗号資産バブルの背景には機関投資家の投資があると言われる。Microstrategy社等は、暗号資産(現状では主にビットコイン)を投機的というよりもヘッジを目的とした防衛戦略として位置づけている。
ビットコインを財務資産として持つ意味
Genesis社長のMichael氏は、財務資産として保有する一番の目的はインフレシナリオへの防衛手段であるとし、法定通貨のみを持ち続けることは相対的に投資妙味が薄いと述べた。特にUSドルはこのコロナ下で国内、欧州に大量供給されており、将来的な価値の低下は不可避だと述べた(BridgewaterのDalio氏も登壇中に同様の意見を述べた)。ビットコインはUSドルに対して負の相関があるともされており、法定通貨へのヘッジ手法の一つとして注目されていくだろうとした。
機関投資家から見たイーサリアム
ビットコインがよくデジタルゴールドと言われるように、ビットコインは価値の保存手法として見られている。一方でイーサリアムはその拡張性の高さから既存金融商品と同様にツールの一環として見られている可能性が高い。DARMA CapitalのAndrew氏は、第1四半期でイーサリアムネットワーク上に$1.5兆が保管され、これは過去の四半期よりも大きな額であり、機関投資家の期待の表れとした。
注目が集まる規制動向
米国SECによる勉強会が発足し、来年にも何らかの規制、もしくは方針が定まると目されている。既存の大手企業による大型投資を呼び込む為には規制がある程度定まる必要がある。日本も先日自民党の一部議員により意見書が提出された。
インターネット革命から学ぶ
90年代のインターネットの台頭に際して、アメリカは世界で最も積極的に新技術であるインターネットを取り入れ経済成長の糧とした。ブロックチェーンも同様に経済成長の糧となりうる。ただし、今回はアメリカではなく、中国やシンガポールにおいて国主導で取り入れているのが目立つ。取り締まるための規制ではなく健全な成長を助ける規制の整備が急務であるとした。
米当局の働き
米国上院議員のCynthia Lummis氏はConsensus登壇翌日にFinancial Innovation Caucusの立上げを予告した。これは暗号資産領域における送金、決済、顧客保護、デジタル通貨を幅広く研究する議員グループであり、来年期待されるSECによる規制設定に影響をもつことが予想される。2022年に中国国内で開催予定のオリンピックでデジタル人民元の使用が予定されており、国際競争の観点から、健全な成長を手助けする規制作りが急務であるとした。
中央銀行VS民間ステーブルコイン
中央銀行によるCBDCではなく民間によるステーブルコインの開発を推す動きが聞かれるが、米FRB理事のBrainard氏は民間ステーブルコインの決済リスクを挙げ、中央銀行による信用の担保が顧客保護の観点から必要とした。
余談:インフレ:直近発表された米国CPIは期待値より高かった。Brainard氏はコロナの影響で過去一年間の比較対象数値が低かったことに加えワクチン効果の揺り戻しの結果とした。また半導体等のサプライチェーン業界がボトルネックとなっている状況と説明した。
環境への配慮は機関投資家の興味の証
最近ESG、環境問題への言及をよく聞く。これは機関投資家(Tesla社含む)が暗号資産に興味を持ってきていることを表している。Galaxyに加え、Square社のレポートが出ている。ブロックチェーンが自動車のようになくてはならない存在に発展することを期待している。
ブロックチェーン活用方法としてのESG
マイニング関連の電力使用コストが取り沙汰されているが、ブロックチェーン技術の使用によりサプライチェーン上でのCO2排出量を追跡することが可能であり、業務フローの細部に至るまで排出量検証が可能である。
ブロックチェーン業界におけるESG
米上院議員Lummis氏は、ブロックチェーン業界における再生エネルギー使用率は40%程であり一般の12%よりもはるかに高いことを指摘し、環境問題への言及はしなかった。一部では、マイニングによる環境破壊(電力使用による)問題は事実とかけ離れているものが多いとする発言もでた。
暗号資産
暗号資産保有はヘッジ目的としての役割を果たすというのが今日の登壇者のスタンスであった。ヘッジファンド大物のDalio氏が、政府が資金を大量に供給しており、 現金はごみくずになると発言(Cash is trash)し、インフレシナリオ下では債券よりビットコインが良いとツイッターで発言した。
金融エコシステム周期
ヘッジファンド大手BridgewaterのDalio氏は過去の経験を基に現在の資本市場は危ういとした。コロナ対策で政府は多額の債券を発行しており、いつか限界がくると警告した。資産が暗号資産領域に流れ込みバブルを懸念する声に対して、暗号資産市場はまだまだ小さい市場(ビットコインは1兆ドル相当に対して金は5兆ドル相当、米ドル債は23兆ドル)としてその懸念を否定する声もある。
暗号資産をSafe Haven(安全資産)とみる動きとみる人々はいる。暗号資産、金、既存金融商品の相関性には注意が必要であり、Consensus直前週末の暗号資産急落の際に金が直近高値を試す動きがあった。